ゴジラFINAL WARS
ここまで来たらこの作品についても書かねばなるまい。
2004年公開のミレニアムシリーズ最後の作品。
「ゴジラFINAL WARS」。
ミレニアムシリーズ最後どころか、
ポスターのキャッチコピーにもあるように
ゴジラ映画50周年の集大成、最高峰にして最終作、
になるはずであった。
1954年初代「ゴジラ」公開からちょうど50年。
1975年の「メカゴジラの逆襲」で第1期昭和ゴジラシリーズがいったん終了したあと、
1984年に30周年記念として復活した「ゴジラ」第2期、いわゆる「vsシリーズ」が
1995年の「ゴジラvsデストロイア」まで続く。
そしてハリウッド製作版を挟んで
1999年の「ゴジラ2000ミレニアム」から第3期ミレニアムシリーズが製作された。
これまでの集大成、最高峰と聞いてファンの期待は高まったが、
田中友幸、本多猪四郎、円谷英二の3人がこの映画を観たら、
どんな感想を抱くだろうか。
根っからのゴジラファンのワタシは、
どんなストーリーのゴジラ映画であっても、
大スクリーンでゴジラが暴れまわってくれれば、
それなりの満足感をもって映画館を後にしたものだが、
この作品だけは、見終わった直後、驚きと落胆と、
さらには怒りさえ覚えたものだ。
設定は、よく分からないが、他の作品とのつながりはない。
むろん最初のゴジラはあったことになってると思うが、
何故かゴジラは海底軍艦「轟天号」によって南極の氷の下に閉じ込められている。
アンギラスやマンダなど過去の東宝怪獣が出現するが、
人々はその怪獣の名前を知っているのだが、
たとえばアンギラスの登場した「ゴジラの逆襲」などについては
語られてない。
ところでこの轟天号を指揮するのは、
この間まで総理大臣をやっていた五十嵐首相こと中尾彬氏だし、
その横の副官は、五十嵐首相とともに機龍を指揮した土橋防衛庁長官ではないか。
物語は西暦20XX年。
国際連合は民族と国家の枠を超えて新たな戦闘組織・地球防衛軍を結成すると同時に、
一般の人類より優れた特殊な身体能力を持つ新人類ミュータント兵士たちによる
特殊部隊「M機関」を組織し、新たな対怪獣戦力として育成を図った。
このM機関がヤバイ。
相手は怪獣だというのに1対1の素手での格闘技の訓練ばっかりしてる。
主人公は、このヒト。
ジャニーズのアイドルグループ「TOKIO」のヒトらしい。
髪型が、ヘンだ。
そもそも「兵隊」なのに地上戦でもこの部隊はノーヘルなのだが、
主人公の髪型のせいでヘルメット被らない設定にしたのでは。
地上部隊でヘルメットをかぶらない軍隊は見たことがない。
そして、ライバル役がファイト一発のケインコスギ。
脳味噌まで筋肉でできてるような人だが、
この映画でもそんなキャラ。
そして流ちょうな日本語を話すこのオッサンが、
新・轟天号の艦長、ゴードン大佐。
この人は俳優ではなくプロレスラーだそうで、
この知性の感じられない筋肉番付的な人たちを中心にストーリーが展開される。
この時点で、もう、勘弁してほしいという感じ。
そして、怪獣映画で重要なのはなんといっても科学者役。
今回、女性科学者を演じるのは菊川怜さん。
彼女らが発見された怪獣のミイラ(?)を分析すると、
機械と生物の融合体であることと、
1万2000年前に存在していた怪獣だということだった。
地球ではそんな昔に機械はなかったため、地球外から来たことが推察できた。
そして、ミュータントに存在しているのと同じ塩基が、
未知の怪獣からも検出されていた。
TOKIOの髪の毛、立ちまくってるな。
東宝怪獣映画史上、東大卒の博士役は1954年の平田昭彦以来。
1967年「キングコングの逆襲」でドクター・フーを演じた天本英世氏は東大中退だった。
たしかに東大卒の菊川怜さんではあるが、
今回の彼女の役割は科学者というより
お色気サービスキャラのようで。
このパソコン作業中の脚を組む演出とか。
こりゃあ、完全に監督の趣味だな。
女性科学者は、この前の星由里子さんもイマイチだったので、
難しい役どころだと思いますが、
シンゴジラのこのヒトは最高でしたね。
それ一つとってもシンゴジラは別格だと思います。
さてこのFINAL WARSで同じようにお色気キャラなのが、
この女性科学者、菊川さんのお姉さん役で
日東テレビのキャスターである水野真紀さん。
なぜこのアングルで脚を組む。
このシーンでゴードン大佐が誤解するのもワカル。
さて今回の敵はX星人。
地球上の、あるいは宇宙から連れてきた怪獣を操って、
地球人を家畜化しようと目論む。
伊武雅刀氏、何をやらせても上手い。
まずは日本人初の国連事務総長である醍醐の乗った専用機がおそわれ
それを契機として世界中に大量の怪獣が同時に出現した。
ニューヨークに現れるラドンにやられちゃうのが、
こいつら。
ちょうどトイレで用を足す温水洋一さん的な役回りなのだが、
なんで吹き替えで下手な関西弁しゃべらすんやねん。
ここは字幕の方がエエやろ。
このラドンもなんかイマイチ。
ラドンはこんなに羽ばたかないのだ。
上海にはアンギラス。
アンギラス、好きなんだけど、ついにチンピラ役しかやらせてもらえんかったのう。
しかもルーツは鎧竜アンキロサウルスだったのに、
ここではアルマジロの扱い。
そして、カマキラス、クモンガの昆虫系から、
果ては出ないでほしかったキング・シーサーまで。
キング・シーサー出すなら、ゴロザウルスとかチタノザウルスとか、
もっと他にあったでしょう。
エビラは好きなので、久々に出てちょっとうれしかったけど。
全世界的に出現した怪獣に対し、
苦戦する地球防衛軍の前で突如怪獣が消滅し、
巨大なUFOが東京上空に出現する。
中からは醍醐が姿を現し、X星人と名乗る宇宙人に救出されたと話した。
X星人は地球に妖星ゴラスが迫っていると危機を呼びかけ、
友好の証として怪獣を消滅させたのだという。
これにより、世界はX星人との友好ムード一色となる。
この展開はアメリカのTVドラマ「V(ビジター)」と同じですね。
それにしても「轟天号」からさらには「妖星ゴラス」までぶち込んでくるとは。
ところがこの宝田国連事務総長がX星人であることが、
水野真紀さんによって暴かれる。
地球を乗っ取るという大仕事をするわりに、
イヌのリサーチが甘すぎた。
あー、ばれちまった。
そしていきなり撃たれて正体を現す宝田X。
さらに伊武雅刀統制官が、いきなり部下に撃たれちゃう。
この展開も謎だ。
伊武雅刀を撃ち殺したこのガリレオの刑事役の北村一輝が
新たな統制官になって、地球を乗っ取ろうとする展開。
ストーリは混迷を極めてゆく。
前々回、女性首相にまで上り詰めた水野久美さんは、
1965年の「怪獣大戦争」以来、約40年ぶりに
再びX星人が成りすますナミカワ女史になってしまった。
この高速道路でノーヘルでのバイクのバトルシーン。
この映画で、最も無意味なシーンだ。
ここは全部カットでいいんじゃないの。
ケツをまくったX星人はミイラからガイガンを復活させ、
地球の破壊を始める。
常に宇宙人の手先のガイガン。
そこで地球防衛軍がとった作戦とは、
新・轟天号で南極に封じ込めたゴジラを目覚めさせ、
ガイガンと戦わせている間にX星人を倒し、
再びゴジラを南極に封じ込めるといプラン。
めちゃくちゃやな。
地球防衛軍、M機関の仮想敵はゴジラではなかったのか。
そのあとどうやってゴジラを止める。
しかも、この4人で決めちゃうの?
菊川怜さんは地球防衛軍ではないのに。
さらに南極基地でゴジラを監視してるのがこの2人。
平時には閑職だろうから地球防衛軍の窓際族といってもいいが、
こんなプロレスラー風のチンピラ2人でいいのか。
地球防衛軍入隊には体力テストだけで良いらしい。
そしてゴジラが復活。
ガイガンもわざわざゴジラと戦いに来なくていいのに。
南極までやって来たのでやられてしまう。
クサリガマは忍者漫画では必ず敵役の武器だった。
そしてガイガンを倒したゴジラは、
新・轟天号を追ってUFOのところまで行くのだが、
途中シドニーでこいつと戦う。
これは例の1998年のローランド・エメリッヒ監督のいわゆる「ハリウッド版ゴジラ」で、
本作での名前は「ジラ」。
「GODZILLA」から「GOD(神)」をとって「ZILLA」だという。
あまりにヒドイネーミングだ。
この「ジラ」は、ゴジラにほぼ秒殺される。
製作スタッフがハリウッド版ゴジラに、少なからぬわだかまりを持っていて、
本家はこんなにつええんだぜ、というとこを誇示したかったのであろう。
2001年公開の「ゴジラモスラキングギドラ大怪獣総攻撃」でも
宇崎竜童が「20世紀終盤にゴジラに似た生物が、
アメリカ合衆国を襲ったという記録がある」
なんてセリフを言っていて、
今回のX星人統制官の「マグロ食ってるような奴はやっぱダメだ。」
というセリフもその流れで、
オレたちはあのゴジラを認めていねーぜという姿勢の表れであろう。
(注;エメリッヒ版のゴジラはマグロが主食)
そしてゴジラは新・轟天号を追って宇宙船に向かうが、
行きがけの駄賃にクモンガ、カマキラスをあっさり始末。
クモンガはハンマー投げ。
カマキラスは串刺し。
そんなうちに、出てほしくなかった怪獣ナンバーワン、
ミニラが登場してしまう。
まさにゴジラシリーズの黒歴史。
こいつが出たおかげでゴジラシリーズはダメになった。
しかし初登場の1967年以来、37年も経ってるのに、
こいつはまだミニラなのか。
当時ミニラを演じたのはたしか「小人のマーちゃん」。
タイトルロールでの役者名が衝撃的でした。
そしてゴジラの方は、ラドン、アンギラス、キングシーサーと対決。
ゴジラの撃ったアンギラスボールをキングシーサーが
ジャンピングボレーキックをしてラドンに命中、
という泣きたくなるほどの迷シーンが展開する。
手塚治虫の漫画のように積み上げられたラドン、アンギラス、キングシーサー。
ゴジラファンをバカにしてるとしか思えない。
そして、東京に着いたゴジラに、
X星人はモンスターXを差し向ける。
怪獣のデザインが昭和から一気にミレニアムに。
苦戦するゴジラにモスラが助太刀に来るが、
X星人はこれにガイガンを戦わせる。
これは新しいガイガンなのか、
それともゴジラにやられたガイガンを修理改良したものなのか。
だとすればいつの間に南極から運んできたのか。
ともかくX星人はこんだけいろいろ怪獣のコマを持ってるのなら、
一頭一頭小出しにしないで、まとめてゴジラに向かわせれば、
勝てるかもしれないのに。
頭悪すぎ。
ともかくモスラはガイガンと刺し違えてこれを倒す。
そしてモンスターXはカイザー・ギドラに。
カイザーはドイツ語で皇帝だから、英語名ならエンペラー・ギドラ。
キング・ペンギンと皇帝ペンギンはどっちが強いんだっけ。
この戦いの裏側で宇宙船内では、
また「素手での格闘」が行われる。
怪獣の戦いはあっという間に終わるのに、
格闘シーンの方がはるかに時間が長い。
途中再登場のエビラとともに35年ぶりにヘドラも出るが、
登場シーンは1分もなく文字通り秒殺。
格闘シーンよりもっと怪獣見せてほしい。
人間の格闘シーンもヒドイ。
相手が刀を捨てたら、自分も武器を捨てて素手で戦うX星人って、
いったいどんなつもりなんだ。
しかも結果、やられちゃうし。
そして、カイザーギドラにエネルギーを吸い取られるゴジラに
「気」を送るTOKIO。
格闘系の人は「気」とか「気合」とか好きだからなあ。
そんなバカな話はないが、
これでゴジラはファイト一発になり、
カイザーギドラの首をぶっちぎって、これを倒すのだった。
そして、さらに新・轟天号を撃墜。
最初からゴジラを始末するプランのなかったこいつらは、
拳銃や日本刀でゴジラと戦おうとするのだが、
X星人以上のバカとしか言いようがない。
そこを救ったのが、泉谷しげるである。
本人の意図はワカラナイが、
結果的にこのヒトがミニラをここに連れてきたので、
ゴジラは破壊をやめたわけだ。
最終的に地球を救ったのは泉谷しげるさんかもしれない。
しかし、20XX年に、こんなカッコした猟師が富士山麓にいるだろうか。
これでよかったのか、ゴジラ映画50周年の集大成、
これのどこが最高峰にして最終作、といえるのか。
当初シリーズ総計1億人の観客動員を目指す、
などといっていた本作は
結果的に全28作品中歴代下から3番目の100万人の観客動員にとどまった。
20億円の巨費を投じて、12億5千万円しか興行収入がなかったそうだ。
このあと、「シン・ゴジラ」ができてホントに良かった。
今見てもこの映画の罪は重い。
まあ、せいぜい30点といったところです。
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