ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2015.06.16

ロックボーカルと声帯

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はじめまして。
喉頭アレルギー関連で色々調べていて、先生のblogに辿り着きまして、どうしても先生にお訊きしたい事がありまして、コメント致しました。

僕はV系メタルバンドをやっている者なんですが、うちのバンドのVo(女・20代後半)が声帯ポリープを患い、現在活動を休止しています。ポリープの治療に際し、病院で喉の検査をしてもらったところ、「喉頭アレルギー」も患っていると診断され、「今後はバンド活動や歌唱は厳しい」と言われてしまったそうです。

今はポリープの治療に専念し、ポリープが治ったらバンドとして活動を再開するつもりであったがゆえに、診断はショックであり、メンバー全員今後が不安で仕方ありません。
本人はもちろんのこと、僕もバンドのメンバーとして、Voとはずっと一緒に音楽をやっていきたいと考えています。やはり彼女の歌声が好きなので。
(もちろんポリープが治ってからですが)何とか「喉頭アレルギー」と付き合いながら、バンド活動を続けていくことは不可能なのでしょうか。

ちなみにリハーサルは週1で2時間、ライブは月1程で、たまにそれプラスしてレコーディングをしています。

どうか先生のご回答をお待ちしております。
宜しくお願い致します。

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 またまた、ご質問。

 

 

 

 

 

 ワタシは別に音声外科の専門医ではありませんが

 耳鼻科医でかつロックバンドのボーカルやってるとなると

 意外と日本でも数少ないかも、ということで。

 

 

 

 

 

 実は質問の方から直接、お電話いただき今度受診予定とのことです。

 

 

 

 

 

 

 ご質問の「喉頭アレルギー」は確かに疾患としては存在しますが、

 この場合どうなのかなと。

 

 

 

 

 

 一般に認識される「喉頭アレルギー」とは

 主として「花粉」「ハウスダスト」「ダニ」などの「抗原」を吸入した場合に

 その通過点である喉頭粘膜に付着し局所アレルギーを起こすというもの。

 

 

 

 

 

 症状はのどのイガイガ、かゆみ、セキ、異物感などです。

 

 

 

 

 

 

 したがって、喉頭アレルギーがあるからバンド活動は難しい、

 という状態はちょっと理解できません。

 

 

 

 

 

 ワタシの知らない知見や病態もあるのかもしれないので何とも言えません。

 

 

 

 

 

 そこでポイントはロック・ボーカリストの声帯ポリープの話だと思いますので

 それに沿ったお話をします。

 

 

 

 

 

 

 「声帯ポリープ」は歌手をはじめとする声を多く使う人の

 「職業病」ともいえる病気です。

 

 

 

 

 

 声帯は左右にありこれが接触して振動することにより声が出ます。

 

 

 

 

 

 この声帯の状態によって声の質が変わってきます。

 

 

 

 

 

 風邪をひいたり、大声を出したりすると声帯が炎症を起こし

 充血し、腫れぼったくなります。

 

 

 

 

 

 いわゆる「ガラガラ声」の状態になります。

 

 

 

 

 

 

 声帯がきれいに均一に振動しないせいです。

 

 

 

 

 

 しかし、例えばモノにぶつけて内出血した皮膚や、

 ドアに挟んで腫れた指がまた元に戻るように

 時間がたてば声帯のむくみは取れまた声は元に戻ります。

 

 

 

 

 

 

 ところがこの声がれの状態の時に無理に発声をすると、声帯に変化が起きます。

 大きくは「声帯ポリープ」と総称されますが分類すると3つのタイプに分かれます。

 

 

 

 

 

 その一つが狭義の「声帯ポリープ」で、

 充血した声帯を無理に振動させることによる微小な内出血、

 まあ、ちっちゃい血豆が粘膜下にでき、それがさらに育ったものと考えられます。

 

 

 

 

 

 初期には吸収されることもありますが育って茎を持つようになったものは手術適応です。

 

 

   vcp1111   polyp

 

 ただし、これは切る部分が小さいので手術による声の改善は期待できます。

 

 

 

 

 

 

 しかし、場合によっては声帯全体がブヨブヨにむくんでしまう

 「ポリープ様声帯」という状態になることがあります。

 喫煙者はこうなる場合が多い。

 vpd-4o   1223

 

 

 

 こうなると、「かすれ声」というよりはいわゆる「だみ声」になり、

 手術しても回復は難しい。

 

 

 

 

 

 シーナ&ザ・ロケッツのシーナさんはこのタイプでした。

 

 

 

 

 

 

 また、声帯結節というのもあり、これは両側声帯の前1/3にできるやや硬いコブ、

 まあ、ペンダコみたいなもんです。

 歌手の人に多く英語では「Singer’s Nodule」、

 日本語では「歌手結節」「謡人結節」などといいます。

 18957-2tatiwada-befor0_5 voice_illness_slowly_03

 

 

 右のように発声時に声帯がとじないのでハスキーボイスになります。

 大きくなれば手術しますが、発声習慣が改善されないと再発率は高いです。

 

 

 

 

 

 さて、いずれの場合も声帯の酷使が原因、

 ボーカリスト、それもロックとなると声帯への負担は相当なものです。

 

 

 

 

 

 ワタシ自身、ロックバンドで歌ってるので、この辺大変気になる問題です。

 

 

 

 

 

 質問の方は「V系メタルバンド」とのことですので、

 特に声帯へ負担の大きなジャンルです。

 (実はワタシ「V系」苦手(^-^;だったりして・・・)

 

 

 

 

 ざっくり

 HR/HM>R&B>パンク>ブルース>ポップ>ジャズ>フォーク>>ラップ>シャンソン

 くらいの順で声帯への負担が大きいでしょ(笑)。

 (以前やってたハードロック・バンド「Audiometry」では

 パープルやガンズ、オジーなど歌ってました。

 一番きつかったのはロニー・ジェームス・ディオのボーカルパートだった。)

 

 

 

 

 

 ここで、ワタシの経験から。

 

 

 

 

 ともかく、声帯を大事に使う。

 

 

 

 

 

 ライブではともかく、練習では出なくなってきたら休ませる

 不可逆変化ができる前なら時間がたてば回復します。

 

 

 

 

 ライブ前のリハはできるだけ手を抜いて歌う。(ことにしてます。)

 

 

 

 

 週末にライブのある週はバンド練習はしない。

 

 

 

 

 ただ、少しずつ練習すると声帯は「強く」なります。

 いわゆる筋トレと同じですが、発声法も大事。

 声帯に負担をかけない発声法を心掛けることです。

 2時間を超える練習はやめた方がいいでしょうね。

 

 

 

 

 

 多分、プロのボイストレーナーにはいろんなノウハウがあるんでしょうが、

 ワタシは知りません。

 ただ、スポーツでも「フォーム」によって違いが大きいですから、

 そういうことはあるでしょうね。

 

 

 

 

 

 あとは、ボーカリスト本人がタバコを吸わないことは当然ですが、

 バンドの他のメンバーも一緒にいるときはタバコはやめましょう

 

 

 

 

 

 

 ライブのあとの打ち上げで居酒屋でタバコの煙モクモクは、声帯にとって最悪です。

 

 

 

 

 

 てなこと言いながら、ワタシもライブ前に声の調子が悪くなることが多く

 いつもびくびくしてます。

 

 

 

 

 

 

 耳鼻科開業医は声使う職業なのでそこが問題です。風邪も、もらうし。

 

 

 

 

 

 

 でも、ご質問にあるような月1くらいのライブなら普通は何とかなるんじゃないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 コメント欄にyou tubeがはり付けてあったので聴いてみました。

 

 

 

 

 

 

 すごく上手です、いい声です。

 ギターはたしかにメタルだけど、予想より爽やかで

 なんか名探偵コナンのテーマソングになりそうじゃないですか。

 

 

 

 

 

 

 オリジナルなんでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 レコーディングではともかくライブでは、半音下げちゃう、ってのも手です。

 

 

 

 

 

 

 けっこうプロのバンドは、やってますね。

 

 

 

 

 

 

 あと、サビの一番高いとこ、自分は歌わずにマイクむけて観客に歌わせるとか。

 これは、アマチュアバンド、とくにオリジナルでは難しいけど。

 

 

 

 

 

 

 

 バンドは楽しいです。

 楽器は買い換えられるけど、声帯はそうはいかないので大事に使いましょう。

 でも人間の「ノド」は最高の楽器だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1件のコメント

コメント/トラックバック (1件)トラックバック用URL:

  1. ありがとうございます。ブログにまで書いてくださり、Vo本人をはじめ、メンバー一同感謝感激しております。しかも写真付きの詳しい解説、本当にありがたい限りです。こういう耳鼻咽喉科の先生が住んでる場所の近くにいらっしゃればな…と心底思う次第です。(うちのメンバーは埼玉・東京・神奈川にそれぞれ住んでおります)

    一先ずバンド活動は今後も続けられることが分かり、メンバー一同安堵しました。無論、先生にご助言いただいたように、声帯への負担を考慮し、無茶な練習はさせない(ちなみにうちのVoはポリープになる前はほぼ毎日スタジオで個人練をしてました)ようにしたり、他のメンバーも本人の前ではタバコは吸わないようにして(うちのGtはヘビースモーカーですが、今回を機にVoの前では吸うのをやめさせました)、活動していきたいと思っております。

    土曜日は、うちのVoをどうぞ宜しくお願い致します。

    P.S.
    音源もお聴きいただいたようで、大変嬉しいです!コナンの主題歌に起用して貰えるよう、頑張ります(笑)
    ちなみに我々はV系ですが、煽り方やビジュアルこそV系なものの、音楽的にはメタル~ロック、バラードまで幅広くやっており、先生がお好きなハードロックバンドも実は結構好きだったりします。僕は個人的にパープルやツェッペリン、クイーンも好きです(人生で一番最初にコピーしたのはパープルの「highway star」でした)し、あとKISSとかメイデンとか洋楽メタルも一通り通ってます(笑)
    ちなみに土曜日は僕も都合がつけば、診察に同席させていただくかもしれません。

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