ロックな高校生(第9話)
さて、そんなわけで、ついにロック・ボックス当日を迎えた。
朝、友達のお父さんの運転する軽トラで、機材を市民会館に運ぶ。
当時のシンセサイザーはやたら、でかくて、重い。
で、そのあと、一旦オレは親父の四十九日だ。
お寺のあと、昼食になり
親戚のおじさん達なんかに
「これからは弘之君がな、しっかりしないとな、ウン。」
「そうそう、早く、お母さんを安心させないとな。」
などと、肩や背中をドスドスたたかれる。
ウチの親父は酒を飲まなかったが、親戚は結構酒飲みが多い。
法要はナカナカ終わらない。
仕方がないので
「スイマセン、ちょっと用事があるので、僕だけお先に失礼します。」
「おお、何だ、塾かなんかかい?」
「・・・イエ、・・・・ちょっとコンサートが・・・。出なくちゃならないので・・・。」
この小倉のバカ息子は大丈夫か、という親戚の冷たい視線を背中に受けて、お店を後にした。
さて、急いで家に帰って、学生服を着替える。
借り物のロンドン・ブーツを履いて、自転車に乗る。
友人が「小倉が市民会館に出るんなら」と、わざわざ貸してくれたものだ。
この友人、何を隠そうOがふられた、かのA 君がいるバンドのリーダーのT。
長い髪を茶色に染めて、くるくるのパーマをかけたTは
実は、私とはロック仲間で仲がよかった。
しかし、このロンドンブーツ。
こりゃ、自転車乗りにくいわ。
かかとと、前の部分が高く、かかとは10センチもあるので
いわゆる土踏まずのところでペダルをこぐのだが、はまって、難しい。
何回かこけそうになってやっと市民会館に着いた。
みんなはもう集まっていて、すぐリハーサル。
「モニター、どうですかー。」
なんて、PAの人に言われても、今までモニターなんぞのあるステージで演奏したことがないので、
何がどうなんだかさっぱりわからない。
分け分かんないうちに、音あわせが終わり、控え室に。
うわー、ケムイー。[emoji:v-309]
出演バンドは大学生のバンドが1つ、社会人のバンドが2つで、高校生は我々だけ。
まじめな高校生だった我々は、もちろんタバコは吸いません。
控え室はタバコの煙もうもうで、ボーカルの私は、中にいられず廊下で待っていた。
そして、夜7時、ついにステージの緞帳(どんちょう)が上がったのだった。
感動(?)の最終回につづく。


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