ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2011.12.11

マイコプラズマとマクロライドと肺炎球菌

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 ここんところのブログでは、バンドやコンサートやフットサルや宴会で
ちっともお医者さんの話が無いではないか、
オグラは遊んでばかりで仕事してないのではないか、
といわれると困るので(いや、別に困らないけど)たまには専門の話を。
 さて、今期、マイコプラズマが大流行、ということは
マスコミや地域の情報網でもいろいろ耳にされて、
ご存知の方が多いと思います。
 マイコプラズマ感染症とは何か?
 まあ、簡単に言うと「咳の風邪」ですね。
 幼小児の咳の続く風邪は「RSウイルス」が多いけれど、
学童期以降は「マイコ」を考えなきゃならない。
 「マイコプラズマ」は「細菌」ですが、細胞壁をもたず、
そのため細胞壁を攻撃するタイプのペニシリン系やセフェム系の抗生物質は無効です。
 また、一般細菌と違い培養が難しく、
インフルエンザのような迅速簡易検査は診断価値が無く、
PCR検査で確定しますがこれは保険がきかず通常の病院では不可、
診断は血液検査による抗体価の上昇を調べなければなりませんが
2週間以上の間隔をおいて2回採血しなくてはなりません。
 日常的には臨床所見と胸のレントゲン、流行の状況で診断します。
(胸のレントゲンはウチ撮れませんし、いちいち撮ってるところも少ないそうだが)
 一般に症状は長く続く咳ですが、重症化は少なく、自然治癒します。
マクロライド系の抗生物質が有効とされています。
 良く聞く「クラリス/クラリシッド」「エリスロマイシン」「ジスロマック」などです。
 ただ、ここに大きな問題が。
 そのマクロライド耐性の、薬の効かないマイコプラズマが最近急激に増えている、
という報告があります。
国立感染症研究所のHPから
 この「図1」耐性率の急激な増加はスゴイですね。
 でも、それで、みんな入院して重症化してるか、って言うとそうでもないので、
マイコプラズマと診断されてクラリスが出たヒトの中には、
自然治癒や実はマイコプラズマではなかった人が結構多いんだろうなあ。
 だから、咳が出るから、うーんマイコプラズマかもねー、
といって安易にマクロライド出すのは問題なんだなあ。
 で、その大きな問題は、このクラリスをはじめとするマクロライド系の薬は、
最近、 「肺炎球菌」にかなり効かなくなっているということ。
 

 肺炎球菌はインフルエンザ菌と並んで中耳炎、気管支炎、肺炎などの
主要な原因菌で、重症度はマイコプラズマよりはるかに強い。
 子供の急性中耳炎の原因菌の約4割以上が「肺炎球菌」です。
 こちらは培養、抗生剤の感受性検査が簡単にできるので、
当院でも頻繁に見てますが、ウチの病院では
現時点でざっと7割以上の肺炎球菌は
マクロライドが効きません。
 先日、来院された1歳の保育園児の発熱。
 両側急性中耳炎で、まず培養をとってペニシリンを投与、
3日後発熱は無くなり鼓膜所見も改善してきたので、
もうちょっと抗生剤を続けましょうか、といったところ、
保育園でマイコプラズマが流行っていて咳がひどくなってきたので、
マイコプラズマの薬が欲しい、との親の意見。
 熱も下がってきて、鼓膜所見もいいし、
培養の結果がまだだけど、耐性肺炎球菌と決まったわけではないし、
胸の音は悪くないけどマイコは聴診上はあまり顕著で無いので
マイコを合併してない、とは言いきれないし、
悩んだ末、まあ、いいか、と薬をマクロライドに変えたところ、
翌日、40度の熱、鼓膜所見も悪化し、即、鼓膜切開となりました。
 うー、やはり、マズかったか・・・。
 来院される患者さんも漫然とマクロライドを投与されてる方を
よく見かけますが、良く適応と目的とを考えて、
薬選ばなきゃいかんなあ、と自戒もこめて思います。
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