ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2010.10.24

耳管開放症の中島美嘉さん

 中島美嘉さん、耳管開放症で公演中止。
 一昨日のスポーツ新聞の見出しに載ってましたなあ。
 おおお、と思ったのですが。
 先日、薬剤師会で講演した時に、
めまい、耳鳴りの話だったので、
「突発性難聴だった浜崎あゆみさん」
「メニエール病だった相田翔子さん」
「真珠腫性中耳炎だったコロッケさん」
の話題を交えて話したのだったが、
中島さん、耳管開放症だったのかあ。
 といっても、実はワタシ、中島美嘉さんをよく知らず、
その新聞の記事を読んで、ははあ、あの人かな、と思ったくらいで、
名前は知ってるけど、すぐ曲は浮かばない。
いや、聴けば絶対知ってると思いますけど。
 ところで、気になったのは、そのスポーツ新聞に
「耳管開放症とは」
と、解説を書いていたどっかの耳鼻科の先生の話。
 話を聞いた記者がダメだったかのかもしらんが、
この先生、よく耳管開放症のことわかってないのでは、
というような内容だった。
 実はこの「耳管開放症」なかなか難しい。
 そもそも、きちんとした系統疾患として認識されてきたのは、
ごく最近のことなのだ。
 それまでは「耳管狭窄症」は多いが「耳管開放症」はまれ、
などとかたづけられ、あまり重視されなかった。
 最近の研究で実はかなり多いこと、そしていろいろな病態があることがわかって来た。
 耳管というのは中耳と鼻腔をつないでいる管で、
中耳と外気の気圧の調節をしてる。
 山登って、耳がつーんとなった時、アクビすると治るアレだ。
 この管、普段は閉じているのだが、アクビやモノを飲んだり、
口をあけたりする時に随時開いてこまめに圧力調節をしている。
 これが開きっぱなしになっちゃうのが耳管開放症で、
鼻腔と中耳が直結しちゃうので、
自分の声や鼻の呼吸音がびんびん耳に反響しちゃう。
(自分の声が響いて聞こえることを「自声強聴」といいます。
よく「強」を「強調」と間違えることがあるので学生さんは要注意)
 程度が強いと難聴や、場合によってはめまいも起すというものだ。
 そして、耳管開放症のもう一つのタイプとして最近提唱される
「鼻すすり型耳管開放症」というのは、
開放している耳管が、鼻すすりにてロックしてしまい、
一見耳管狭窄症のように見えてしまうため、
誤診されてることが多いのだ。
 私も2,3年前学会に行ってこの話を聞いて、
ああ、あの患者さんは狭窄症じゃなくて開放症だったんだ、
とあとから思い出す例がいくつかあります。
申し訳ない。
その頃は、この病態がわかってなかったから仕方ないといえば仕方ないんだけど。
(そのスポーツ新聞の取材した先生は、まだよく知らないかも?)
 じゃあ、治療はどうするんだ、という話は次回。
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