ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2009.02.02

タミフルの消えた冬

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 毎日毎日インフルエンザの検査をし、説明し、タミフルやらリレンザを出し、
あー大変だなーと思うが、今年は薬が確保されてるので助かる。
 5~6年も前になるか、インフルエンザの大流行の年に、薬が無くなっちゃった年があった。
 確か、タミフル、リレンザが出たばっかり。
それとほぼ同時に迅速診断キットが発売され、インフルエンザの治療は大きく変化した。
 タミフル、リレンザは正確にはインフルエンザを殺す薬ではなく、インフルエンザウイルスの増殖を阻止する薬。
これが、めちゃめちゃ効くので医療関係者は驚愕したのだった。
フツーなら5~7日続く熱が1~2日で下がる。
 ところが、これが流行期の真っ只中、突然品切れになっちゃったんです。
卸のヘリコ堀越君に
「なんか、関西でタミフル品薄なんだって?大丈夫?」
「いやー、先生、こっちは大丈夫ですよ。」
と胸を張った彼の舌の根も乾かないうち・・・
「先生、スイマセン、突然なくなりました。」
「がーん。」
 どうも、タミフルがなくなちゃったのは、まとめて抱え込んじゃった病院があるせいだったらしく、
似たようなことがインフルエンザワクチンで起きた年もありました。
 とすると、薬局の在庫が問題になってくる。
インフルエンザは猛威を奮い、備蓄はどんどん減っていく。
 副院長と薬剤師と相談して、タミフルの投与日数を減らすことにした。
タミフルは5日間投与が原則だが、先ほども書いたように1~2日で熱が下がる場合が多い。
そこで、まず3日処方に切り替え、その後2日処方になった。
その時点で熱が下がらなければ追加を出す、ということで。
 ところが、それでもどんどん無くなる。
まず最初に、子供用のドライシロップがなくなった。
 またまた、薬剤師と相談して、大人用のカプセルを割って中身を出し、
量を計った上で、味付けに乳糖を入れて調剤してもらうようにした。
かなり、薬局的にはメンドクサイ作業だ。
この、薬剤師の小峰君、実は私と同級生だ。
顔と酒癖は悪いが、こういうときは頼りになる。
時々、オレのボトルを黙って飲んじゃう分(?)、こーゆー時はいやな顔ひとつせずやってくれる。
 日曜日に電話がかかってくる。
「今、病院の救急でインフルエンザと診断されたんですけど、薬はないので
どっか、勝手に病院探してくださいって言われたんです。」
全く、2時間も待ってそれじゃあ、かわいそ過ぎる。
「まだ、ウチありますからきてください。」
 終いにはカプセルもなくなった。
 もし自分がかかったら、飲もうと机の中にしまっていたタミフルがあった。
最後の時には
「あー、やっぱりインフルエンザ出てますね。」
「先生、まだタミフルあるんですか?」
「もう、ありません。さっき、終わりました。
でもここに僕用にとっといたのがあるんで、これ、飲んでください。」
って、ちゅうちょ無く患者さんにあげちゃいました。
だって、自分とその患者さんのどっちがよりタミフルが必要かといえば、
どう考えても患者さんでしょ。
 それからは毎日「タミフル探し」です。
 薬局によってはまだ在庫のあるところもある。
そこで、毎朝毎朝事務員に、足利中の調剤薬局にすべて電話をかけてもらい
その日のタミフルの在庫量を確認するようにしました。
 検査でインフルエンザが出たら、朝在庫のあったとこにもう一度電話で確認して
「今から、○○さんという患者さんがタミフルの処方箋を持ってそちらに伺うのでお願いします。」
そして患者さんには
「××町の△△薬局にお願いしましたからすぐ行ってください。」
と、紹介する。
 だって、患者さんに自分でさがせったって、そりゃ無理でしょ。
 ところが、そこでとんでもない問題が起きました。
在庫を、教えない薬局があったのです。
「あるかどうかはお教えできません。」
それは、自分の近くの医院から言われてるのか、薬剤師の自己判断なのか。
中には、「先生にほかの病院からの処方箋では出さないように言われてます。」
などという、ふざけた返答をする薬局もあった。
「なんじゃ、そりゃ!」
 そもそも院外処方箋というのは、日本全国どこに行っても通用する処方箋で
薬があれば調剤しなきゃいけないという法律があるのじゃ。
 そんなことを薬局に命ずる医者も医者だが、それを受ける薬剤師もどアホウだ。
 薬は、病院のためのものでも薬局のためのものでもない、
必要としてる患者さんのためのものじゃないか。
 そういう非常時になるとホント本性が出るってのが、よーくわかりました。
今でも、どこの病院の薬局がどうだったかちゃんと覚えてるぞ。
あそこと、あそこと・・・。(いやーオレ、暗いっすか?)
一方、そんな中、気持ちよく協力してくれたところもある。
実名出しちゃうと、今井病院の前にある「いちご薬局」の薬剤師のクボイさん、その節はお世話になりました。
 そんなある朝、薬局の小峰君から電話がありました。
「オグラ先生、昨日タミフルドライシロップ1瓶だけ入荷したんだ。」
「お♪ラッキー。」
「でも、ゴメン、●○小児科から処方箋が来て出しちゃった。」
「いや、いや、そりゃ良かったじゃん。全然オッケーだよ。必要な人のとこにいったんだから。」
「で、もう無いの。」
「あっそー。早いね。」
「それがあの先生、5日分バッチリ処方箋出すんだよ。」
「教えてあげればよかったじゃん。」
「んで、電話したんだけど全然聞いてくんねえの。能書きには5日間って書いてあるって。」
残念、まあ、しょうがない。また、電話でタミフル探しだ。
しかし、あのセンセイんとこ院内処方なのになー。
 と、そんなわけで、その冬は散々でした。
 最近は薬の供給は安定してるらしいですが、リレンザはちょっと品薄という噂も。
気になるのは新型インフルエンザが発生した時、
ちゃんと各医療機関が、個人の利益ではなく、社会全体の利益を考えて行動してくれるか
ということ。
 過去の経験から、この点、実は、かなり心配、です。

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