ロックな高校生リターンズ(第5話)
企画書を作って、3人で職員室のF先生をたずねた。
「ロックやフォークなど、ポピュラー音楽に親しんで学生間の、交流や親睦を深める」
・・・実際、何て書いたかは覚えてないが、ロック・コンサートを認めてもらうために、
まあ、適当に文句をでっち上げて、それらしい、企画書を作成したわけだ。
「まあ、そんなわけで、F先生にひとつ顧問として、お名前を、貸して頂きたいわけです。」
しばらく、黙ってその企画書を繰り返し、読んでたF先生。
おもむろに顔を上げて、我々の顔を眺め渡したあと、口を開いた。
「じゃあ、君たちはゴーゴーみたいなことがやりたいわけ?」
「・・・!?」
「だからー、ゴーゴーパーティーみたいなのをするのかな?」
「・・・え、ゴーゴー、・・・ですか?・・・いやー、ゴーゴーって・・・。」
こいつ、何歳だ?そもそも今、昭和何年だ?
確かに昭和40年前後、ベンチャーズなんかのいわゆる”エレキ”の音楽に合わせて
踊るような、「ゴーゴー」っていうのがあって、「ゴーゴー喫茶」なんてのもあったらしい。
しかし、その当時昭和53年頃にあっては、ゴーゴーなんてすでに完全な「死語」だった。
うーん、やはり氏家高校だ。こいつに頼んだのは間違いだったかも。
しかし、こいつ東京で4年間、一体どんな暮ししてたんだ?
「いやあの、ロックのコンサートで、みんな聞いていただくわけで、
踊る人は、絶対いないとはいえないけど、多分みんな聴いてるだけだと思います。」
「別にただの、コンサートなので、風紀上問題になるようなことはありません。」
「いや、先生にはお名前をお貸しいただくだけで、
そのほか、一切ご迷惑をおかけするようなことはありませんから。」
どうも、気軽に引き受けて、何かあとで自分に責任がかかることになると困る、という
態度が見え隠れしたので、我々は口々に訴えた。
そして、あれこれ説得して、何とか企画書にハンコをもらうことに成功したのだった。
「いやー、しかし、あの態度、やっぱ、あいつも小物だな。」
「しょせん、大人なんかあんなもんだよ。」
「それにしても、”ゴーゴー”にはまいった、一瞬何のコトかわかんなかったぜ。」
「オレもだよ。びっくりしたよ。」
「今どきゴーゴーはねえよなー。」
「でも、これで、コンサート出来るな、良かった、良かった。」
ところが、事はそう簡単には運ばなかったのだ。


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