ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2008.11.20

ロックな高校生リターンズ(最終話)

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 さて、いよいよ学園祭当日。
 我々は、もちろん体育館ステージの一番お客が来そうな時間帯をキープした。
ここら辺は、3年生の特権だ。
なんせ、3年にもなって出てるバンドはウチらだけだ。
 我が3年5組は、クラス企画として、お化け屋敷「物怪館(もののけやかた)」をやっており、
これが好評を博していた。
私も、バンド準備とお化け屋敷とあっち行ったり、こっち行ったりで大忙し。
 話はややそれるが、足利高校は男子校。
先生も女性は音楽のオバサン先生のみ。
しかし、事務に、高校を出たばかりの若いSさんという女性がいた。
お化け屋敷の、杮(こけら)落としとして、ぜひ、このSさんを第1号にしよう、という意見が出てすぐ可決された。
で、彼女を連れてきたわけだが、ここで誰がエスコート役をするか、ということで小競り合いがあった。
すると、担任の数学教師のネックレス(この先生は太ってて首がないので、こう呼ばれていた)が、あっさり彼女を連れて入ってしまった。
 がっかりした我々は今度は嫌いな先生を呼んできて、お化け屋敷に入ってもらい、
暗闇に乗じてコンニャクをぶつけたりしてうさを晴らしていた。
(しかし、後にこのSさんが、あのインドネシアと結婚したと聞いてビックリ!
へー、そーだったのかー。)
 さて、体育館のステージが始まった。
 最初のバンドは1年生のナントカというバンド。
うわっ、ひどい演奏だ。なんかのコピーらしいが原曲が何かも判然としない。
おまけに、最後まで演奏できず、途中でとまってしまい
バンドのメンバーがお互いの顔を見あわせるというシーンが何度もあった。
 次のバンドも1年生。
ギターはギャンギャン弾くが、リズムがめちゃくちゃ、ボーカルは全然聞こえない。
キッスの曲、かなあ。ドラムもヒドイ。
 2年生のバンド、おっ、そのイントロは「天国への階段」、演奏できんのか?
あーあ、やっぱり途中で止まってしまった。
何、もう一回はじめからやります?やめとけ、やめとけ。
お、しぶとく、また最初からやり出した。
大体、ギタリスト、アコースティックギターだけど途中からどうすんの?
瞬間的にエレキに持ち替えるのか?そりゃ、いくらなんでも無理だろう。
と、思っていたらジャカジャーン、のところで、終わり、
初めからこういう予定だったらしい。
そんな、「天国への階段」ありか?
「天国の手前の中2階までの階段」か?
 それにしても、どのバンドも1~2ヶ月前にはじめたばかりで
人前で演奏するのは、これが初めて、っていう感じのバンドばかりだ。
これじゃあ、オーディションは拒否するわけだ。
 さて、こんなバンド見ててもしょうがない。
 「俺、ちょっとほか見てくるね。」
といって、ほかの演奏会場の様子を偵察に行った。
 まず、校庭組。
お、やってる、やってる。
うーん、見方によってはストリートミュージシャン風といえないこともないが
素直なイメージとしてはチンドン屋だなー。
お客さんは通過してるけど、聴いてる人はいない。
 次に、屋上に上ってみた。
ありゃまー。ここは、さらに悲惨じゃ。
演奏者以外、誰もいない。
そりゃそうだ、わざわざ屋上まで上って、演奏聴こうなんて物好きは、まずいるまい。
ここじゃなくて、よかった。
(一説によると、現CRPの土井先生は当時、足高の1年生、ナントこの屋上で演奏してたらしい。)
 さて、そろそろ体育館に戻ろうと、階段を2段飛ばしで下りていくと、突然、声をかけられた。
「あら、オグラ君。久しぶり。」
「え、あれ、Fちゃん、もしかして。」
なんと、中学時代の同級生のFちゃんだった。
確か、彼女は宇都宮の高校に行ったんでは。
会うのは、卒業以来だから、ほぼ3年ぶり。
 それにしても、雰囲気変わったなー、っていうか美人になったなー。
「あ、このあと3時過ぎからさ、体育館で俺たちのバンドのライブがあるんで、良かったら来ない?」
「あ、行く、行く。」
「じゃあ、よろしく。」
 そうかーFちゃんかー。なんか俄然、やる気出てきたぞー。
 そして、我々「アースバウンド」のステージが始まった。
そしてまた、これが我々「アースバウンド」の最後のステージだろう。
3月になれば、メンバーはばらばらになり
バンドももう、まず間違いなく一緒に演奏することはない。
 最初は、「スペース・トラッキン」、そして「ストレンジ・カインド・オブ・ウーマン」を演奏し、
このライブの前に俺が作ったオリジナル「トゥ・ザ・ワンダーワールド」に続く。
(曲なんか作ってるヒマがあったら勉強しろって。)
 午後の体育館のステージは市民会館のときと違って
照明もないし、客席も明るいし、音響も全然だが、
その分、リラックスして、楽しく演奏できた。
 やっぱ、メンバーを説得して学園祭に演奏してよかった。
 ここんとこずっと頭の中を占めていた、
微分方程式も、複雑な分詞構文も、キルヒホッフの法則も、紫式部も
そしてこの間の模試の志望校の合格判定パーセントも
とりあえず、みーんな頭から出て行ってもらって、気持ちよくロック・アンド・ロールできた。
 そして、最後はロック・ボックスでも最後に演奏した俺たちのオリジナル、「オールド・キャッスル・イン・マイ・ハート」。
そして、この曲が、「アースバウンド」として演奏する最後の曲。
オレのロックな高校生活もこれで終わりじゃー。
 思い出すなー。
 初めて、Oに誘われてバンドの練習場に行った時のこと。
ロック・バンドって、こんなに大きな音出すんだー。
それまでフォーク・ギターしか弾いてなかったから・・・。
耳はジンジンしたけど、心臓はもっとドキドキした。
 他の高校のバンド4組と、織物会館を借りてやった最初のコンサート。
100円のチケットを売りまくったが、当日、会場はタバコの煙でもうもう。
他のバンドが、いわゆるツッパリ系(これも死語か?)だったので、
会場は大荒れ、ステージは傘まで飛んできた。
以後、織物会館はライブ禁止になったという。
 そして、女子高の文化祭に飛び入り(?)したこと。
女子高で演奏するなんて、結構レアな経験だよなー。
 なんといっても、ロック・ボックス。
応募から、当選、練習場の確保、親父の急死、
市民会館の大ホールは、感動した。
 やっぱり、ロックを聴いていて、やっていて良かった。
ロックのおかげで、いろんな面白いことや、珍しい経験もしたし、
いい仲間や、変な大人にも会った。
そして、落ち込んだり、ヘビーな時にもロックで元気になる。
 親父の通夜の時、お経のあと1階で飲み食いしてる親戚や隣組の人たちの席を離れ、
2階の自分の部屋でラジカセで小さい音で一人でローリング・ストーンズを聴いてた。
 オレの高校3年間はいろんな場面でロックなしでは語れない。
 ・・・・・そして、アースバウンド最後の演奏が終わった。
 全員で客席にお辞儀をした後も、最後のコード、Amの余韻がいつまでも耳の中で反響していた。
 楽器を片付けて、外に出ると、西に陽の傾いた校庭でFちゃんが待っていた。
秋の陽が暮れるのは、早い。
「オグラ君、見たよ、カッコよかったじゃん。」
「ええー、そう?そりゃ、良かった。」
「オグラ君、やっぱり医学部行くんでしょ。」
「うん、でも今のままじゃちとキビシイかも。(頭から追い出してた、模試の合格パーセントが戻ってきた。)」
「大丈夫だよ、オグラ君、アタマいいから。がんばって。」
「おお、サンキュー。」
 おー、なんか、オレ、バンド始めてから、初めて女の子にカッコいいって言われたなー。
(いや、ただ単に外交辞令でしょうけど・・・。)
大学行ったら、バンドやって、女の子にもてるぞー。(希望、願望、妄想、憶測・・・)
・・・しかし、入れんの?
  うっ、そこだ。
  今のままでは、「ちと」どころか「かなり」キビシイのでは・・・。
 明日から、猛勉強だー。
でも、やっぱロックは聴いていよう。
 まだ、将来の自分などほとんどイメージできない、18の秋だった。
 「おーい、オグラ。打ち上げのファイアー・ストーム、始まるぞー。準備手伝えー。」
「おー、わかったわかった。」
 みんなで、大騒ぎした夢のような学園祭が終わった。
 そしてそれは、夢のようなロックな高校生活の終わりでもあった。
 ファイア・ストームの薪に火がつくと、
 少しだけまだ西の空に残っていた明るさも、あっという間に夜の闇になった。
 みんなの歓声の中、
 数え切れない思い出が、
 火の粉や煙とともに晩秋の冷えた夜空に吸い込まれていった。
          ~ロックな高校生リターンズ・完~
 さて、これでロックな高校時代の話はおしまい。
長らくのご愛読ありがとうございました。

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     感動しました!学園祭一日分の風景が脳裏に浮かぶ秀逸な表現で綴られ、まるで画像を見ているようです。
     バンドに限らず、高校の学園祭で何かを一生懸命やった人には同じ様に当時の体験・感動を呼び起こす哀愁の最終話、堪能させていただきました。
     是非、大学編もお願いいたします!

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