コウモリの羽と鉄の羽
東京では連日新型コロナウイルス感染者が100人台を記録しています。
さらに昨日は200人越えの過去最多。
この数字を多いと見るか、少ないと見るか。
陽性と診断される人の多くが若いヒトで、
しかも、それらがほとんど軽症~無症状で、
濃厚接触者としての検査で診断されていることを考えると、
緊急事態宣言の解除された今、
実際にはもっともっと多くの軽症~無症状の感染者がいるような気がします。
その割には重症者、死亡者の割合が日本は少ない。
まして、東京は世界有数の「過密都市」です。
アメリカ、ブラジル、そしてインドでは
ケタ違いの感染者、死亡者が日々報告されています。
また、ヨーロッパでの流行時、
重症者~死者の割合は、日本と比較してかなり多かった。
我が国の政府が行った対策は、
ブラジルあたりよりはだいぶマシだとしても、
では抜群に良かったのかというと、
どうもそんな感じはあまりしません。
靴を脱ぐ習慣、ハグやキスをしない習慣、マスクを好んでする習慣、
集団の調和を重んずる国民性、清潔な生活環境、
国民の知的レベルが高く、
メディアによる感染症への警戒情報を理解できる、
こういったことはたしかに日本人の美点であり、
疫病を阻止するために有利に働きます。
これを「民度の違い」と言った、
いかにも民度の低そうな大臣がいましたが、
それだけでは説明がつかないでしょう。
日本以外でも、韓国、台湾、ヴェトナムなど、
東アジアの国では感染率、重症化率、死亡率が低い。
中国ですら、今となってみると
アメリカ、ブラジル、インド、ロシアなどと比べると、
事前に対策の用意がなかった一番最初に起こった国
という点を考慮すれば桁違いの少なさです。
数字に多少の隠ぺいはあるにしても。(^^;)
これは、どうも新型コロナウイルス、あるいはその類似のウイルスが
東アジアでは過去に複数回流行したことがあるのではないでしょうか。
ウイルスがヒト-ヒト感染を獲得すると、
その地域では爆発的に感染が拡大します。
でも、大昔は地域や国を越えたヒトの移動は
今に比べれば格段に少ないので、
その地域で死ぬヒトは死んじゃって、生き残ったヒトが免疫を持てば、
流行はおさまります。
極端な話、致死率の高いウイルスが突然発生した場合、
ある部落が全滅してしまえば、
それとともにウイルスも全滅してしまいます。
ウイルスは宿主がいなければ生きていけないので。
ウイルスは他の動物を中間宿主として伝搬しますが、
それが鳥や、コウモリなどの飛ぶことができる動物の場合、
部落や地域を越えて、時には海を越えて
感染を広げることができます。
たとえば毎年流行するインフルエンザウイルスは
北から水鳥が運んでくることは、すでに分かっています。
2002年に発見されたSARSコロナウイルスは
キクガシラコウモリが自然宿主であることが突き止められており、
今回の新型コロナウイルスに関しても
コウモリ由来が考えられています。
新型ウイルスの発生、変異は偶然が作用しますが、
有史以前から何百万年にもわたる長い人類の歴史の中で
ヒトに感染するウイルスの新たな発生が
幾度となく繰り返されてきた、と考えることは至極当然ですし、
その範囲が、今回の新型コロナウイルス類縁のウイルスの場合、
東アジアまでには広がったが、
インド以西のアジア~ヨーロッパ、北南米にまでは至らなかった、
とすれば、この地域格差は説明がつくのではないでしょうか。
免疫が、終生免疫ではないにしろ、
反復されることにより獲得した
何らかの情報は遺伝子に残った可能性があります。
コウモリや鳥の翼を介してではなく、
ウイルスを体内に持ったヒトが、直接飛行機で海を越えて、
かつて、そのウイルスを経験したことのない土地に
ウイルスを運んでしまう、ということは、
航空網が発達して地球がグローバル化した現代ならではの現象で、
今後もそういった全世界的なパンデミックは、
ある程度定期的に起こりうる、と考えたほうがよさそうです。


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