ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2019.12.19

ゾレアの花粉症への適応拡大について

Pocket

 このほど、花粉症の新しい治療薬が認可されました。

アレルギー性鼻炎としては初の生物学的製剤「ゾレア」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このブログを読まれる方は医療関係者の方ばかりではないので、

生物学的製剤について簡単に説明します。

簡単に説明するの、ムズカシイな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この薬はヒトの抗体のクローンでして、

そもそも抗体とは、特定の微生物を攻撃するために生体が作る物質。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 たとえば、おたふくかぜにかかると、

体がそのおたふくかぜウイルスを認識して、

そのウイルスだけを攻撃する物質(=抗体)ができます。

それによっておたふくかぜは治り、

身体がその抗体を作り続ける間は、おたふくかぜにはかからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 抗体にはいくつかの種類がありますが、

そのうちIgE抗体というグループはもともと寄生虫を攻撃する抗体ですが、

これが、まちがって反応するのがアレルギーです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 花粉やダニ、ハウスダストを敵と誤認して、

くしゃみで吹っ飛ばそう、、鼻水で洗い流そう、鼻を詰まらせて侵入を防ごう、

とするのがアレルギー性鼻炎です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このアレルギーをおこすIgE抗体を攻撃するように、

プログラムしたIgE抗体をクローンによって大量生産したのが

ヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体製剤とよばれるもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 攻撃する側も、される側もIgE抗体なので、混乱しますが、

ミサイル迎撃ミサイルと思ってもらうとわかりやすい。

湾岸戦争でイラクのスカッドを撃墜したパトリオットのような

ミサイル防衛システムです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 つまりこれを注射することにより、体が作ったIgE抗体が、

ことごとく撃墜され、スギ花粉が来てもアレルギー反応が起きないという仕組み。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 問題点はいくつかあり、

アレルギーをおこすIgE抗体は体が作り続けるので、

注射はシーズン中約2週間ごとに打ち続けなければならないこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてさらに問題は、そのお値段。

例えばゾレア皮下注用150mgでは1瓶当たり4万6422円であり、

1回当たり600㎎を2週間ごと投与するとなると、1か月で37万円余り、

花粉症のシーズンは2か月~2か月半なのでざっと100万円。

仮に3割負担でも薬剤費だけで30万以上、

診察代、検査代、注射手技量もこれに加わる計算です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もっと問題なのはこれを保険適応にすると、

その分の医療費、すなわちのこり7割が健保の負担になるということ。

これ、この間話題になったこの話と矛盾していますよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一応、中央社会保険医療協議会で花粉症への適応は了承されたものの、

製薬会社側から承認をひとまず留保したい、との申し出があり、

今シーズンの保険適応はない見通しですが、

現時点でスギ花粉症にこの薬は無いだろう、という印象です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もともと、喘息では重症例に限って適応になっていて、

実際に使われている製剤ではありますが、

喘息では死んじゃう人もいる一方、

スギ花粉症の重症例ったってたかが知れてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中央社会保険医療協議会のガイドラインでは、

「厳密な」施設、患者、管理の適応基準が定められていましたが、

ざっと見た限りでは、それほど「厳密」には見えませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そもそも患者基準のスギRASTスコアがクラス3以上、なんて。

IgE値はクラス0~6までに分類されますが、

当院で検査したスギ花粉症患者さんのざっと9割が、

クラス3以上です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 過去にスギ花粉抗原の除去と回避を行った上で、

医療機関で「鼻アレルギー診療ガイドライン」に基づき、

鼻噴霧用ステロイド薬・ケミカルメディエーター受容体拮抗薬による治療を受けたものの、

コントロール不十分な鼻症状が1週間以上持続したことが診療録、問診等で確認できる、

なんて基準がありますが、

スギ花粉抗原の除去と回避が十分なされれたなら、

重症化することは絶対にありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、このクスリ、大金持ちが自費で使うのはけっこうだが、

保険適応にして庶民に負担を求めることはありえないでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメントはまだありません

コメント/トラックバック トラックバック用URL:

管理人にのみ公開されます

医療系をまとめました。
2021年7月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  
最近の投稿 最近のコメントカテゴリー アーカイブ