丸暗記
学生時代から試験勉強等で膨大な分量のものを覚えるわけだが、
その中に「丸暗記」というものがあります。
すなわち、原理や理屈を理解して、
それを応用して問題が解けるものがあるいっぽう、
ともかく理屈ではなくこれだけは丸々覚える、というヤツです。
英単語なんかは語源や外来語、関連付けで覚えられることもありますが
たとえば、年号や人名、元素記号や、炎色反応、
アボガドロ数や重力加速度は「ナゼ」ではなく、もう覚えるしかない。
その手のものに「語呂合わせ暗記」があって、
元素記号の「水兵リーベ僕の船~」とか、
ルート2の「ヒトヨヒトヨニヒトミゴロ」なんてのは、
日本伝統の暗記法でワタシもワタシの父も、子供たちも
それこそ、日本中の学生が何十年にもわたってもれなく覚えた
マスターピースです。
ちなみに炎色反応は地方によって
いくつかバリエーションがあるようですが、
ワタシが覚えたのは
「リヤカー無きK村、馬力で勝とうと努力するべえ」
Li(リチウム)赤、Na(ナトリウム)黄色、K(カリウム)紫、
Ba(バリウム)緑、Ca(カルシウム)橙、Cu(銅)緑、Sr(ストロンチウム)紅
という「べに」をべえに変換した北関東弁の入ったものでしたが、
「動力借るとするもくれない馬力」とか、
「馬力で努力して勝とうとするが、くれない」など、
いくつかパターンがあるようです。
主に関西地方で用いられると思われる(?)
関西弁の「 努力と馬力で勝とうするがあかん」は
ストロンチウムをあかん(紅ん)と読んだもので、
赤と紅を間違う可能性があるなあ。
今でも、毎年花火大会の時は、このフレーズを思い出し
おー、ナトリウムだ、今度はリチウムが燃えている、などと
思って見ています。
この手のものは覚えちゃうと忘れられないもので、
高校のころワタシが使っていたのは英単語は語源、派生語を重視した
「試験に出る英単語」でしたが、
ダジャレで覚える「大島式英単語」というのがありました。
同級生のオギノ君が使っていて、
それをワタシは大変バカにしていたのですが、
「Anniversary:記念日『兄がバッサリ切られた記念日』」とか
「Temporary:一時的『天パラリとにわか雨』」とか
「Thermometer:温度計『温度計をさも見たようなふりをする』」
など、横から見て覚えただけなのに今でも全然忘れません。
どうやら、くだらないことほど覚えているようで、
予備校の時の世界史の授業です。
世界史の授業で先生が説明します。
「中世ヨーロッパにはボローニャ大学、パリ大学など次々と大学ができました。
大学によって神学、法学など専門がありましたが、
その中でサレルノ大学は医学の名門でした。
これをどうやって覚えるかというと・・・・・
一回しか言いませんからね・・・・」
『お医者さんに、いたずらサレルノ』
一発で覚えました。(^_^;)
さて、大学に入ってからも「丸暗記」はそれまで以上にあったわけでして。
教科書をみながら必死になって覚えまくったわけです。
そんな中で、ある時衝撃の事実を知ります。
大学6年の時に医師国家試験を控えて、
関東地方の医学部の代表者を集めて国家試験対策委員会みたいのがありました。
代表で東京に行ったAくんがいろんな情報を持ち帰りました。
グンマの田舎にいるとわからないけど
東京近郊の大学では国家試験に対する情報戦が活発らしい。
今度の、小児科の国家試験の出題者の教授はナニナニが専門だから、
その分野の問題が出やすそうだ、などというもの。
ワレワレの大学に帰ったAくんが、
このような情報が次々はいるらしいですが、今後も会議に出たほうがいいですか?
とクラス全員に訊いたところ、
ほぼ満場一致でそんな程度の情報いらねー、となりました。
その時にAくんが、
実は東京の私立の医学生はワレワレが見たこともないような本で勉強している、
との話を伝えました。
どうも、今考えると国家試験のための予備校のテキストかも。
それにどんなことが書いてあるかというと、「暗記法」だったのです。
Aくんが紹介してくれた「サンプル」は「正常圧水頭症」についてでした。
この疾患の三大症状の覚え方。
これを、どう覚えるかというと、「正常圧水頭症」は
「Normal Pressure Hydrocephalus」だから「NHP」。
そこで、まず「N」は「尿」、つまり「尿失禁」。
そして「H」は「歩行障害」。
さらに「P」は・・・・・
・・・・・・「P」は?
みな、Aくんの次の言葉を待ちました。
「P」は「パー」だからDementia(痴呆)なんだって。
その言葉にワレワレは苦笑しました。
そんなテキストがあるんだ、(@_@)。
しょうもねー。
ところが、当時はバカにしたこの暗記法で、
いまでも専門外のワタシが「正常圧水頭症」の三大症状は言えるわけです。
その時独自に覚えたいろんな疾患の知識は関係ないモノは皆忘れちゃったけど。
そのテキストで勉強して医者になった先生がたは
現在も日々患者さんを診るたび
頭の中で何かしらの語呂合わせを思い出しているのかもしれないなあ。


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