お餅とハイムリッヒ
お正月といえば餅をのどに使えさせて亡くなるお年寄りのニュースが風物詩的に報道される。
耳鼻科医をやって30年、いまだその手の患者さんに遭遇したことはない。
大学病院勤務医時代、そんな人が救急搬送されてきたたことがあるが、
その時は他の先生が当直であったので、自ら主治医として受け持ったことはない。
一度だけ、正月当直で電話があり、
○○病院ですが、お餅をのどに詰まらせた方をお願いします、
との依頼があり、
ついに来たか、と思い、看護婦さんにあれこれ指示して準備して待っていた。
すると、再び電話があり、看護婦さんが出たが、
「先生、さっきの方もういいそうです。こちらには来ません。」
とのこと。
そちらの病院で取れたのか、
はたまたもう手遅れとなって亡くなってしまったのか、
その後の連絡もないので、真相は、今もワカラナイ。
ところで、気管異物の救急除去の方法として有名な「ハイムリッヒ法」というのがある。
開発者はアメリカの医師、ヘンリー・ハイムリッヒ氏で1974年に発表。
医学生ならだれでも習うことである。
患者を後ろから抱きかかえ、胸骨下部に急激に圧迫を加えることにより
気管から異物を除去し、窒息を緩和する方法である。
ただし、お餅の場合は粘度が高いため、
この方法では取れないということも教わった気がする。
ちなみに昨年、多くの有名人の死亡が伝えられたが、年末の新聞で
そのハイムリッヒ氏の死を知った。
2016年12月17日 96歳で心臓発作で入院していた病院で死去とのことであるが、
正直、まだ、生きてたんだ、と妻と驚いたものだ。
ところで、ハイムリッヒ氏はその亡くなる2016年、
ハイムリッヒ法により肉を喉に詰まらせた87歳女性を救命したが、
実際に使ったのは初めてだと話したそうだ。
なんか、スゴイ話。
世界的に有名になった自分の方法を96歳にして初めて実践し、
もうこの世に思い残すことはなかったのでしょう。
安らかにお休みください。


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