八月の濡れた砂
毎日涼しい、というより肌寒い日が続き、
まだ9月になったばかりというのに夏はもうはるか遠い昔のようだ。
「あの夏の光と影はどこへ行ってしまったの」
これは、我々世代にはある特別な感傷を思い起こさせるフレーズである。
石川セリの「八月の濡れた砂」。
同名映画の主題歌で、歌っている石川セリさんは、のちに井上陽水夫人となった。
1971年公開のこの映画は日活がロマンポルノ路線に移行する前の最後の映画で
暴力とセックスをテーマに学園紛争後の無軌道な若者の群像を描いており、
当時はヒットしなかったが
カルトムービー的な存在としてのちに有名になった。
公開当時、ワタシは小学校6年でこんなオトナの映画のことは知らず、
知ったのは、中学になって聴くようになった林美雄氏の深夜放送「パックインミュージック」からである。
この映画を見て感銘を受けた林美雄氏は自身の番組でいくどとなくこの映画のことを取り上げ
「八月の濡れた砂」をかけまくっていた。
ちなみに、ライフル持ってるのはこのすぐ後にテレビドラマ「飛び出せ青春」で
レッツビギンこと河野先生役を演じる村野武範氏である。
(同ドラマでインパクトのある高校生「片桐」役を演じた剛たつひと氏もこの映画に出演している。)
石川セリさんはラジオだけでテレビには出なかったので顔は知らなかったが、
出演していたテレサ野田さんは
中学時代にお世話になった(?)週刊プレイボーイや平凡パンチのグラビアに登場していた。
セックスシーンなどを含みテーマそのものがお茶の間にそぐわないので
この映画がテレビ放送されることはなく、いわゆる「名画座」の映画であったわけで、
ワタシは見る機会がなく、昨年スカパーでやっていたものを録画して初めて観た。
そこで、重大な『発見』をしたのだ。
映画の途中のこのシーン。
女優さんではなく、後ろの建物、看板をズームアップ。
ワタシは元来記憶力はいい方で(最近はダメだけど)この映画のワンシーンを見て
突然びびっときて、あわてて一時停止、巻き戻しをしてみた。
この後ろの建物「養神亭」は多分、ワタシが小学校6年生の修学旅行、
江の島鎌倉旅行のとき、泊まった旅館に違いない。
今と違って家族旅行ですらホテルや旅館に泊まることなど小学生にとってはほぼ皆無だったから
この修学旅行は楽しみだったし、実際楽しかった。
旅館の名前がかなり難しかったので、かえって良く覚えているのかも。
(ちなみにその2か月後に林間学校で泊まった宿は榛名湖畔の『協栄山荘』だったと思う、たしか。)
他に2校の小学校が修学旅行で同じ日に宿泊しており、
夕食会場の大広間で各小学校の代表者グループが何か出し物、歌かなんかをやったような。
わが校はリコーダーの得意だった「I君」が難曲「越後獅子」を演奏し、
その卓越したテクニックで他の学校の生徒を驚愕させて、
我々も誇らしかったのを覚えている。
あとは風呂場で「Y君」がパンツを脱衣場に忘れてみんなに笑われたこと。
調べてみるとこの「養神亭」かなり歴史的な旅館であることがわかった。
参考「Wikipedia-養神亭」。
我々が泊まった当時は、すでに老朽化していたが、かつてはそんな超高級旅館だったわけだ。
文中の「修学旅行生(主に栃木・群馬地方)をターゲットとした団体宿となった」とあるので間違いない。
また、映画「八月の濡れた砂」のロケ地は神奈川県葉山、逗子、となっている。
ところで、この「八月の濡れた砂」は1971年8月25日公開で、
我々の修学旅行がワタシの記憶だと1971年の6月なので、時間的にかなりの接近である。
ネットの記載によれば1984年に廃業、今はもう無いようだが、
機会があればその付近を訪ねたいものだ。


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