ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2013.06.11

またまた急性中耳炎のご質問

11ヶ月児の急性中耳炎の薬について
初めまして。
小児の中耳炎について調べていた際にこちらのブログへたどり着きました。
少し前の記事だったのですが、気になったことがあったのでコメントさせて頂きます。
昨日38.3~39.2℃の熱が出た為に本日小児科を受診したところ、「恐らく中耳炎になっているから耳鼻科へ行くように。多分切開になるから」と言われ「フロモックス」と数種類の鼻水・咳用の薬(今回は必要ないと思われるので薬品名は割愛させて頂きます)が処方されました。
小児科受診後すぐに耳鼻科へ行くと膿が溜まっているとのことで即切開になり、先生から「思ったより沢山の膿が出てきた」と言われました。
昨日~今日の娘は熱でボーッとしていたものの特に不機嫌でもなく痛がっている素振りもなかったからビックリしました。
その後、耳鼻科医に小児科から処方された薬を見せたところ、「フロモックスは少し弱いから中止にして、新しくオゼックスという抗生物質を出すからこちらを他の薬と一緒に飲ませてね」と言われ、帰宅後からそのようにしております。
服用させた後にオゼックスについて気になり調べていると、「第一選択薬ではない」「他の抗生物質が効かなかった時のみ使う」という記載が多かったので、いきなりオゼックスが処方されたことに不安を覚えました。
おぐぐー先生のこちらの記事にてオゼックスなどの処方をする時は「鼓膜切開」のような外科的処置を講じる必要があるとの記載がされているのですが、鼓膜切開をするような場合にはオゼックスを処方することは一般的なのでしょうか?
それとも、やはりいくつかの抗生物質を経てから効かない場合にのみオゼックスを処方するのでしょうか?
もともと鼻水が鼻の奥に溜まりやすいようで週1で耳鼻科に通って鼻吸いと「ムコダイン・アスベリンシロップ」の処方をされている子供です。(家でも寝る前に必ず鼻吸いをしている状況です)
中耳炎になりやすい体質なのかな?っと思うのでオゼックスが効かなくなるのは困るような気がしたので、こちらにてオゼックスについて質問させて頂きました。
お忙しいとは存じますが、ご教授頂けたら幸いです。
長文失礼致しました。


 えー、コメントありがとうございます。
 ご質問の件ですが、毎度申しますが、
実際に患者さんを診てないのであくまで参考程度に考えてください。
 小児急性中耳炎についてはたびたびブログでとりあげておりますが、
この記事も読まれてるでしょうか?
小児急性中耳炎のガイドラインについて
 このお子さんのスコアを考えてみましょう。
 まず、熱が38.5℃以上ですので2点、
耳痛は無いので0点、
啼泣・不機嫌もなしとして0点、
鼓膜所見は診てないのでわかりませんが
鼓膜切開をして大量の膿が出たという事で
発赤4点、鼓膜膨隆8点、耳漏0点、光錐4点
とします。
 これに24カ月未満の3点を追加すると
合計21点。
 軽症:0~9点、中等症:10~15点、重症:16点以上なので
かなりの重症という事になります。

 発熱はあるが耳の痛みや、啼泣・不機嫌などもなく
いかにも母親がみてひどい中耳炎、という印象が無くても
実は中耳炎がすごく重症だったりするわけです。

 この場合、ガイドライン的には
鼓膜切開および強力な抗生剤で5日間の投与
となっています。
 だから、鼓膜切開+オゼックスはこの場合
適切な治療と思われます。
 
 ためらわず鼓膜切開をしたのは、
技術的にも自信がある先生なのでしょう。
 それより、素晴らしいのは小児科の先生ですね。
 所見から中耳炎を疑い、すぐ耳鼻科に紹介してくれる。
 この小児科の先生の適切な判断のおかげで、
お子さんの耳は救われましたね。
 
 どうぞお大事になさってください。
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2013.05.08

フランスからのご質問、続編

先生 お忙しいところ何度も連絡してしまいすみません。
先生に前回娘の診断が耳管狭窄症であったとお伝した
ココのママです。
(フランス語でcatarrhe tubaire を辞書で調べたら
 耳管カタルとなっていました。これは耳管狭窄症
ということでよいのでしょうか?こちらの先生の説明では、ORLテストは完璧 全く問題なし。ただ右耳に
少々の耳管カタルがあるので耳抜きが上手にできていない。そのさい私の鼻をつまんでごくんと唾液を飲ませ、「こんな感じ^^」と言われ納得しました。ひんぱんに鼻をかみ清潔にすることで改善するでしょう)とのことでした。
先生にお伝えしたように、点鼻スプレーを2ヶ月
しようするとのことでしたが、ここで相談があります。
娘は前回耳の痛みを訴えてから、ここ3週間ほど
鼻水も全くでていなく、本人曰く耳痛も耳鳴りもなくいたって元気です。幼稚園に通いだして風邪のたびにこちらのお医者様には抗生物質と点媚薬が処方されていました。
先生の過去の記事を読ませていただくと、今まで抗生物質を呑む必要がなかったんではないのか・・・と少々後悔してしまいます。
そのせいか今回の点媚薬にも手がでません。
今いたって元気でもともと鼻炎もちでもない娘に
点媚薬は必要ですか?耳管狭窄症は自然治癒ということはないですか?
お忙しいところたびたびの連絡すみません。
何かアドバイスいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。
********************

 遥かおフランスのお子様の耳と我が家のパソコンを瞬時につなぐインターネット。
 かのマルコ・ポーロがこの状況を見たら何とおっしゃるか。
 そんなことは、おいといて。
 ①点鼻薬は2カ月必要か
 ②抗生剤は必要であったか

 の2点ですね。
それから、その前に
 ③鼻をかむことについて
 のご質問もありました。
 まず、「点鼻薬」ですが、どのような点鼻薬を使ってるのかが
ちょっと不明です。
 ところで質問者の「点鼻薬」は
誤変換(?)により何やらアヤシイ「テンビヤク」になっており
ちょっとドキドキしちゃいますが、
通常の点鼻薬としてお答えします。
 
 点鼻薬については過去にもこのブログで何回かとりあげています。
いまどきの点鼻薬
花粉症の市販薬(点鼻薬編)
点鼻薬にご用心
 これは、花粉症患者さんのみならず、
薬剤師さん必読です。
(そんなことよく知ってる、という薬剤師さんには失礼しました、
でもお医者さんでも意外と知らない人は多いぞ)
 この場合、点鼻薬は鼻腔というより、その奥の上咽頭にある
耳管開口部付近の炎症をとってやろうちゅうのが目的でしょうね。
 多分、抗アレルギー剤の点鼻薬かステロイドの点鼻薬でしょう。
 また、アデノイド増殖症に対して点鼻ステロイドが有効、
とする報告もあります。
 血管収縮剤で無ければ続けてみていいのでは、と思います。
 抗アレルギー剤にしろステロイド剤にしろ
点鼻薬は「続けること」が重要なので。
 ただし、風邪をひいて膿性の鼻汁がある時には、
ステロイドはかえって悪化させることがありますのでやめときましょう。
 ②抗生剤は必要であったか
 については、さらに分かりませんね。
 急性中耳炎で化膿が強い場合には抗生剤を様々なレベルで使いますが、
その決め手は「鼓膜所見」が多くの比重を占めていて
痛みや熱が無くても使用する場合もありますし、
逆に発熱や耳痛があっても使わない事もあります。
 各国にガイドラインがありますが、
ちなみにオランダのガイドラインは世界一きびしく、
かなりの中耳炎でも抗生物質を使わないようになっているそうです。
 ③鼻をかむことについて
 鼻をかむことは、鼻腔をよい状態に保つために重要で
正しい擤鼻(こうび、と読みます。ハナをかむことです。)は
中耳炎や副鼻腔炎を予防します。
 ただし、こいハナを強くかみすぎると
耳管から中耳へ鼻腔の細菌を送り込んで
急性中耳炎の直接の原因になります。
 繰り返しかむ、そっとかむ、ハナがたまったらかみたくなる、
という習慣を早く身につけることが重要です。
 ちなみに最初にあった「カタル」というのは
粘膜が炎症を起こして水分が分泌される状態で
「耳管カタル」「中耳カタル」の他、
アレルギー性結膜炎の一種である「春季カタル」、
水様性下痢の「大腸カタル」などの言葉がありますが
古い医学用語で今は一般的には使われません。
 中東の産油国で「ドーハの悲劇」で有名な
カタールとはもちろん関係ありません。
(ラモスーーーー。)
 日本も暖かくなってきて、
子供さんの中耳炎もだいぶ減りました。
 フランスは日本より寒いんでしょうか。
 これからはシーズン的に中耳炎が良くなるチャンスですね。
 新婚旅行の時にパリに1泊しただけなので、
またそのうち行ってみたいです。
 ル・マン24時間レース観てみたいなあ。
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1件のコメント
2013.04.29

何故、中耳炎になりやすいのか?


はじめまして。息子が度々中耳炎になるので少しでも詳しく調べようと思っていたら、
先生のブログにたどりつきました。
薬のことなど、とても分かりやすく、母として、本当に勉強になります。
本題は、1才3ヶ月の息子が半年の間に5回も中耳炎を繰り返すのですが、
何故中耳炎になりやすいのでしょうか?
中耳炎にならないように予防する方法はないでしょうか?
毎回、中耳炎と診断されて、完治したので、通院しなくても良いですと言われるまで通っているのにまた、二週間くらいの間で通院しなくてはいけなくなるという繰り返しで、心配になります。
年子の姉は2才ですが、いまだに中耳炎になったことはないので、
姉のように少しでも強くなってくれればと願うばかりです。
先生のご意見、よろしくお願いします。



 さて、なぜ、中耳炎は繰り返すのか?という、素朴だが、大変難解な疑問です。
 中耳炎はなる子は何回でもなるが、
ならない子は全然ならない、
この辺が問題ですね。
 では、まず中耳炎のメカニズムを考えましょう。
 中耳炎は鼻の細菌が耳管という管を通って
中耳内に侵入、そこで繁殖することにより起きます。
 その細菌は中耳炎の時に感染したもので無く、
もともと患者さんが鼻の中に「飼っていた」ものが多い。
 中耳は無菌的な場所ですが、
鼻腔は必ず何らかの細菌が住んでいます。
 風邪の病原体はウイルスですが、
風邪のウイルスによって鼻の粘膜が障害を受けると、
鼻の中にもともと住んでいた菌が増殖を始め
いわゆる青っパナになります。
 そこで、普段鼻の中に「飼っている」菌が
肺炎球菌やインフルエンザ菌なのどの中耳炎をおこしやすい菌である場合、
中耳炎を起こすリスクが高いといえます。
 この菌は抗生剤で中耳からは消えても、
鼻腔からは消えないのでリスクは残ります。
 逆に、普段から抗生剤を頻繁に使っていると、
抗生剤の効きにくい、いわゆる「耐性菌」が鼻の中に
常在するようになるため、中耳炎が治りにくくなります。
 風邪の時に「中耳炎になると困るから」と抗生剤を用いるのは
かえって中耳炎を悪化させる要因です。
 抗生剤で中耳炎は「治療」できますが「予防」することはできません。
 また、中耳に菌が入りやすい、中耳に入った菌が排泄されにくい条件として、
鼻の慢性の炎症があります。
 副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎の存在は、
反復性中耳炎の最も重要な因子です。
 1歳、2歳ではまだ副鼻腔そのものができてないので
真の意味での副鼻腔炎はありませんが、
ハナが出なくてもセキやタンが続く場合は
鼻腔粘膜の繊毛運動が阻害されている場合が多く、
副鼻腔炎に準じた扱いが必要です。
 また、鼻が少しでも出ると中耳炎を繰り返していた子供が、
ある時を境に中耳炎を起こさなくなるという事もあります。
 中耳にはある程度「自浄作用」があって
多少のばい菌の侵入は洗い流して処理してくれます。
 例えば風邪の時鼻を強く噛みすぎて
耳がブチブチっとなった経験はありませんか。
 でも、たいがいはそのまま、何も起こらず治ります。
 ところが中耳炎のあとは、中耳の粘膜がまだむくんでいて
侵入した外敵を排除する働きがにぶっています。
 中耳炎は完全に治っても
しばらくは、またなりやすい状態が残る、という事です。
 だから、お母さん方には中耳炎治った直後は、
少々のハナ風邪でも受診してください、とお話しています。
 反復性中耳炎でチューブ留置の効果があるのは
チューブによって耳管機能が改善し、
中耳の粘膜が機能をを回復する時間が稼げるという事です。
 そこで一般的には反復性中耳炎の危険因子として
①1歳前での初回中耳炎
②集団保育
③母乳栄養が無いか不十分
④上に兄弟あり
⑤おしゃぶりを使っている
 などがあげられますが、
⑥両親にアレルギー性鼻炎の体質が強い
⑦風邪の時に抗生物質を多用していた
 なども考慮すべき因子でしょう。
 いずれにせよ、中耳炎はまず、「発見」してあげて、
キチンと「治癒」させることが重要です。
 何回なっても、そのつど最後まで治っていれば
難聴が残ることはありません。
 繰り返し申し上げますが母親は一番の「主治医」ですので。
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2013.04.19

中耳炎の痛み

********************
始めまして。****と申します。大変ずうずうしいご連絡申し訳ありません。。中耳炎について情報収集していましたら先生のブログにたどり着きました。何かご意見頂けたら嬉しいです。現在フランスに在住で去年の9月から
娘が幼稚園に通いだし(現在3才3ヶ月です。)冬の間中風をひいていました。そのたびに黄緑色をした鼻水を
出していて現在までに4回中耳炎にかかってしまいました。お医者様からは毎回抗生物質と痛み止めを処方して
頂き翌日には耳の痛みもひいていたようです。
4月の頭にまた黄色い鼻水を出し耳が痛いというので
いつもと同じようにお薬を処方してもらいすぐに元気になりました。その後風邪もすっかりよくなり2週間ほど過ぎたところ、おとといから突然耳をすごく痛がりまた先生に診てもらうと「まだ中耳炎が残っている」とのことで耳鼻科の紹介状を渡されました。ところが診察
の予約が取れたのが2週間後で3日経っても耳を痛がる
娘が心配でなりません。。。こちらの病院は予約が取れるまで1ヶ月待つということも普通です。海外の病院とということで状況が詳しく分かり辛いというのも心配です。耳垂れなどは一切でていません。鼻水もでていなく
元気な状況で今まで以上に耳を痛がっているのは、急性中耳炎の悪化でしょうか?お忙しいところ本当にすみません。。よろしくお願いいたします。

********************
 ぬわんと遥かフランスからご質問いただきました。
 フランスと日本では大きく医療体制が違うので
実際よくわからないところもありますね。
 ワタシの知ってる範囲では一般に海外では
いわゆる「家庭医」が何でも診てその判断で専門医に紹介するような
システムになってるケースが多いようです。
 だから、内科・小児科といっても日本と違って
キチンと子供の鼓膜がみられるトレーニングを受けていると聞いています。
 「反復性中耳炎」は全世界的に今大きな問題ですので、
フランスでもそういった例が増えているのかなあと思います。
 さて、ご質問の「耳痛」についてです。
 急性中耳炎の主症状である耳の痛みは、
どこから来るのでしょう。
 中耳炎の痛みは中耳の痛みでは無く、鼓膜の痛みです。
 鼓膜はその性質上、外傷を受けると困るので
何かが耳に入った時に素早く逃げるように痛みの神経が集中しています。
 眼球と同じく、接触による痛みにきわめて敏感な部位です。
 中耳炎で中耳に膿がたまり鼓膜が押されて膨隆すると
激しい痛みに見舞われます。
 逆に鼓膜の腫れが限界に達し、耳だれが出た場合には
痛みや発熱は無くなるわけです。
鼓膜切開と同じことです。
 ただ、ホントに激しい痛みは3日も4日も続くことはありません。
 鼓膜は「腫れてくる時」が痛いので
「腫れきって」しまえば、断続的に鈍い痛みはありますが、
泣き叫ぶような激痛は無いものです。
 ただし、横になったりすると
重力の関係で痛みが増加することはあります。
 そんなわけで、耳が痛いうちは中耳炎は治ってないのはもちろんですが
痛みが取れたのは治ったことではないので要注意。
 ご質問の方は3歳なので
ある程度痛みなどの表現ができるので
滲出液の貯留で痛みを訴えていると思いますが、
痛みの程度を良く訊いてみることが必要です。
 激痛で無ければ2週間後の専門医でもよろしいと思いますし、
素人考えで抗生物質を飲ませたり、はかえって状態を治りにくくする恐れがあります。
 もし、痛みが激痛であればとりあえず「痛み止め」が有効です。
 アセトアミノフェンなどの成分を含んだ「消炎鎮痛剤」を使いますが、
なければいわゆる「頭痛薬」で緊急的にはオッケーです。
 ただ、その場合は中耳炎が「Hot」の状態ですので、
できれば早めに家庭医に診てもらった方がいいかもしれません。
 それにしても2週間先、1カ月待ちも普通ですか・・・・。
 休日でも夜中でも耳が痛ければ専門医のオグラセンセイに
電話がつながっちゃう日本の医療制度はたいしたもんだなあ。
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2件のコメント
2013.03.25

小児急性中耳炎における抗生剤について

 今日は、こんなご質問です。



先生、こんばんは。
中耳炎を調べていてこのブログにたどり着きました。
三歳男児(まだ幼稚園へは通っていません、この4月から通園予定です。上に五歳の幼稚園児の兄がいます。)について質問させてください。
今までに4回鼓膜切開(左耳)しています。
3月頭に風邪から鼻水が長引き、発熱と左耳の耳だれで中耳炎になっていました(約10ヶ月ぶりです)。
メイアクトとビオフェルミンの混合(1日3回)とメチスタDS33.3とプランルカスト(朝晩2回)を処方され、一昨日受診すると右耳は治っていましたが左耳はまだ治っていませんでした。
今回は、前回鼻汁培養でブランハメラが検出されました。
薬は、ワイドシリンとビオフェルミンの混合(1日3回)、オーグメンチン配合錠250RSと白糖の混合(朝晩2回)、プランルカストとメチスタDS33.3(朝晩2回)が処方されました。
が、先生のブログを読ませていただくとブランハメラにワイドシリンは効かないのでは?と思いますし、以前別の耳鼻咽喉科へ行った時にワイドシリンが処方され下痢しているので飲ませたくないのもあります(下痢については明日、病院に電話して伝えようと思っています)。
そこで質問なのですが
1.ワイドシリンとオーグメンチン配合錠250RSといったペニシリン系の薬を同時に処方することは、普通にあるのでしょうか?
またブランハメラにオーグメンチン配合錠250RSは有効でしょうか?
そして有効であるならオーグメンチン配合錠250RSだけ飲んでも中耳炎には効果があるのでしょうか?
2.去年5月に中耳炎(左耳)になった際に抗生剤を飲んでも完治に至らず、チューブも検討しようか…との話しになり、薬を全く飲ませずに、約2週間後に再診した際は、なぜか治っていました。
なので、今回も自然に治るのでは…と期待したりしています。
中耳炎が自然に治ることは頻繁にありえますか?
自己の免疫力か細菌に勝ったということになるのでしょうか?
成長と共に体が大きくなり体力がつけば、中耳炎も起こさなくなるのでしょうか?
いろいろ質問してすみません。
深く悩んでいて今に至ります…


 うーん、今回の質問はなかなか興味深いですね。
 まず、最初に耐性菌の話をします。
 ペニシリンやセフェム系の抗生物質はその構造から
βラクタム系と総称されます。
 βラクタム環という化学構造が基本骨格になってるためです。
 1980年代になり、このβラクタム環を破壊する
「βラクタマーゼ」という酵素を産生する細菌が登場し、
薬の効かない耐性菌として問題になりました。
 そこで、高域ペニシリンにβラクタマーゼをブロックする物質を組み合わせて
作られた薬が「オーグメンチン」です。
 耐性菌のさらなる増加によって2000年代に入って
小児の中耳炎に特化した薬「クラバモックス」が開発されましたが、
これも成分はオーグメンチンと同じ
アオモキシシリン(ペニシリン)とクラブラン酸(βラクタマーゼ阻害剤)
の合剤です。
 そののち、インフルエンザ菌や肺炎球菌は
βラクタマーゼとは別のメカニズムで薬剤に対する抵抗性を獲得していきました。
 なんとなく、ミサイルとミサイル防衛システムの軍拡競争みたいです。
 ただし、ブランハメラは昔ながらの(?)
βラクタマーゼ1本槍がほぼ100%なので、
ペニシリン単独では効かないがβラクタマーゼ阻害剤があれば効く、
というところです。
 では、質問者の主治医の処方はおかしいのか?
という点です。
 ここで、注目すべきは
ペニシリンと、βラクタマーゼ阻害剤の配合比率です。
 1985年に発売されたオーグメンチンでは
ペニシリンとクラブラン酸の配合比が2:1、
しかし2006年に発売されたクラバモックスは
その比が14:1なのです。
 以前に比べて市中の菌の耐性化が進んだ結果、
中耳炎の難治例にはそれまで体重1kg当たり30mg程度で
処方されていたペニシリンをその倍量以上での投与が推奨されています。
 クラバモックスではペニシリンの力価は
体重1kg当たり90mgになっています。
 そうです、この先生はオーグメンチンで足らないペニシリンの力価を
単剤のペニシリンで補おうとしたのでしょう。
 かなり「オタク」な処方と言えよう。
 ここは、クラバモックスを出しちゃえば済む話なのだが、
そうしないのは何かあるんですかね。
 クラバモックスは独特の飲みにくさがあるので、
それを回避するため、こんな手の込んだことしたのか。
 しかし、この処方は一般的ではないので、
少なくとも薬剤師さんはその意味を説明すべきですね
 しかし、この処方、保険とおるんですかねー。
 審査の先生がオーグメンチンと、クラバモックスの
成分だけでなく配合量も知らないと・・・。
 1番目の質問に対してはこんなとこです。
 2番目に関しては・・・・
 もちろん病気が治るのは人間の自然治癒力で、
ほっといて治ることは、少なからずあります。
 が、ほっといて悪化することもさらに多くありますので、
よく経過を見た方がいいでしょうね。
 成長とともに中耳炎は起こしにくくなるのは事実ですが、
保育園に行くようになると中耳炎をおこしやすくなることも
また事実です。
 そんなわけで、お大事に。
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2013.01.22

子供の鼓膜チューブ留置術についてのご質問


 前回のブログは病院あてのメールにお答えしたもの。
 やっと書き終えたと思ったら、
ブログコメントに一件、拍手コメントに一件ご質問がありました。
 やはりこの時期、寒いので風邪から
耳鼻科領域での病気になるお子さんが多いと見える。
 で、ブログコメントでのご質問はこちら。
********************
先生のブログに今日たどりつきました。よろしくお願いします。
五歳の娘が、しん出性中耳炎のためチューブ手術をする予定です。
鼓膜切開し水を抜いたことが数回あるのですが、いやがってよく動きます。そのため、近くの大きな総合病院で全身麻酔でチューブをいれることを勧められました。そこで、チューブが必ずしも必要なのか、セカンドオピニオンのつもりで診てもらった耳鼻科が、うちなら局所麻酔で娘さんより小さな子どももやってるから局所麻酔でできるよと、言われました。
娘は鼓膜切開の際、よく動き…先生を蹴ったり…頭を動かしてしまったりします。やはり、全身麻酔がいいのかもと思い、総合病院へ行き手術の予約をしました。しかし予約が、だいぶ先になってしまっため…今日また、かかりつけの耳鼻科で鼓膜切開し水を抜いてきました。そこで…なんと…娘を真剣に説得してから(動いてはいけないという説得)、切開を始めたら…ピクリともせず、動かずにしっかり切開をうけることができたんです…。
全身麻酔の予約をしたものの、今日みたいに動かずに切開ができるなら、局所麻酔のほうがいいのではないかと迷いがでてきてしまいました。
どのように選択したら、よいのでしょうか。
全身麻酔の説明をまだうけてないので知識がないのですが、全身麻酔は局所麻酔より体への負担があるイメージがあり不安です…わたしの希望としては局所麻酔です。しかし動いてしまうのでないかと思うと全身麻酔のほうが安全なのかもと思ってしまいます…。
先生のアドバイスをお願いします。
********************

 なるほど。
 結論からいえば、できそうなら局所麻酔で入れちゃえば、
ということです。
 娘さんが2歳3歳では無く、もう5歳。
 という事は、個人差はあるがある程度話が通じる年齢です。
(特に女の子は)
 しかも、一度鼓膜切開を動かずにきちんとできてます。
 痛くない事がわかれば、次もきっとできるはず。
 鼓膜チューブ留置術はワタシに言わせれば鼓膜切開がキモ。
 適切な場所にキレイな切開ができればチューブ挿入はそう難しくない、
と思っています。
 しかも、その耳鼻科の先生が自らそういうからには、
自分の手術手技にそれなりの自信があるはず。
 おそらく総合病院の先生よりはチューブ挿入上手いかもですよ。
 ワタシの意見では切開孔閉鎖とともにすぐ水がたまっちゃうようなら、
もう一度局麻で鼓膜切開をして、
行けそうならそのままチューブ入れちゃう。
 ダメそうなら、無理せず全麻まで待つ、
ってのが一応のおススメです。
 実際に耳の状態も診てないし、
そちらのお医者さんもどちらも知らないので
あくまで参考意見としてですが・・・・。
 もう一件、別の方から頂いた咳止めに関するご質問には、
次回お答えしますね。
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3件のコメント
2012.11.29

オラペネムが効かなくなったら


 みなさんこんばんは。
 お馴染み「耳鼻咽喉科Q&A」のコーナーです。
 今日はコメント欄に2つも質問もらっちまって、
まあ、早いもん順に行きますね。


おぐぐー先生、はじめまして。私は5歳と1歳の男の子を育てている母親です。子供は二人とも保育園に通っています。下の子が今年の5月(8ヵ月)で急性中耳炎を発症て以来、先生のブログによく訪れるようになりました。今日は先生に質問があり、初めてコメントさせていただきました。長文、大変申し訳ないのですが、一読いただけると幸いです。
下の子は11月まで13回も急性中耳炎を繰り返しています。9月には両耳にチューブを入れました。チューブを入れた後も6回急性中耳炎にかかっています。最初に急性中耳炎になった時にサワシリンを処方してもらったのですが、サワシリンを飲んでアレルギーを起こし、10月までメイアクト、フロモックス、バナン、テラミロン(トミロンのジェネリック品)とセフェム系の抗生物質を飲み渡り、ついにセフェム系の抗生物質が全く効かなくなったので、11月にオゼックスを飲み始めました。いったんは良くなったのですが、1週間もたたない間に再発し、2回目のオゼックスを1週間飲んで、一昨日ようやく耳だれが止まったばかりです。
かかりつけの耳鼻科医には、オゼックスが効かなくなったらあとはオラペネムしか治療薬がない。オラペネムが効かなくなったら、もう耳だれをとめる事ができないと言われました。
そこで先生に質問なのですが・・・
(1)オラペネムが効かず耳だれを止める手段がなくなってしまった場合、耳はどうなるのでしょうか。
(2)抗生物質は必ず使わなくては治らないのですか。他に治療法はないのでしょうか?
(3)一度効かなくなった抗生物質は二度と使えないのでしょうか?
お忙しい所大変申し訳ありません。このコメントが先生の目にとまってくれることを切に願っております。


 コメントありがとうございます。
 ま、そりゃ、目にとまりますに決まってますが。
 なかなか、大変ですね。
 まず最初の質問にあるように
オラペネムが効かず耳だれを止める手段がなくなってしまった場合、耳はどうなるのでしょうか。
 これ、心配ですね。
 耳だれ止まらないと慢性中耳炎、という事ですね。
難聴が残り耳漏が続きます。
 将来手術が必要になり、手術しても聴力は正常化しない場合も少なくありません。
 そりゃ、困る。
 でも、多分、大丈夫。
 そうならないために耳鼻科に行ってるわけですから。
 次の質問にも合わせて、ちょっと考えてみます。
 まず、オラペネムも効かなくなるともう手は無いのか、
というところです。
 おそらく、この方の場合、主治医の先生は耳漏の培養を取ってると思います。
 それによって、これが効く、効かなくなってきた、
などと感受性検査を見て抗生剤の選択をしてるわけで、
これは正当です。
 薬もペニシリンアレルギーなので、
メイアクト、フロモックス、バナン、トミロンなどを使った、
というのもうなずけます。
 ただ、これらはすべて同じセフェム第2世代なので、
菌の感受性も似ており、
メイアクトが効かなければ、まあまずそれより弱いバナンなんかは効かないでしょう。
 今回、伝家の宝刀オゼックスの働きで耳漏停止したとのことで、
ひとまず良かったですね。
 で、オゼックス、オラペネムが効かなくなった場合です。
 この方はチューブが入ってる、というところがポイントです。
 菌検査でもしタリビッドに感受性があれば、
耳鼻科に通院しタリビッド点耳による耳浴(洗浄)をしてもらうのは手です。
 点耳は穿孔の無い鼓膜につけても意味がありませんが、
チューブが開いてれば中耳に薬液を入れることができます。
 ただし、耳だれの上からぽたぽた垂らしても、
中耳には入りませんし、かえってあっという間に耐性化します。
 必ず、耳鼻科で顕微鏡下に耳漏を吸引してもらったうえで、
チューブの穴を通って行くように点耳しなければ有効ではありません。
 これによって耳漏のコントロールができる場合があります。
 いや、そんなことはもうやってる、とか、
もし、点耳薬がすべて耐性だった場合はどうしましょう。
 この場合は、生理食塩水で洗います。
 もともと我々の体には菌と戦う力があるので、
条件が良ければ抗菌薬なんかなくたって耳漏は止まります。
 ばい菌が減って、中耳粘膜が抵抗力を回復し
自力で処理できるくらいになれば、
耳だれは止まってきます。
 もともと耐性菌というのは遺伝子を変異させてる分、
菌自体の増殖力は一般の菌より弱いものです。
 抗生剤づけにすると、ライバルの菌がいなくなるので、
残った耐性菌が縄張りを広げることができるのです。
 だから、抗生剤が効かなくなってきた時、
思い切って抗生剤をやめちゃう、ってのはとこどきやる手です。
 いつの間にか感受性菌が耐性菌を駆逐して、
以前効かなくなった抗生剤ですんなり治る、という事もあります。
 幸い、肺炎や髄膜炎と違い、中耳炎の場合はチューブさえ入ってれば、
耳だれ以外の症状は無く、危険もありません。
 それでも止まらない場合。
 チューブを、抜きます。
 チューブはしょせん、異物です。
 チューブの周りに細菌がバイオフィルムをつくって、
いわゆる「ばい菌のすみか」になってる場合があるのです。
 以前、総合病院で中耳炎の治療をし良くならないで全身麻酔で両耳にチューブを入れ、
それでも耳だれが止まらず、お手上げだと言われた幼児が来ました。
 何回か治療して菌の感受性などを確認したうえで、
チューブを抜去して洗浄を続けたらきれいに治りました。
 耐性菌の問題は日々我々を悩ませている問題です。
 もともと、風邪などの抗菌薬のいらない患者さんに、
むやみに抗菌薬を出したことによる一種の医原性疾患です。
 これが効かなければ、さらに強い薬を、
という西洋医学的な考え方がもたらした「ひずみ」だと思っています。
 薬や治療でで病気を治すのではなく、
いろんな方法で体にとって治りやすい環境を整えてあげる、
ってのが医者の仕事かなあ、と日々考えています。
 医者が病気を治すのではなく、
患者さんが勝手に治っていく道すじをつける、
というのがワタシの医者としての持論です。
 ええと、あと一つの質問は、またあとで。
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2012.11.14

小児急性中耳炎のガイドラインについて

 実は急性中耳炎の治療について、
コメントを頂きましたが、非公開コメントなので、
お答えのみいたします。
 ご質問は10か月のお子さんの中耳炎についてです。
 中耳炎の治療方法、抗生剤の選択は、
ご質問のようにケースバイケースで、
お医者さんの考え方、知識、技量によっても違ってきますし、
ただ一つの正解があるわけではありません。
 しかし、近年の小児急性中耳炎の難治化に伴い、
2009年に小児急性中耳炎治療のガイドラインが
日本耳科学会を中心とした耳鼻咽喉科専門医の委員会により策定されており、
基本的にこのガイドラインを参考にして治療するようになっています。
(でも、読んでない医者も多いかも。)
 インターネットで
「小児急性中耳炎診療ガイドライン2009年版」
を検索すれば閲覧できますが、
素人のヒトがいきなり見ても難しいので、
要点をまとめますね。
 まず、診断編として、小児急性中耳炎の重症度を
軽症、中等症、重症の3段階に分類します。
 発熱、耳痛、啼泣・不機嫌などの自覚症状と、
鼓膜の発赤、膨隆、混濁、耳漏などの他覚所見等をスコア化して点数をつけます。
 例えば、発熱なら37.5度未満は0点、
37.5~38.5度は1点、
38.5度以上は2点などという感じです。
 診察所見で点数が高いのは鼓膜の発赤よりも膨隆です。
鼓膜発赤: 0(なし),2(ツチ骨柄あるいは鼓膜の一部の発赤),4(鼓膜全体の発赤)
に対し
鼓膜の膨隆: 0(なし),4(部分的な膨隆),8(鼓膜全体の膨隆)
と高得点です。
 鼓膜が真っ赤っかでも、腫れが無ければ4点で、
全然赤くないけど全体に膨らんでれば倍の8点です。
 それからこのガイドラインの素晴らしいところは、
24か月例未満(すなわち0歳、1歳)であれば、
それだけで3点加算があるというところ。
 2歳未満の中耳炎がいかに手ごわいかを示しています。
 これらにしたがって、治療法が選択されますが、
まず9点以下の軽症例は抗生物質無しからスタートです。
 そのあと、重症度、経過によって抗生剤が入って来ますが、
ガイドラインでは概ね
①ペニシリン常用量
②ペニシリン倍量、メイアクト常用量、クラバモックス
③メイアクト高用量
④ペニシリン、ロセフィン点滴

の順に上がっていきます。
 途中から、鼓膜切開をする、という選択肢が入って来ます。
 ここには、オラペネム、オゼックスが入っていませんが、
オラペネムが2009年、オゼックスが2010年の発売ですので、
ガイドライン作成時には一般に出回っていませんでした。
 現時点では④に当たるものと考えていいと思います。
 ガイドラインは3~5年で改定となってますので、
そろそろ次の版が出ると思います。
 ワタシは実際にはいちいち所見を厳密にスコア化はしてませんが、
ガイドラインに基づいて重症度を判定し、
治療の選択をするようにしています。
 したがって、抗生剤もここに出ている、
ペニシリン(種類多いけど当院では飲みやすさを考慮して力価が倍で半量で済むワイドシリンを選択)
メイアクト、クラバモックスと
オラペネム、オゼックス以外の抗生剤を使う事は原則的にはありません。
 もちろん、オラペネム、オゼックスは「奥の手」の薬ですから、
なるべく使わずに済むように心がけています。
 また、ガイドラインでは中等症以上の例には途中で
「感受性を考慮し」
の文言が出てくるので、
基本的に2歳以下は初回に培養を取るようにしています。
 ありふれた病気だがキチンと対応しないと、
泥沼にはまり込む事がある、
そんな病気が小児(特に乳幼児)急性中耳炎です。
 ご質問の答えになってるかどうかわかりませんが、
ご参考になさってください。
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6件のコメント
2012.10.30

今日のご質問


 皆さん、お元気ですか。
 「耳鼻科医おぐぐにこの際なんでも訊いちゃおう」のコーナーです。
(いい加減、名称統一するかなあ。)
 今日はこんなご質問を頂きました。
こんばんは。突然で失礼致します。
> 不審に思ったことを専門的知識のある方にお聞きしたいと思いメールさせていただきました。
>
> 2歳8ヶ月の息子は、約2年前から中耳炎(おそらく滲出性中耳炎)を繰り返し耳鼻科に定期的に通院中です。チューブを入れていたこともあります。
>
>
> 以下、本題です。
>
> 10/23(火):受診するも問題なし。
> 10/26(金):朝から右耳から耳だれ。午後受診。メイアクト処方。
> 10/29(月):再受診。耳だれ培養。ワイドシリン処方。
>
>
> 《質問》
>
> ①今まで病名の確定をされたことがありません。病名はつけづらいのでしょうか? 
>
> (病状の説明や原因、治療方針など細かな説明もほとんどしていただけません。
> なので、自宅に帰ってからネットで調べています。
> 上記に‟おそらく滲出性中耳炎”と書いたのも診察の時に言われたことをネットで調べたら
> たぶんそうだろうと…。)
>
> ②小倉先生がブログに書かれていましたが、抗生剤の使用する順番ですがワイドシリン→メイアクトではなく、メイアクトから使うこともあるのでしょうか?
>
> ③培養結果を見てから抗生剤を変更するべきではないのでしょうか?
>
> ④素人が見て耳だれを予測することが出来るのでしょうか?
>
>
> 再受診の際に左手小指の爪を見て、爪がのびているからこれで掻いているのだと説明されました。2歳の子供が、わざわざ反対のしかも力の弱い小指で耳の中を掻くとは思えません。
> おっさんじゃあるまいし…。実際にそんな光景を見たら素人の私でも何か変だと気付くはずです。
> 小倉先生の病院が近くならすぐにでも受診したいところですが、
> 疑問に思っていることだけでも解決していただけたら有難いです。
> お忙しいとは思いますが、宜しくお願いします。
>
>

 ふむふむ、今回はご質問が箇条書きで整理されてて助かります。
 では、それに従って
①今まで病名の確定をされたことがありません。病名はつけづらいのでしょうか? 
>
> (病状の説明や原因、治療方針など細かな説明もほとんどしていただけません。
> なので、自宅に帰ってからネットで調べています。
> 上記に‟おそらく滲出性中耳炎”と書いたのも診察の時に言われたことをネットで調べたら
> たぶんそうだろうと…。)

 これは・・・・・、どうですかね。(汗)
 普通は、説明しますよね。
診察の結果を説明しないと治療法や薬の説明もできませんね。
もちろん診断がつかない時もありますが、
その時はなぜ診断がつかないかを説明して予想される選択肢をあげるのが、
普通なのでは・・・・。
 よっぽどお忙しいとか、口下手だとか、偏屈だとか・・・・・。
 でも、訊けばきっと説明してくれると思いますよ。

> ②小倉先生がブログに書かれていましたが、抗生剤の使用する順番ですがワイドシリン→メイアクトではなく、メイアクトから使うこともあるのでしょうか?

 これは、良くあります。
 ガイドラインはあくまで「原則」であって、状況によって変わります。
 以前の菌培養の結果とか、前医で投与されてた薬や、
重症度や、頻度や、薬の好き嫌いや、兄弟やコミュニティの現状などによっても変わります。
 一般的にワイドシリンよりもメイアクトの方が抗菌スペクトルが広いですが、
それでも、メイアクトよりワイドシリンの方が良く効く場合も
少なくありません。
 まあ、中には、さしたる根拠が無く「なんとなく変えてみた」なんて先生が
絶対ないとは言えないのですが・・・。
> ③培養結果を見てから抗生剤を変更するべきではないのでしょうか?
 培養結果が出るのには5日から1週間かかりますが、
抗生剤の効果は3,4日でわかるので、
効いてないな、と思ったら培養出る前に抗生剤の変更はあります。
> ④素人が見て耳だれを予測することが出来るのでしょうか?
 予測は難しいです。
 例えば、初診時に鼓膜が激しく腫れていれば、
今晩あたり耳だれ出ちゃうかもしれません、とお話ししておきます。
 ただ、急性中耳炎はそれこそ「急性に」くるので、
昼間なんでもないですよ、
と言われて夜中に耳だれ、という事も良くあります。
 特に、チューブを入れたような、中耳炎を反復されているお子さんは、
鼓膜が腫れてから破けて耳だれになるまでが早いです。
 熱や痛みの訴えがほとんどないままに耳だれになることがあります。
 お母さんにはその事を説明して、
耳がぐちゃぐちゃしてたり、逆にカバカバになってたらすぐ来てね、
とお話しています。
 しかし、左手の小指の爪で右耳を掻く2歳児は、
そりゃ、いないような気がしますが。(笑)
 何か疑問の点があれば、ご相談ください。
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2012.10.23

鼓膜チューブ留置術に対するご相談

 こんにちは。
 ドクターおぐぐの「耳鼻科教えてコーナー」です。
(また名前変わってる?)
 こんなコメントを頂きました。


中耳炎で検索して先生のブログを拝見しました。
本当に悩んでいまして、お時間ありましたら、相談にのっていただけたらありがたいです。
今6歳の子なのですが、チューブを入れるかどうかで迷っています。
1歳の時に急性中耳炎で切開。その後、急性のたびに抗生剤で治し、2歳の時から滲出性になり現在まで、5~6回切開もしたり抗生剤だけで治したりときました。
夏場は1ヶ月くらいは大丈夫な時期もあるのですが(この前の冬場は2ヶ月くらい大丈夫でした)、風邪をひくとまた水がたまって濁ってきます。その度に、軽い時は漢方で、ひどい時は最近はオゼックス、ジスロマックを飲んだりしています。先日の急性の時はオラペネムを飲みました。
チューブは、かかりつけの外来で出来ると言われていますが、うちでは大人も子供も大きい太いのを入れます、と。またチューブを取った後に、穴がふさがらなくなることもまあまああります、と言われ、穴をふさぐ手術は外来では出来ず転院して入院して手術になります、と言われて、チューブを入れることにためらいがあります。
このまま中耳炎の度に抗生剤を飲むことにも抵抗がありますし、かと言ってチューブ取った後の穴が残ったままになったらどうしよう、、、という不安もあります。
長々となってすみません。


 ご心配のご様子です。
 いつもそうですが、実際に診察していないので
あくまで参考までにお読みいただきたく。
 これは、おそらくチューブを入れるべきです。
 1歳から急性中耳炎をおこし、2歳から滲出性中耳炎で
しかも軽快してる時間がほとんど少ない。
 このままいくと、鼓膜が傷んでしまい、
後遺障害を残す可能性が心配です。
 滲出性中耳炎の状態は痛みなどの症状はありませんが、
鼓膜には常に負担がかかっており、
長年の間には鼓膜が次第に変質してくることがあります。
 ぴんと張った太鼓の皮のような鼓膜が、
薄っぺらになって、伸びたパンツのゴムみたいな
テロテロ、ヘナヘナな状態になってしまう事があるのです。
 こうなってしまうと滲出性中耳炎の本体である
耳管機能不全が改善されても鼓膜が正常に機能しなくなります。
 耳管機能は年齢とともに改善しますが、
鼓膜がダメになっちゃうと難聴が残ります。
 チューブは当院でも子供でも大人と同じ大きさのモノを入れます。
 0歳からすべて手術は局所麻酔です。
 小さいチューブを試したこともあったのですが、
閉塞や脱落で使い物にならなくなることが多くやめました。
 ご心配の鼓膜穿孔は、数パーセントの割でやはり発生します。
 当院では閉鎖しないものは小学校高学年になるのを待って、
外来で閉鎖術を行います。
 外来で閉鎖しないものは入院で手術することもありますが、
あってもごく少数だと思います。
 穿孔は手術でふさげますが、
ペナペナになった鼓膜は、一生治りません。
 まあ、あくまでワタシの考えであって、
しかも、診てないので、中耳炎の程度や鼓膜の状態などわかりませんので、
結論は主治医の先生とよく相談してお決めになられるのがいいと思います。
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医療系をまとめました。
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