クループ症候群
寒くなってくると耳鼻科外来も「冬型」の病気に衣替えをします。
ケンケンするセキと喘鳴、時に呼吸困難を伴う病気、
試験の「ヤマ」ですが「クループ症候群」と呼ばれる病気です。
1~3歳の小児にとくに多く、
主たる原因はパラインフルエンザウイルスが代表ともいわれますが、
いわゆる感冒、上気道炎に続発します。
この病気、小児科では「クループ」、耳鼻科では「声門下喉頭炎」といわれます。
この間来院した1歳1か月のお子さんの喉頭所見です。
画面の中央、黒く三角に見える気管腔はだいぶ狭くなっており、
その下の白っぽくV字型に見える声帯の奥の部分が
両側から赤く腫れているのが認められます。
一方、下方に白っぽく靴べら状に見える喉頭蓋の炎症はありません。
耳鼻科では外来でファイバースコープなどを用いて
声帯の下部の腫れの具合を実際に観察できるので
「声門下喉頭炎」という所見に基づいた病名、
内科、小児科では「クループ」という症状に基づいた病名で呼びますが、
基本的には同じものです。
声帯の下部は気管の入り口で食物は通らないため、
のどの痛み、特に嚥下痛はほぼありません。
この点、その上の喉頭蓋が腫れる「急性喉頭蓋炎」と大きく違うところです。
急性喉頭蓋炎は、急激に窒息し、致命的になる危険度が高いので
原則入院治療になりますが、
クループの場合は程度に応じて外来で経過を見る場合も少なくありません。
ただし、急激な呼吸困難やチアノーゼをおこすことがあるので
状態観察は重要です。
治療は程度に応じて去痰剤等の内服からステロイド剤の単回大量投与、
血管収縮剤やステロイド剤の吸入等を行います。
ところで、この「クループ」、かつては「仮性クループ」と呼ばれていました。
では「仮性」に対する「真性」は何か、というと
これはジフテリアによる偽膜性喉頭炎です。
ジフテリア(diphtheria)は
ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae )の感染によって生じる
上気道粘膜疾患であるが、眼臉結膜・中耳・陰部・皮膚などがおかされることもある。
感染、増殖した菌から産生された毒素により昏睡 や心筋炎などの全身症状が起こると
死亡する危険が高くなるが、致命率は平均5〜10%とされている。
(以上国立感染症研究所のホームページから抜粋)
このジフテリアは上気道に「偽膜」と呼ばれる白~灰白色の物質が付着し、
扁桃などに著明ですが、それが気管に及ぶと狭窄をきたし、
いわゆる犬が吠えるようなクループ症状を起こします。
これが「真性クループ」です。
ところがかつては年間8万人もの発生があったジフテリアは
トキソイドワクチンのおかげで激減し、
1999年を最後に国内での報告はありません。
なので今は「仮性」が取れて、ジフテリア以外の喉頭炎を
単に「クループ」と呼んでいいことになっているようです。
誰が、いいといったかわからないけど、そうなっています。
ワタシ自身、ジフテリアの患者さんは診たことありません。
でも、新人のころ、先輩の先生が、
いやあ、スゴイ扁桃炎、真っ白だったのでジフテリアかと思ったよ、
と話していたのを聞いたことがあるので、
かつては扁桃炎の鑑別診断にもジフテリアは入っていたのです。
ところでこの犬が吠えるようなセキ、
一度聞けば忘れないのですが、どうも口で説明するのがムズカシイ。
なので、看護学校で講義するときは、
これに似てるんだよねー、と説明します。
かつては、夏休みごとに繰り返し再放送されていた「チキチキマシン猛レース」
だが、最近は世代交代により知らない学生が多く、
教室での反応がイマイチです。(ーー;)
では、最後にご覧ください。
野沢那智さんのナレーションが懐かしいです。
「撃て―」「撃つ―」のタンクGTもいいが、
ワタシが大好きだったのは1番ガンセキ オープン、でした。(^O^)/


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