ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2010.11.02

亀井教授の言葉


 先日は、恩師である群馬大学耳鼻咽喉科の亀井元教授の葬儀に行ってきました。
 受付時間の短縮などで患者様には大変ご迷惑をおかけしました。
 亀井先生が教授になられたのは昭和59年。
 私の入局が昭和60年なので、まさに教授就任後初の入局者、
妻の入局が昭和61年ですから、
まあ2人とも「亀井チルドレン」なんて言い方もあるかもしれません。
 亀井先生のことを一言で評すと「ジェントルマン」だったと思います。
 非常に温厚な人柄で、我々医局員に対しても、
丁寧な言葉遣いで、決して「呼び捨て」などにはしませんでした。
「小倉さん、これ、どう思いますか。」
「小倉先生、この文献まとめておいてください。」
 などと言った物言いで、
教室員を呼び捨てにして怒鳴りつける教授も中にはいますが、
全くそういうことはありませんでした。
 一緒に手術に入ると、手術室の看護婦さんにも
「ぺアンを取っていただけますか。」
などと敬語を使い、器械を受け取ると
「サンキュー」
と答えるのが常でした。
 妻が耳鼻科に入ったのも、
入局説明会で、教室員と教授がフランクに話してるのを見て決めた、
と言ってました。
 妻と知り合ったのは彼女の入局後ですから、
間接的に、亀井先生のおかげで結婚できた、といえなくもありません。
 亀井先生の言葉の中に常に私が大事にしてる言葉があります。
 まだ私が独身時代の若いころ、ある患者さんの受け持ちになりました。
 その方は、まだ30代半ばの女性の方だったのですが、
舌がんだったのです。
 治療方針を決めねばなりません。
 手術、放射線、抗がん剤、しかもそれらも様々な術式、薬の種類があります。
 何が最適なのか。
 その時、教授回診で先生が私に言った言葉は次のようなものでした。
「小倉さん、この患者さんをあなたのお姉さんだと思って治療してください。」
 そうです。
 この言葉で治療方針に対する迷いがなくなりました。
 それ以後、現在でも患者さんを診るたびに、
その人が
自分の親だったら、恋人、妻だったら、我が子だったら、はたまた自分だったら、
どんな治療を行うか。
 そう考えると答えはおのずと出ます。
 今でも、毎日、事あるごとにこの言葉に帰り、
また、患者さんに手術など勧める場合でも
「いや、もしうちの子だったら、これは切開しますよ。」
などと説明します。
 まあ、私が医者やっていく上での「座右の銘」っていうとカッコよすぎですが、
指針、道しるべみたいなものになってますね。
 
 亀井先生にとっては
私は全く「不肖の弟子」であったわけで、
その点ではまことにお恥ずかしいかぎりですが、
こうして医者をやっていく上で大変お世話になったと思っています。
 先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
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