ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2011.07.05

ヘルパンギーナ、始めました。

 暑くなると一般に耳鼻科の病気はよくなり、
副鼻腔炎の子も、中耳炎の子も
「はい、治ったので、もう来なくていいですよー。」
と、めでたく卒業、がここのところ多い。
 しかし、今日は、朝から発熱の子ばっかし。
 それも39度、40度といった高熱だ。
 で、のどを見ると、扁桃腺が赤く腫れ、
その周囲にポチポチと口内炎がゴマをふったよう。
 あー、ヘルパンギーナですねー。
 今年もこの季節が来たか・・・・。
 ヘルパンギーナとは夏風邪の一種で
コクサッキーウイルスによる感染症だ。
 突然の高熱とのどの痛みが主症状だが、
特徴的なのどの所見があれば診断は容易である。
 実はこの間までは「溶連菌感染症」が多く、
それとの鑑別がビミョーな症例も多く、
迅速診断キットを要する子が結構多かった。
 それが、今日は典型的な所見ばかりで、
お口、あーんしただけで、はい、ヘルパンギーナ、が連発。
 で、ヘルパンギーナは効く薬がない。
 せいぜい痛みの強い子は消炎剤、鎮痛剤を使うくらいで、
もちろん抗生物質は無効、不要である。
 溶連菌は抗生剤10~14日必要なので、
その辺、症状、所見が似てても治療は行って帰るほど違うわけだ。
(たまにヘルパンギーナですと言って抗生剤出すトンデモ医者がいるけど。)
 ヘルパンギーナは飛沫や糞便からうつり、
潜伏期間は数日。
 コクサッキーウイルスは多くの型があり、
手足口病を起こすのもこいつらである。
 そのためいったん治っても別のヘルパンギーナにまた罹る、ってこともあるわけだ。
 幸いなことに高熱も通常2日以内に自然に下がっちゃうので
重症化することはまずない。
 3日過ぎても高熱が続く場合や、いったん下がった熱が上がる場合は
別の病気や合併症を考えます。
 アデノウイルスは「プール熱」の原因として問題ですが、
眼症状がない場合ヘルパンギーナや溶連菌と間違われることがあります。
 典型的なものは咽頭の所見からこの3者は鑑別できますが、
疑わしいものはアデノウイルスの迅速検査をします。
 まあ、アデノにしても抗生剤は無効なので
治療はヘルパンギーナと変わんないんですけど。
 40度の熱があっても、痛みや全身症状が軽ければ
薬なし、ってわけで、
お母さん方に、薬なしですっていうと、
えー、大丈夫ですか、などとおっしゃる方もいるんだけど、
いらない薬飲む方がよっぽど体に悪いんだから。 
 しかし、ヘルパンギーナ、流行りだすと梅雨明けも近いなあ。
 「冷やし中華始めました」や「土用丑の日のウナギ屋のポスター」のように
子供の口の中に夏の訪れを感じる耳鼻科医なのであった。
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