ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2010.08.23

コメント欄のご質問にお答えします。

 ブログのコメントコーナーにこんなコメントをいただきました。
お忙しい中ありがとうございます
あの…前にも聞いてもらったんだけど…
いま、あたしは20代で…今年の4月から看護学校へ入学したため地元を離れて暮らしています
滲出性中耳炎でおととしぐらいから、月に2~3回ぐらい耳鼻科に通ってました
左耳は全く聞こえないわけじゃないけど…あまり聞こえません…
鼻から空気を入れる治療?を先生からすすめられたんだけど…
スッゴく痛くて怖くて、イヤで…
鼓膜切開をしてもらって耳にチューブを入れてもらってました
抜けたりしたんで耳鼻科に通い出して3年ぐらいの間に3回チューブを入れてもらってました
その時はよく聞こえてたんだけど…学校入学する前の3月頃にチューブが外れて…そのまま地元を離れてしまい…7月まで耳鼻科には通っていませんでした…
夏休みに入り…今は地元に帰ってるので耳鼻科に行ってます
先生にまたチューブを入れてほしいと頼んだんだけど…
今は耳には水がたまってないって言われて…鼓膜の傾きがキツイから耳が聞こえにくくなっていると言われて…
痛いけど我慢して…週に2回通い…鼻から空気を通してもらって治療をしてもらっています…
もうすぐ夏休みが終わり…地元を離れるんですけど…場所が変わってもやっぱり定期的に通院したほうが良いですよね?
1番悩んでるのが…交通の便が悪くて病院(クリニック)が遠いことなんです…
学校がある場所が田舎で本当に交通の便が悪く…耳鼻科に通うのが大変なんです…
痛いうえに通院が大変になってくると…耳鼻科に通うのがが苦痛で仕方がないんです…
右耳は普通に聞こえるから…生活には支障はないんだけど…
正直いつまで通院すれば良いのかがわからなくて…
鼻から空気を通してもらって治療をしてても…その時は聞こえるけどまた聞こえにくくなって…
完治するのは難しいんですよね?
やっぱり…定期的これからもずっと通う必要があるんですか?
学校の近くに大きな病院があり…
学校が休みの土曜日も診察しているので…
その病院なら近いから通院はしやすいから…受診してみようか考えてるんだけど…
大きな病院だから…受診をためらってます…
滲出性中耳炎で…大きな病院を受診しても良いんですか?
まだ3年学校へ行くんで…学校がある場所でも耳鼻科に通院して…ちゃんと治したいとは思ってるけれども…
完治するのかしないのか先が見えない…
定期的に通院するとなったら、病院(クリニック)が遠いから月数回であってもしんどい……
それなら近くてすぐ通える大きな病院に行きたいけど…大きな病院だから迷ってます…
自分で言ってて…本当に勝手なわがままな患者だなあって思うけれども…
悩んでます…

 と、こんな内容です。
 「・・・・・」が多いところが、相当悩まれてる感じです。
 実際に診察してないので、正確なお答えはできませんが、
少し検討してみましょう。
 「手掛かり」がいくつかあります。
①3回くらいチューブを入れたが外れてしまった。
②通気した時は良いが、また戻ってしまう。
③今、水はたまっていないが、鼓膜の傾きがキツイ、といわれている。
④今、20代である。
 知りたいことが4つあります。
①小さい頃、中耳炎を繰り返したことは無いですか。
②小さい頃、副鼻腔炎、蓄膿症などと言われたことは無いですか。
③アレルギー性鼻炎、花粉症などはありませんか。
④自分の声が響いたり、鼻をすする癖はありませんか。
 お話を伺うと、なんとなく鼓膜の所見が浮かんできます。
 おそらく、いわゆる「アテレクティック・イヤー」気味の耳なんでしょうね。
 アテレクティック・イヤーとは何か。
 鼓膜は「太鼓」の皮みたいにピンと張った状態が正常です。
 それが、長く滲出性中耳炎が放置され、
中耳に水がたまった状態が続くと、
鼓膜の皮が薄くなってぺナぺナになってしまいます。
 「鼓膜の傾きがキツイ」というのは、
おそらく鼓膜が、向こう側に接着するほど「内陥」しているということだと思います。
(私はこれをいつも「ボディコンの鼓膜」と呼んでましたが「ボディコン」が死語になってしまった。)
 イメージ的にはやけどのあとの水疱を針でついて潰した状態とか。
 汗をかいて、シャツごしに「胸ポチ」がわかっちゃう状態とか。
(どうしてもエロ路線に行ってしまう・・・・。)
 ともかく鼓膜がペチャンコで向こう側にはりついちゃってる状態です。
 耳管といわれる耳と鼻をつなぐ管の機能異常からおこり、
耳管狭窄症でも鼻すすりタイプの耳管開放症でもなります。
 鼓膜はペチャンコなので聞こえが悪く、
通気にて一時的に良くなっても、
またすーっとしぼんでしまいます。
 耳鼻科で通気直後に患者さんにハナすすりをしてもらい、
その様子をファイバーで観察すると、わかります。
 普通はチューブが自然に外れてしまうことは少ないので、
この方のようにすぐ脱落しちゃうのは、
鼓膜に「コシが無い」ことに起因する場合が多いです。
 さて、では治療方針です。
 一般に「耳管機能」は幼小児では悪く、
成長とともに成熟してきます。
 20代、ということであれば、今後加齢による耳管機能の改善は望めません。
 耳管機能は、鼻の病気によって悪化しますから、
アレルギー性鼻炎などの鼻の病気の治療によって、
鼓膜の状態の改善が期待できます。
 アレルギー性鼻炎などがあれば、自覚的な鼻詰まりが無くても、
そちらの治療をしてみるべきです。
  しかし、鼻も悪くない、アレルギー性鼻炎もない、といった時には
事態は深刻です。
 まずその場合、耳管開放症の有無が最も問題になります。
 先ほどの④の質問はそこなのですが。
 それがあれば、そちらの治療ですが、
一応「自分の声が響く」という記載がないので、
耳管狭窄症のみだと考えられます。
 耳管開放症の治療は、またまた難しいので、
別の機会に説明します。
 さて、鼓膜が変化してしまった以上、
通気のみでは治りません。
(もちろん、程度によっては徐々に治るものもないわけではないですが・・・)
 チューブ留置は検討されるべき治療です。
 鼓膜がある程度チューブに耐えられれば、
水がたまっていなくともチューブ留置をすべきです。
 ただし、鼓膜が極端に薄いと脱落、そしてその後の穿孔を残す恐れがあります。
 鼓膜に極端に薄い部分がある時は、比較的厚い部分との境に切開を置き、
厚い部分に「あごを乗せるように」チューブを入れると安定します。
 その辺は、実際に診ないと分かりません。
 では、通気は意味がないのかというと、そうでもありません。
 鼓膜の鼓室への癒着を防ぎ、慢性中耳炎、癒着性中耳炎、真珠腫性中耳炎への移行を
阻止するため、定期的な通気は必要です。
 しかし、週2回は必要ないでしょう。
 具体的な頻度は難しいですが、
乾いている耳ならば大人であれば1~2カ月に一回くらいでいいのでは。
 ただしこれは「完治」を目指すものではなく「増悪、進行を防ぐ」行為です。
 大きな病院は、いろいろですね。
 大学病院とかでは、相手にされないでしょうからやめといた方がいいですね。
そもそも大学病院の先生は「滲出性中耳炎」はあまり詳しくありませんし。
 
 常勤の先生が毎日外来やってる病院ならまあ、大丈夫でしょうが
曜日変わりでパートの先生が来てる病院は
こういう「慢性の経過」をとる病気は、やめといた方がいいかも。
 なかなか、これ以上は実際に診てないのでわかりません。
 セカンドオピニオンとして、
いくつかの医療機関で意見を聞いてみるのもいいかもしれませんね。
 その際、診断、ではなく、
「長期的な今後の見通し、方針」をしっかり聞いてください。
 通気して、また来週来てね、では意味無いですから。
 では、お大事に。
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