2015.06.05
初めまして。
自分の症状で悩んでいたところ小倉先生のブログを見つけて、相談させていただきたいと思いコメントいたしました。
先日、近所の耳鼻科で右耳の「低音障害型難聴」「メニエール病の疑い」と診断されました。
経緯としては頭痛と鼻の閉塞感があり、耳管閉塞症かなーと思い受診しました。
以前耳管閉塞症になったことがあり、今回は耳閉感がなかったものの症状が似ていたため耳鼻科を受診しました。
そして、聴力検査などを受けたところ右耳の低音域に聴力の低下がありました。
聴力検査では、気道聴力が125hz:30、250hz:45、500hz:35、1000hz:25、2000hz:25、4000hz:15、8000hz:30でしたが、骨導聴力は全て20以内の正常値という結果です。チンパノメトリーは山は低いものの正常A型です。ABRはⅣ波がグラフを突き抜けるほど高く異常値ですが、その他は正常値とのことです。
また、診察中に顔面蒼白で眼振あり(ただし、めまいや耳鳴りの自覚症状はなし)のためすぐにベットに寝かされめまい止めの点滴をされました。その他、右耳の外耳道に単純ヘルペスが出来ているとのことです。(こちらも痛みなど自覚症状なしで、発熱もありません)
それに加え、このところ繁忙期で仕事が猛烈に忙しくて1ヶ月間ほぼ休み無しで働いていたこと、睡眠時間が短かかったこと、PC画面が気持ち悪くて見るのが辛いことを問診でお伝えしました。
上記の検査・診察を総合的に判断して「低音障害型難聴」「メニエール病の疑い」とのことでしたが、現在は2週間ほど経過しており、聴力は正常値に回復し、たまに耳が圧迫されるような感覚があるもののその他特段の自覚症状はありません。
前置きが長くなってしまいましたがご相談したいことは、
私のように気骨導差がある場合でも「低音障害型難聴」「メニエール病」ということはあるのでしょうか?ということです。
耳鼻科の先生は初期は気道聴力が落ちてほっておくと骨導も落ちてしまう、ヘルペスも難聴にはつきものとおっしゃていましたが、
やはり診断された「低音障害型難聴」「メニエール病」は神経が侵食されるため骨導聴力も落ちるのでは?と思い腑に落ちていないところがあります。
「メニエール」となるといずれめまいも出てしまうのではと大変不安に思っています。
よろしくお願いいたします。
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何か、かなり詳しい方ですね。
専門用語がバシバシ出てきてとても素人の方とは思えませんね。
まず、ほかの読者のためにちょっとおさらい。
難聴は大きく2つのタイプに分けられます。
まず外耳から中耳までの音が伝わる部分(伝音系)
の障害による難聴である伝音難聴。
中耳炎で中耳に膿や水がたまったり、
外耳道にでかい耳くそが詰まっても起こったりします。
次に音を感知する神経系の障害による難聴。これを感音難聴といい、
内耳の病気である突発性難聴やメニエール病をはじめ、
聴神経や脳の病気でも起こります。
この鑑別が難聴の診断上重要で、
聴力検査の時に気導聴力と骨導聴力を測定することにより診断します。
気導聴力とは普通にヘッドホンを耳に当て聴こえたらボタンをおす、
という学校検診などでやるタイプの検査です。
これに対し骨導聴力とは振動子を骨(多くは耳の後ろの固い部分)にあて、
その振動を音として感じたらボタンを押すというものです。
これは外耳道や鼓膜、中耳を経由しない音なので、
伝音系の異常があっても聞こえます。
つまり、検査をして気導が下がっていても骨導が正常ならば、
中耳、外耳の病気、という診断ができます。
ああ、やっとここまで来た。
いつもサッカーやバンドの記事しか読まない人は、
もう途中でやめてここまで読んでないだろうな。
さて、ご質問は「低温障害型難聴」「メニエール病」は内耳の病気だから、
骨導聴力が正常ではおかしいのでは、ということです。
確かにおかしい。
しかし、ティンパノメトリー正常、難聴が低音部のみ、眼振の存在は
すべて内耳性難聴を示唆し、診断は正しいと思われます。
ここからは、あくまで推測ですが、
もっとも考えられるのは骨導検査時のマスキング不足です。
マスキングとは何か。
この辺、医学部の卒業試験レベルですが・・・。
片耳の聴力が落ちていて反対側が正常な場合、
聴力検査の時に、検査音を流していない反対の良い耳のほうで
先に聞こえてしまう場合があります。
左右差が激しい場合はこのような現象が起こり、これを補正するために
良い方の耳に雑音を流し、そちらの聴力を遮蔽します。
これをマスキングといいます。
一般に左右差が40デシベル以上あるとマスキングが必要です。
片耳に流した音が約50デシベルの減衰で反対耳に伝わるからです。
これを陰影聴取といいます。
骨導聴力検査でもマスキングが必要になります。
ところが骨導の減衰は0~5デシベルなので聴力差が0でもマスキングが必要です。
これが、なかなか難しい。
特に低音部のみの難聴は、
マスキング不足で骨導閾値が低下気味に出ることが多いです。
(検査する人の技量なんですけどね。)
これを簡単に補正する方法があります。
ウェーバー法といって音叉をおでこに当て、
どっちの耳に響くかを調べる方法。
良い方の耳で聴こえれば感音難聴、悪い方の耳で聴こえれば伝音難聴。
原理はかなり難しいが、施行は大変簡単で、正確です。
ただし、低音部の難聴にしか使えません。
そんなわけで、多分、実は骨導聴力も落ちてたのかなー、というのがワタシの推測。
お医者さんも自己の経験や他の所見から総合的に判断して
感音難聴の診断を下したのではないでしょうか。
うーん、結果的にかなり難しい話になってしまった。
耳鼻咽喉科専門医試験レベルか。
聴力が戻っているとのことですので、今はとりあえず心配ないと思います。
もちろん反復する場合もありますので、
過労、ストレスを避け規則正しい生活を心がけてください。

お忙しい中ありがとうございました。
検査結果を見直してみましたがノイズレベルが30dbでした。
おっしゃる通りマスキング不足のようです。。
看護師さんに「音が頭の真ん中で聞こえますが押して大丈夫でしたか?」と質問したことも思い出しました。
小倉先生に説明いただいてとても納得することができました。
素人の断片的な説明でここまで詳しく教えていただいてホントにホントに感謝しています。
また小倉先生の説明から、今かかっている耳鼻科の先生の治療や薬の処方はあらゆる可能性を考えてやっていただいていたんだということも合わせてわかりました。
過労には気をつけてストレスをためないようになるべく楽観的に過ごしていきます。
ありがとうございました!