ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2018.01.09

ドイツの中耳炎

 

小倉先生、はじめましてこんにちは。
人様のブログにコメントするのが初めてで質問をここにして良かったのかどうかも分からず、何か失礼がありましたら大変申し訳ありません。
二歳半になる息子の初めて中耳炎について質問があります。
当方ドイツに住んでおり、これからどうしたらいいのか途方に暮れておりますのでどうかご助言よろしくお願いいたします。

2017年12月29日夜に39度台の発熱、耳が痛いというので救急病院の小児科医に診てもらいましたが、呼吸・耳共に異常なし、ウイルス性の風邪と言われアセトアミノフェンの座薬で熱を下げるように言われ、31日になっても熱が下がらないようならまた来るようにと言われました。

30日、耳が痛いという息子の度々40度まで上がる熱を座薬で下げていました。

31日、夜中の3時に熱が41度になり耳の痛さも酷くなり、救急病院へ。内科医に耳は大丈夫と言われ、イブプロフェンの座薬に切り替わりました。
31日、夕方6時、座薬を使っても3時間ほどしか熱が下がらず、常に耳を痛がるので小児科医の常勤している大学病院へ。やはりここでも耳は大丈夫と言われ、アセトアミノフェンとイブプロフェンの座薬を4時間おきに使うように言われました。

2018年1月1日、まだ耳が痛いと言っていましたが、一回の座薬が6時間ほどもつようになりました。

2日、熱が39度台に下がり、かかりつけの小児科へ。中耳炎と診断、アモキシシリン250mg/5ml×3(一日)の薬が出ました。

3日、熱は38度台になり耳から膿が出始めました。

4日、熱が38度台、膿が溢れるのでもう一度かかりつけの小児科へ。アモキシシリン250mg+クラブラン酸62.5mg/5mlを4ml×3(一日)に変更されました。

5日、熱が下がって平熱に。6日、7日とこの薬を服用中、膿も減りました。
このまま熱が再度上がらなければ9日火曜日の診察でいいと言われています。

小倉先生への質問はこの治療の流れは普通なのかどうか、また中耳炎を繰り返さないためには次の小児科でどうしてもらうのがいいのかということです。
私は前もってドイツ語で文章を考えなければ会話もできませんので、今の状況から考えられる私がこれから小児科でやるべき事を教えていただけますでしょうか。

今回私も息子と同じ風邪で初めての中耳炎になり、耳鼻科にかかりました。
ですので小児科医に診断書をもらい、私と同じ耳鼻科で診てもらう方がいいのかどうか・・・初めての中耳炎で何をどうしたらいいのかわからず、でも自分も中耳炎になってみてこんなに痛い思いを何度も繰り返させたくないと思い質問させていただきました。
乱文長文ですみません。

お忙しいところ、お手数をおかけして申し訳ありませんが、どうかご助言よろしくお願いいたします。

 

 

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 ドイツからですか。(@_@)

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論から言うと2歳半の初回の中耳炎で、

現在の治療でいいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ポイントは、年末年始であったことですが、

ドイツの医療事情及び、耐性菌の発生頻度をワタシが良く知らないので、

その辺の明確なご返答はできないのですが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まずは、中耳炎発症から診断までの流れです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おそらく中耳炎の発症は耳が痛いといった12月29日の夜でしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日本でも救急病院の小児科医では(場合によっては耳鼻科医であっても)

幼小児の鼓膜所見をとることは難しく、

中耳炎の診断が難しい場合が多いです。

大学病院はそもそも急性中耳炎をろくに診たことがないお医者さんが多いし、

31日の夜なんかに当番に当たってるセンセイはおそらく若手なのでは。(^^;

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少なくとも日本では救急病院では通常期待される治療は受けられません。

ドイツの事情は分かりませんが、やはり最低限の応急手当の域でしょう。

大みそか当直の小児科の先生も先輩に

「腸重積とかヤバイからゼッタイ見逃すな。中耳炎は死なないから大丈夫。」

などといわれてたかも。

(正しいアドバイスです。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただ、耳が痛い、熱がある、というのに中耳炎の確定診断に至らない医者が、

繰り返し受診しても一貫して抗生剤を出さないのはヨーロッパ的だといえますね。

ここ、なかなか、感心しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日本だと、

「良く見えないけど、多分、中耳炎だから抗生剤出しとくね。」

とか、ヘタすると鼓膜見えてないのに

「中耳炎なので抗生剤出します。」

なんていう医者がざらにいる。

急性中耳炎では、まず効果の考えられない

抗菌剤の点耳薬まで出しちゃうヒトもいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドイツのガイドライン日本よりはるかに厳しいと思うけれど、

日本でも初期の急性中耳炎の第一選択は

抗生剤を使わずにアセトアミノフェンの頓服、座薬ということになっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2日の小児科の先生が中耳炎の診断で使用したアモキシシリンも、

おそらく日本よりは耐性菌の比率がはるかに少ないでしょうから、

まちがいない選択です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おそらく中耳炎の起炎菌はドイツも日本と同じく、

肺炎球菌、インフルエンザ菌がビッグ2でしょうが、

クラブラン酸を加えたのは、長引く経過に

ペニシリン耐性のβ‐ラクタマーゼ産生型のインフルエンザ菌、

あるいは第3の起炎菌モラクセラを想定したもので、理にかなっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 年末年始で診断まで時間がかかりましたが、このままの流れで問題ありません。

今後中耳炎を繰り返さないためには、

まず、今回の中耳炎を最後までしっかり治すことです。

そして、風邪をひかせないこと。

言うは易く行うは難し、ですが、急性中耳炎が治ったあとしばらくは、

風邪から中耳炎を再発する場合が多いので用心です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドイツの冬、寒そうですね。

でも、ドイツでのホワイトクリスマス、なんてのにはちょっとあこがれちゃいます。

ちなみにワタシは医学部を出たのに、ドイツ語話せませんし、

読むのも辞書があっても困難です。

でも、多分、みんなそうです。(^^;

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お大事に。

 

 

 

 

 

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