ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2011.04.08

スプデルの呪縛

 先日、来院されたご年配の女性の患者さん、
長年、近所の内科に血圧や不眠症とかでかかっており、
花粉症の時期にはそこで花粉症の薬ももらっていた。
 しかし、その先生が、医院を閉めちゃったので、
内科は他でかかったが、耳のことで耳鼻科に来たので
今シーズンの薬をもらいたいということで、
2月に薬を出している。
 ご本人が言うには、自分は花粉症の薬を飲むと
必ず口が渇くので、「スプデル」が一番いい、とのこと。
 確かに旧世代の抗ヒスタミン薬は抗コリン作用が強く、
眠気や口の渇きが強烈である。
 えーっと、スプデル、って何かなあ、と調べると
「ザジテン」のジェネリックであった。
 ザジテンは第2世代の抗ヒスタミン薬の中でも、最も初期の薬なので、
タベジールやポララミンなど第1世代に比べれば
確かに、マシかも知れないが、
けっこう眠気や口渇が出る薬だ。
 オレ自身、この薬飲んで車運転中、危うくトラックに追突しそうになったことがある。
 でも、まあ、本人がこれがいいんであれば、
と、「ザジテン」を処方。
 もちろん、同じ薬であることを説明した。
 
 数週間して、ともかく鼻が止まりません、
って事で来院。
 診てみると、花粉症がひどく、膿性の鼻汁も大量だ。
 今年の花粉が大量であることを説明し、
薬をアレロックとオノンに変更。
 膿性鼻汁がひどいため抗生剤と、ムコダインも加えた。
 そして、再診時。
 訊けば、こないだ出した薬は全部やめて、
弟さんが前もらったスプデルを時々飲んでるという。
 しかも(当然)鼻の具合はワルイ。
 下痢をしたため、薬の説明書に下痢と書いてある薬、
抗生剤、オノン、ムコダインは自己判断ですべて中止し、
同じく「口の渇き」の記載があるアレロックもやめちゃったそうだ。
 うーん、困った、どっから説明しようか・・・。
 まず、下痢に関しては、抗生剤が原因であることはほぼ確実、
整腸剤も出てたのだが、ムコダイン、オノンの関与は可能性としてかなり低い、
ということを説明。
(オノンは時々、おなかのことを訴える方がいるけど。)
 それで、アレロックはヒトによっては口渇あるけど、
ザジテンよりは少ないはず、
ということを説明。
 しかし、患者さんはこんどは、ザジテンの時も口渇があった、
スプデルはなかった、と主張。
 さあ、困った。
 いや、前も言ったけど、ザジテンとスプデルは同じ薬なんですよ。
 すると、実は以前、他のお医者さんにかかったときも、
スプデルと同じだ、といわれて別の名前の薬が出たが、
それでも口が渇いて困った、という。
 んー、なるほど。
 おそらくこのおばあちゃんは、以前第1世代しか無いころに、
その強烈な口渇にずっと悩み苦しんでいたんだろう。
 そして、スプデルが処方され、その違いを実感し、
その印象が強烈に刻まれたんでしょうな。
 いわば、信仰めいた「暗示」にかかちゃってるんで、
説明してわかってもらうのに、相当の時間を費やした。
 そういや「スプデル」って名前、
なんかドラクエの呪文かなんかみたいな響きがあるかも。
 しかし、あの説明書きも、ホント良し悪しだなあ。
 内科からはそれこそ体が悪くなるくらい、コレデモカって量の薬が
ずーっと出てるんですけどねえ・・・・。
 人気ブログランキングへ

↑ランキングに参加しています。一日一回応援のクリックをよろしくお願いいたします。
拍手ボタンもよろしくねー。
 

7件のコメント
医療系をまとめました。
2011年4月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  
最近の投稿 最近のコメントカテゴリー アーカイブ