「今年の風邪」「今年のインフルエンザ」
もう何十年も前だと思うが、タモリのミュージックステーションでの言葉が頭に残っている。
冬のシーズンの放送で、女性アナウンサーが、
「今年の風邪はシツコイみたいなので注意してくださいね。」
と言ったのを受けて、
「今年の風邪はシツコイ、なんてことは毎年言ってるのよ。」
と返したタモリさん。
ああ、このヒトは何てアタマがいいんだろうと感心した覚えがあります。
毎年、風邪がこじれるヒトもいるし、すんなり治るヒトもいる。
すんなり治ったヒトはあまり話題にしないが、
風邪をこじらせてヒドイ目にあった人は、あちこちでそれを話題にするわけで。
そんな話をたまたま別々の2人から聞けば、
おお、今年の風邪は長引いて大変なんだ、という発想が浮かぶのですな。
すると、天気の話題と病気の話題は日常会話の「マクラ」みたいなもんなので、
「いや、今年の風邪は長引くらしいねえ。」
などと、つい話したくなるわけです。
そうして毎年「今年の風邪」はシツコイ、という話が繰り返されているのです。
「今年の風邪はすぐ治っちゃうから心配ないみたい」
なんてうわさが広がったことは多分、ない。
「今年のインフルエンザは熱が出ないものもあると聞いたのですが。」
「最近は熱の出ないインフルエンザもあるようなので」
「隠れインフルかもしれないので検査してください。」
今シーズン良く聞きますねー。
ムカシから熱の出ないインフルエンザはフツーにあるのだ。
ウイルス感染なので、頬っぺたの腫れないおたふくかぜ、みたいに
不顕性感染というのは一定の割合で存在する。
また、水疱が数個出来ただけの軽い水ぼうそうもあるのだから、
熱があまり上がらないインフルエンザだって当然あります。
同じインフルエンザでも、
その人が浴びたウイルス量、持っている抗体の量、
基礎体力、基礎免疫力で症状の出方は変わってきます。
ただ、ムカシはインフルエンザの診断キットがなかったので、
そういう軽症のインフルエンザがインフルエンザと診断できなかった。
さらにここ最近、インフルエンザ診断キットの感度がかなり向上したので、
微量なウイルス量でも陽性反応が出るようになったからです。
とくに学校や、保育園の先生が正しい医療知識を持っていないので、
子どもや、保護者は振り回されているみたいです。
ともかく検査してくるように言われました、というのはオカシイ。
インフルエンザと非インフルエンザを、
完全に黒と白と分ける発想がそもそも間違っています。
また、マスコミの無責任な「あおり」も問題です。
毎回言いますが、インフルエンザは、
タミフルやリレンザ、イナビルを使わなければ治らない病気ではありません。
ただし、疑いがある場合は
老人病棟や、新生児、免疫不全の方との接触を避けねばならいのは当然です。


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