小児急性中耳炎のガイドラインについて
実は急性中耳炎の治療について、
コメントを頂きましたが、非公開コメントなので、
お答えのみいたします。
ご質問は10か月のお子さんの中耳炎についてです。
中耳炎の治療方法、抗生剤の選択は、
ご質問のようにケースバイケースで、
お医者さんの考え方、知識、技量によっても違ってきますし、
ただ一つの正解があるわけではありません。
しかし、近年の小児急性中耳炎の難治化に伴い、
2009年に小児急性中耳炎治療のガイドラインが
日本耳科学会を中心とした耳鼻咽喉科専門医の委員会により策定されており、
基本的にこのガイドラインを参考にして治療するようになっています。
(でも、読んでない医者も多いかも。)
インターネットで
「小児急性中耳炎診療ガイドライン2009年版」
を検索すれば閲覧できますが、
素人のヒトがいきなり見ても難しいので、
要点をまとめますね。
まず、診断編として、小児急性中耳炎の重症度を
軽症、中等症、重症の3段階に分類します。
発熱、耳痛、啼泣・不機嫌などの自覚症状と、
鼓膜の発赤、膨隆、混濁、耳漏などの他覚所見等をスコア化して点数をつけます。
例えば、発熱なら37.5度未満は0点、
37.5~38.5度は1点、
38.5度以上は2点などという感じです。
診察所見で点数が高いのは鼓膜の発赤よりも膨隆です。
鼓膜発赤: 0(なし),2(ツチ骨柄あるいは鼓膜の一部の発赤),4(鼓膜全体の発赤)
に対し
鼓膜の膨隆: 0(なし),4(部分的な膨隆),8(鼓膜全体の膨隆)
と高得点です。
鼓膜が真っ赤っかでも、腫れが無ければ4点で、
全然赤くないけど全体に膨らんでれば倍の8点です。
それからこのガイドラインの素晴らしいところは、
24か月例未満(すなわち0歳、1歳)であれば、
それだけで3点加算があるというところ。
2歳未満の中耳炎がいかに手ごわいかを示しています。
これらにしたがって、治療法が選択されますが、
まず9点以下の軽症例は抗生物質無しからスタートです。
そのあと、重症度、経過によって抗生剤が入って来ますが、
ガイドラインでは概ね
①ペニシリン常用量
②ペニシリン倍量、メイアクト常用量、クラバモックス
③メイアクト高用量
④ペニシリン、ロセフィン点滴
の順に上がっていきます。
途中から、鼓膜切開をする、という選択肢が入って来ます。
ここには、オラペネム、オゼックスが入っていませんが、
オラペネムが2009年、オゼックスが2010年の発売ですので、
ガイドライン作成時には一般に出回っていませんでした。
現時点では④に当たるものと考えていいと思います。
ガイドラインは3~5年で改定となってますので、
そろそろ次の版が出ると思います。
ワタシは実際にはいちいち所見を厳密にスコア化はしてませんが、
ガイドラインに基づいて重症度を判定し、
治療の選択をするようにしています。
したがって、抗生剤もここに出ている、
ペニシリン(種類多いけど当院では飲みやすさを考慮して力価が倍で半量で済むワイドシリンを選択)
メイアクト、クラバモックスと
オラペネム、オゼックス以外の抗生剤を使う事は原則的にはありません。
もちろん、オラペネム、オゼックスは「奥の手」の薬ですから、
なるべく使わずに済むように心がけています。
また、ガイドラインでは中等症以上の例には途中で
「感受性を考慮し」
の文言が出てくるので、
基本的に2歳以下は初回に培養を取るようにしています。
ありふれた病気だがキチンと対応しないと、
泥沼にはまり込む事がある、
そんな病気が小児(特に乳幼児)急性中耳炎です。
ご質問の答えになってるかどうかわかりませんが、
ご参考になさってください。
↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。