ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2013.04.29

何故、中耳炎になりやすいのか?


はじめまして。息子が度々中耳炎になるので少しでも詳しく調べようと思っていたら、
先生のブログにたどりつきました。
薬のことなど、とても分かりやすく、母として、本当に勉強になります。
本題は、1才3ヶ月の息子が半年の間に5回も中耳炎を繰り返すのですが、
何故中耳炎になりやすいのでしょうか?
中耳炎にならないように予防する方法はないでしょうか?
毎回、中耳炎と診断されて、完治したので、通院しなくても良いですと言われるまで通っているのにまた、二週間くらいの間で通院しなくてはいけなくなるという繰り返しで、心配になります。
年子の姉は2才ですが、いまだに中耳炎になったことはないので、
姉のように少しでも強くなってくれればと願うばかりです。
先生のご意見、よろしくお願いします。



 さて、なぜ、中耳炎は繰り返すのか?という、素朴だが、大変難解な疑問です。
 中耳炎はなる子は何回でもなるが、
ならない子は全然ならない、
この辺が問題ですね。
 では、まず中耳炎のメカニズムを考えましょう。
 中耳炎は鼻の細菌が耳管という管を通って
中耳内に侵入、そこで繁殖することにより起きます。
 その細菌は中耳炎の時に感染したもので無く、
もともと患者さんが鼻の中に「飼っていた」ものが多い。
 中耳は無菌的な場所ですが、
鼻腔は必ず何らかの細菌が住んでいます。
 風邪の病原体はウイルスですが、
風邪のウイルスによって鼻の粘膜が障害を受けると、
鼻の中にもともと住んでいた菌が増殖を始め
いわゆる青っパナになります。
 そこで、普段鼻の中に「飼っている」菌が
肺炎球菌やインフルエンザ菌なのどの中耳炎をおこしやすい菌である場合、
中耳炎を起こすリスクが高いといえます。
 この菌は抗生剤で中耳からは消えても、
鼻腔からは消えないのでリスクは残ります。
 逆に、普段から抗生剤を頻繁に使っていると、
抗生剤の効きにくい、いわゆる「耐性菌」が鼻の中に
常在するようになるため、中耳炎が治りにくくなります。
 風邪の時に「中耳炎になると困るから」と抗生剤を用いるのは
かえって中耳炎を悪化させる要因です。
 抗生剤で中耳炎は「治療」できますが「予防」することはできません。
 また、中耳に菌が入りやすい、中耳に入った菌が排泄されにくい条件として、
鼻の慢性の炎症があります。
 副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎の存在は、
反復性中耳炎の最も重要な因子です。
 1歳、2歳ではまだ副鼻腔そのものができてないので
真の意味での副鼻腔炎はありませんが、
ハナが出なくてもセキやタンが続く場合は
鼻腔粘膜の繊毛運動が阻害されている場合が多く、
副鼻腔炎に準じた扱いが必要です。
 また、鼻が少しでも出ると中耳炎を繰り返していた子供が、
ある時を境に中耳炎を起こさなくなるという事もあります。
 中耳にはある程度「自浄作用」があって
多少のばい菌の侵入は洗い流して処理してくれます。
 例えば風邪の時鼻を強く噛みすぎて
耳がブチブチっとなった経験はありませんか。
 でも、たいがいはそのまま、何も起こらず治ります。
 ところが中耳炎のあとは、中耳の粘膜がまだむくんでいて
侵入した外敵を排除する働きがにぶっています。
 中耳炎は完全に治っても
しばらくは、またなりやすい状態が残る、という事です。
 だから、お母さん方には中耳炎治った直後は、
少々のハナ風邪でも受診してください、とお話しています。
 反復性中耳炎でチューブ留置の効果があるのは
チューブによって耳管機能が改善し、
中耳の粘膜が機能をを回復する時間が稼げるという事です。
 そこで一般的には反復性中耳炎の危険因子として
①1歳前での初回中耳炎
②集団保育
③母乳栄養が無いか不十分
④上に兄弟あり
⑤おしゃぶりを使っている
 などがあげられますが、
⑥両親にアレルギー性鼻炎の体質が強い
⑦風邪の時に抗生物質を多用していた
 なども考慮すべき因子でしょう。
 いずれにせよ、中耳炎はまず、「発見」してあげて、
キチンと「治癒」させることが重要です。
 何回なっても、そのつど最後まで治っていれば
難聴が残ることはありません。
 繰り返し申し上げますが母親は一番の「主治医」ですので。
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