受動喫煙と肺がんリスク
先月の話であるが、受動喫煙の件でちょっとした騒動があった。
国立がん研究センターが8月30日、
受動喫煙による日本人の肺がんリスクを
「ほぼ確実」から「確実」と変更、
受動喫煙の防止を、
「努力目標」から「明確な目標」と提示した。
ところが、これに対して「日本たばこ産業株式会社(JT)」が
翌日同社ホームページ上に
「受動喫煙と肺がんリスクの関連性は明確でない」とする反論を掲載。
それに対し国立がん研究センターが
「JTコメントは、当センターが行った科学的アプローチを十分に理解せず
その結果、受動喫煙の害を軽く考えるに至っている。」
という反論への反論を発表した。
異例な事態ではあるが、もちろんJTの誤りは明らかであり、
国立がん研究センターの対応はあっぱれである。
かたや、日夜「がん」を作り出している団体、
かたや、なんとかして国民を「がん」から救いたいと考えている団体である。
そもそも受動喫煙が「悪」であることはちょっと考えればわかるような気がするが
こういったデータを実際に統計的に証明するのはかなり大変である。
ワタシの好きな作家に吉村昭氏がある。
「戦艦武蔵」や「陸奥爆沈」などで知られるが、
初めて知ったのは少年時代に読んだ「めっちゃ医者伝」で
医療関係の作品も多い。
彼の著作に「お医者さん・患者さん」というエッセイ集がある。
その中に「禿頭に癌なし」というタイトルのエッセイがある。
今では、信じがたいことだがかつては
「ハゲてる人は癌にかからない」という説があったようである。
これが書かれたのは昭和46年~47年だという。
西暦で言えば1971~1972年だからワタシが小学校の高学年。
吉村氏はこれを俗説としながらも、案外そのうち科学的に証明されるかもしれない、
などと書いている。
そして同じような例として
「煙草は、肺がんを誘発する」という説があると紹介してる。
驚くべきことに著者はこれを禿と癌に対する説と大同小異であろうと書いているのだ。
そして、さらにはその後いくつかの例を挙げ、
タバコは必ずしも肺がんの原因にはならないといっていいだろう、と結んでいる。
江戸時代ならともかく、ワタシが小学校高学年の時代にも
タバコとがんの関係が知識人にしてこの程度にしか認識されていなかったとは脅威である。
それくらい科学的証明とはムズカシイ。
したがって、受動喫煙の害を科学的に証明したがん研究センターの業績は素晴らしい。
ともかく、喫煙は自他ともに発がんの原因であることは今や明白であり、
そういった薬物を製造、販売していることは罪悪に他ならない。
罪のないヒトビトから金をとって依存症にし、
死に至らしめているJTは大いに反省してほしいものである。


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