2012.10.23
こんにちは。
ドクターおぐぐの「耳鼻科教えてコーナー」です。
(また名前変わってる?)
こんなコメントを頂きました。
中耳炎で検索して先生のブログを拝見しました。
本当に悩んでいまして、お時間ありましたら、相談にのっていただけたらありがたいです。
今6歳の子なのですが、チューブを入れるかどうかで迷っています。
1歳の時に急性中耳炎で切開。その後、急性のたびに抗生剤で治し、2歳の時から滲出性になり現在まで、5~6回切開もしたり抗生剤だけで治したりときました。
夏場は1ヶ月くらいは大丈夫な時期もあるのですが(この前の冬場は2ヶ月くらい大丈夫でした)、風邪をひくとまた水がたまって濁ってきます。その度に、軽い時は漢方で、ひどい時は最近はオゼックス、ジスロマックを飲んだりしています。先日の急性の時はオラペネムを飲みました。
チューブは、かかりつけの外来で出来ると言われていますが、うちでは大人も子供も大きい太いのを入れます、と。またチューブを取った後に、穴がふさがらなくなることもまあまああります、と言われ、穴をふさぐ手術は外来では出来ず転院して入院して手術になります、と言われて、チューブを入れることにためらいがあります。
このまま中耳炎の度に抗生剤を飲むことにも抵抗がありますし、かと言ってチューブ取った後の穴が残ったままになったらどうしよう、、、という不安もあります。
長々となってすみません。
ご心配のご様子です。
いつもそうですが、実際に診察していないので
あくまで参考までにお読みいただきたく。
これは、おそらくチューブを入れるべきです。
1歳から急性中耳炎をおこし、2歳から滲出性中耳炎で
しかも軽快してる時間がほとんど少ない。
このままいくと、鼓膜が傷んでしまい、
後遺障害を残す可能性が心配です。
滲出性中耳炎の状態は痛みなどの症状はありませんが、
鼓膜には常に負担がかかっており、
長年の間には鼓膜が次第に変質してくることがあります。
ぴんと張った太鼓の皮のような鼓膜が、
薄っぺらになって、伸びたパンツのゴムみたいな
テロテロ、ヘナヘナな状態になってしまう事があるのです。
こうなってしまうと滲出性中耳炎の本体である
耳管機能不全が改善されても鼓膜が正常に機能しなくなります。
耳管機能は年齢とともに改善しますが、
鼓膜がダメになっちゃうと難聴が残ります。
チューブは当院でも子供でも大人と同じ大きさのモノを入れます。
0歳からすべて手術は局所麻酔です。
小さいチューブを試したこともあったのですが、
閉塞や脱落で使い物にならなくなることが多くやめました。
ご心配の鼓膜穿孔は、数パーセントの割でやはり発生します。
当院では閉鎖しないものは小学校高学年になるのを待って、
外来で閉鎖術を行います。
外来で閉鎖しないものは入院で手術することもありますが、
あってもごく少数だと思います。
穿孔は手術でふさげますが、
ペナペナになった鼓膜は、一生治りません。
まあ、あくまでワタシの考えであって、
しかも、診てないので、中耳炎の程度や鼓膜の状態などわかりませんので、
結論は主治医の先生とよく相談してお決めになられるのがいいと思います。
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2012.02.28
皆様、こんにちは。
さあ、ドクターおぐぐの、 なぜなに医療相談 の時間です。
(そんなもん、いつからできたんじゃ。)
今日はこんなご相談を頂きました。
こんにちは。千葉在住の二人の男の子の母です。いろいろ調べていてこのブログにたどり着きました。お忙しいとは思いますが、ご相談にのっていただければ大変うれしいです。
7才になる男の子ですが、熱はなく咳がひどいので、小児科か耳鼻科か悩んで、結局耳鼻科に行ってきました。
息子はアレルギー性鼻炎があり、朝晩は毎日鼻をかむような状態なのですが、ここ数日はあまり鼻水は出てなかったのですが、以前耳鼻科にいったとき、鼻水がのどのほうにおりてきていて咳がでていることがあったのを思い出し、受診しました。こういう症状の場合、耳鼻科でよかったのでしょうか。
診察後、クラリシッド、ムコダイン、アクディームを処方されました。鼻水がひどい症状だとだいたいこのセットの処方をされ、1週間ではよくならないので2週間ほど飲みます。こんなに抗生物質を飲み続けても大丈夫なのでしょうか。
もともと中耳炎になりやすいほうなのか、去年の冬は2回、急性中耳炎になりました。今年はなっていません。乳児の頃は保育園に行ってたこともあり、滲出性中耳炎でした。その後、1才~4年間をアメリカで過ごしていたのですが、そのあいだには中耳炎にはかかることがなかったです。日本はなりやすいとかそういうのってありますか?
またアレルギー性鼻炎ということでエバステルという薬を飲んでいましたが、あまり飲んだからといって症状の改善がみられないので最近は飲んでいませんが、この薬は飲んだほうがいいのでしょうか。でもこれからずっと飲み続けないといけないのでしょうかか。
いろいろととりとめなく質問させていただいて申し訳ございません。お時間あるときで結構ですのでご意見を伺いたいです。よろしくお願いします。
長っ!
・・・・・・いや、失礼、
要約しますと、
①熱が無くて、咳がひどい時受診するのは耳鼻科でいいか?
②クラリシッド、ムコダイン、アクディームのセットが出るが抗生剤を2週間も飲んでいいか?
③日本は中耳炎になりやすい国か?
④効果がないようだがエバステルを飲み続けないといけないか?
の4点でよろしいでしょうかね。
順番に行きましょう。
まず、
①熱が無くて、咳がひどい時受診するのは耳鼻科でいいか?
ワタシはそれでいいと思います。
ご指摘のように鼻が原因の副鼻腔気管支症候群など、耳鼻科的な疾患の場合は、
子供には多いですし、耳鼻科でも聴診はします。
もっとも多いのは風邪の咳ですが(RS、マイコプラズマを含む)
風邪の専門医は耳鼻咽喉科なので。
ただし、喘息の診断を受けている方は、小児科の方がいいかなあ。
呼吸機能検査などを受けて長期のフォローが必要になりますから。
喘息気味、とか、喘息の「ケ」がある、位ならいいでしょうが。
(しかし、この喘息の「ケ」がある、ってよく言う先生いるけど、
気持ちは分からないでもないが、なんだかなあ、と思ってしまう。)
熱があった時は必ず耳鼻科に来てくださいね。
7歳ならまだいいけど、乳幼児、ことに0歳1歳の発熱は耳鼻科を受診してください。
②クラリシッド、ムコダイン、アクディームのセットが出るが抗生剤を2週間も飲んでいいか?
これはケースバイケースですね。
まず「クラリシッド」が何のために出ているのか?
風邪であれば抗生剤は不要ですが、咳の続く場合にマイコプラズマ感染症を疑って、
クラリシッドなどマクロライドの薬を処方することがあります。
この場合、効果がなければ耐性菌などを考え4,5日で薬を変えます。
効果があれば、およそ2週間までは薬を続けることはあります。
一般に内服抗生剤の効果は3日で判定、有効限度は約2週間と考えています。
ただし、マクロライドには「少量長期療法」というのがあり、
通常量の半量以下の薬を2~3か月連続で飲むことがあります。
びまん性汎細気管支炎や、慢性副鼻腔炎の治療で使われます。
③日本は中耳炎になりやすい国か?
ははは、これはわかりませんね、ワタシ海外で耳鼻科やったことないし。
まあ、そういうことは無いと思いますが。
乳幼児期に中耳炎を反復した患者さんが大きくなって体の抵抗力がついて
風邪をひきにくくなると中耳炎になりにくくなりますが、
成長につれアレルギー性鼻炎が悪化してくると再び中耳炎になることはあります。
④効果がないようだがエバステルを飲み続けないといけないか?
アレルギー性鼻炎と言われていてしかも症状がコントロールされず
急性中耳炎になってるわけでしたら、
アレルギー性鼻炎の治療はした方がいいでしょう。
しかし、効果がないのでは困ります。
エバステルは第2世代の抗ヒスタミン剤のなかでも、
効き目はややマイルドな部類の薬です。
お子さんのアレルギーが強いなら
薬をもう少しランクアップする必要があるでしょう。
もちろんアレルギー検査でスギ花粉が陽性なら、
これからの季節は2カ月ほど薬を飲みます。
ただし、アレルギーは原因となる「抗原」の回避が最も大事なので、
薬の効果が不十分な場合に生活環境を見直す必要もあるかもしれません。
さて、千葉のお母様、こんなトコロでよろしいでしょうか。
去年はレイソルが強くてまいりましたが、今年はどうでしょうか。
そういえば、ジェフ、戻って来ませんね。
それでは、皆様、ごきげんよう。
また、お会いしましょう。
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2009.12.14
学会で家にいないと急患の方を診られないせいか、
今日は休み中に熱が出たり中耳炎になったりで、
救急や他院にかかられた方がみえましたね。
さて、そこで、複数の方から出た質問で
「小倉先生は点耳薬を使わないが必要ないのか?」
というのがありました。
答は
「鼓膜穿孔のない急性中耳炎には全く必要ありません。」
ということです。
中耳炎はその名のとおり、中耳にバイ菌がいます。
もともと中耳は無菌的な場所ですが、
耳管という管で鼻とつながっており、
ここを経由して細菌感染が起こるのが「急性中耳炎」です。
一方、外耳道と中耳は鼓膜で境されており、
鼓膜は「防水」です。
そうでなければ、プールに入るたび中耳炎になっちゃいます。
だから、鼓膜に穴の開いてない耳にいくら水の薬をたらしても
肝心の中耳のバイ菌には届きません。
目をしっかりつぶって目薬をつけてるようなもの、
いや、目にはそれでもまぶたを開ければ回り込むからそれ以下ですね。
そればかりか、点耳薬が外耳道の外側の汚い部分を鼓膜の近くに流し込んだり、
鼓膜が破けて耳だれが出たときに、耳だれだか水の薬だかわからず困ります。
学会の決めた急性中耳炎のガイドラインにおいても、原則、点耳薬は用いません。
鼓膜穿孔のある場合に使用は限られてます。
(改訂前は全く記載がありませんでした。)
さらに問題なのは、鼓膜穿孔です。
中耳炎で耳だれが出ていれば「鼓膜に穴が開いてる」と考えても悪くないのですが、
普通に水薬をたらして中耳まで行くような大きな穴が開いていることは
まずありません。
まして、耳だれがたまっていれば、その上からたらしても中耳には行きません。
少なくとも、鼓膜切開後のようにしっかり開けた穴かチューブ挿入耳で無い限り、
点耳薬のメリットはなく、逆にデメリットのほうが多いと考えられます。
それもできれば、耳漏を吸引し、かつ点耳した薬を、
中耳に流し込むような処置をしてあげたいところです。
だから私は、通常の急性中耳炎では、たとえ耳だれが出ていても
点耳薬は使うべきでないと考えています。
(いや、オレが言ってるだけじゃなく、実際そうなのよ。
今日来た人は、点耳が処方されて、「オグラ先生はいつも点耳薬使いませんけど。」って言ったら
その病院のところの薬剤師さんに「いろんな考えの先生がいますからね。」と言われたそうな。
どっちの先生を指していったんだろうか。もちろん、耳だれ、穿孔のない子です。)
一方「外耳道に菌のいる」外耳炎や、
大穿孔のある慢性中耳炎には点耳薬は有効ですが、
それも漫然と使うと、菌交代が起きたり、カビが繁殖することはよく起こります。
点耳薬などの外用薬は、内服に比べると安全だと錯覚して、
「じゃあ、点耳も使ってみて」、なんてことを、
素人の親御さんばかりか、医者でも軽くいう人がいたらちょっと残念です。
ただ病名と適応症があってるので
「医学的には不要」でも「保険診療上はOK」なんだわ。
2009.11.06
あー、今日の午後は疲れたぞ。
インフルエンザは依然として猛威をふるってるし、
風邪引き、ハナタレから中耳炎になる子も増えて来た。
しかも、金曜の夕方は滲出性中耳炎の子の手術が多い。
鼓膜切開をした場合、耳だれなんかが出ちゃうことがあるので、
翌日診察をすることにしてる。
すると、親の仕事の関係で平日なかなか来院できない子は、
金曜日の夕方切開して土曜日に再診、なんてパターンが多いのだ。
特に今日は鼓膜切開が1歳と2歳の2名3耳あったが、
あらかじめ予定手術として4歳児の鼓膜チューブ留置が入ってた。
Sちゃんは4歳の女の子だが滲出性中耳炎がずーっと治らない。
これまでに鼓膜切開を両耳3回づつしたけど、
いずれも粘っこい滲出液が満タン。
そして、その穴が開いてるうちは良いが閉じるとともに水がたまっちゃうのだ。
それで、チューブ留置を勧め、2週間前に右側を手術。
左は先週の金、土でやるはずだったが、
先週私のほうでお通夜に行く用事が入っちゃったので今日になった。
問題はSちゃん、あばれ方が半端じゃない。
診察で耳を見るだけでも大暴れ、お父さんはいつも汗だくだ。
普段はおとなしいが診察台に座ると突然豹変する。
エクソシストとかあんな感じだ。
2週間前の手術もそれはそれは大変だった。
それでいて、家では妹(今日の鼓膜切開の2歳児)と一緒に
「ジビカごっこ」をしてるらしい。
「ハイ、お耳、みてみますね。」なんて。
実はこの妹も大暴れムスメなのだ。
今日もSちゃん、鼓膜麻酔まではおとなしくさせるのだが、
いざ診察台に来ると大暴れ。
麻酔をすると耳の痛みは全くないのだが、
恐怖心で激しく全身を使って抵抗する。
スタッフ4~5人で抑えるが一瞬たりともじっとしていない。
ものすごい力だ。
ちなみに家での「ジビカごっこ」では、あばれるシーンは入ってないらしい。
何とか耳垢を取り、まず鼓膜切開。
視野を確保するまでが一苦労だ。
顕微鏡を動かしながらタイミングを待つ。
コンマ何秒の隙を見てメスを入れる。
果たしてドロドロの滲出液が充満。
吸引管でもなかなか吸いきれない。
やっぱ、こりゃ、チューブ必要だよねー。
さて、こっからが問題だ。
子供の細い耳の穴の奥の鼓膜に正確にチューブを入れるのはなかなか至難の業だ。
研修医では全身麻酔で20分で入れられれば上出来だが、
局所麻酔ではそんな悠長なことは言ってられない。
私は訓練の甲斐あって3秒あれば入れられるようになった。
しかし、今日のSちゃんの動きは半端じゃない。
3秒間も止まってはくれないのよ。
「オウチ、カエルー」
「ほら、もうちょっと、がんばってー。」
「ぎゃー。」
「Sちゃん、みーっつ数えようか。いーち、にー・・・」
「イーヤダー、おかね、ハラウー。」
ちなみに「お金払う」とは、いつも診察後お会計すると帰れるので、ということらしい。
金でこの一件を示談に持ち込む、という意味ではないようだ。
みんなで押さえること2~30分。
私は顕微鏡を動かしながら、ずっと鉗子をもって、チャンスを待ってる。
そして、一瞬止まった隙を見てチューブを挿入。
その間1秒足らず。
「よし、入った、みたい。」
しかし、その後もチューブがちゃんと入ってるか確認するのに
大暴れが止まらず、またしばしみんなで格闘した。
無事入ってました。
めでたくチューブの入った鼓膜の写真を撮り、
同じファイルにSちゃんのピースサインをしてる顔写真も取り込んだ。
2週間前の写真は泣き顔だったけど、
今度チューブが入ったらピースサインするって、お母さんと約束してきたらしい。
いやー、Sちゃん、良かったねー。
これでお耳がよく聞こえるようになるぞー。
ピアノも上手になるぞ。
それにしても、粘り強くがんばったスタッフの皆さん、そしてお父さん、
大変ご苦労様でした。
きっと、明日はみんな筋肉痛だ。
Sちゃん姉妹、今夜は「ジビカごっこ」、するんだろか。
きっと、疲れて、すぐ寝ちゃうね。
おやすみなさい。