ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2016.09.23

耳は口ほどにものをいう

 

 先日、九州へ引っ越すから紹介状を書いてほしいという患者さんがいて、

宛先を指定せず、向こうの先生にかかったら渡してくださいねと手紙を渡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 九州の耳鼻咽喉科のクリニックからのお返事が来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 丁寧なお返事であったが、最後に、

「小倉耳鼻科のブログを時々見てるのでビックリしました、」

とあって、こっちもビックリした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 見ず知らずの耳鼻科の先生がこのブログ読んでるんだなあ、と。

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、インターネットですから、

以前フランス在住の方から、

子供の中耳炎に対するご質問があったり、

ネットの医家向け掲示板でこのブログが引用されてたり、

よく考えれば、別に驚くにはあたらないけれども。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ワタシも、時々、開業医や勤務医の方の書いたブログなんかを見させていただくことがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 つい最近では、ある耳鼻科の先生のブログで耳垢の記事を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 子供の耳垢に耳垢水はまず使わない、などと書かれており

ごもっとも、と思ったりしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 耳垢水とは外耳道に直接たらして

固く充満した耳垢を溶かしてぐずぐずにして吸引除去する薬品である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 先月来院した1歳だったか2歳だったかのの男の子。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある耳鼻科で耳垢があるから

1週間連続で耳垢水をつけてから再び来るように言われたとのこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 暴れる子供に1週間も点耳薬をつけるのは不可能だ、と考えたお母さんが

当院受診。

 

 

 

 

 

 

 

 たしかに、耳垢充満であったが、顕微鏡下に除去し、あと、終了。

 

 

 

 

 

 

 

 ワタシも、まず、耳垢水は使わない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一つには、耳垢をとって知りたいことは急性中耳炎や滲出性中耳炎の有無なので、

治療や投薬の都合上すぐにわかった方がいいということ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 急性中耳炎で自壊していたような場合、

耳に何か液体を入れてしまうとその状態がきちんと診断できないこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 万一、鼓膜の穿孔や損傷があった時、液体を入れることで中耳にさらに感染を起こす可能性があること。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そもそも、子供では耳垢水を入れないと取れないようながっちり固まった耳垢はまずない、ということ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 たしかに子供の耳垢とるのは簡単ではないが、そこは耳鼻科医の腕の見せ所。

 

 

 

 

 

 

 

 

 顕微鏡下に異物鈎といわれるフックや

中耳手術用の極小鉗子と、手術用の吸引管を使えば

少なくとも鼓膜所見をとれるくらいにはほぼ完全に除去できる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もちろん、暴れる子供をがっちり固定するスタッフの腕力、

もとい、熟練の技は必須である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ともかく、どんな主訴でも大体10歳以下の子供は

毎回必ず鼓膜所見を見るようにしてるので、けっこう大変である。

普通は簡単な耳垢除去は点数にならないが、

鼓膜をみなければ診断にならないのでしょうがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 けっこう大きい子でも中耳炎があるのに何の訴えもなかったりするし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大人の場合は、数年から場合によっては数十年ため込んだ耳垢もあり

ごくまれに耳垢水を使う場合もある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただし、真珠腫を含む、慢性中耳炎、

ごくごく稀には中耳癌なんてものもあるから注意が必要ではあるけれども。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鼓膜所見からは大人子供を問わず、実にいろんな情報が得られる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 耳は口ほどにものをいう、場合もある。

 

 

 

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