ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2009.11.14

テオドール、どうでしょう?


 最近は院外処方が一般的になって、
患者さんが飲んでる薬が、本人にも第3者にもわかるようになりました。
 これは大変良いことで、複数の医療機関にかかる場合とか、
前医での治療歴がある場合など、必要不可欠な情報が得られます。
 また、専門家が見ると
「おお、この先生はできる!」
とか
「こんなのダメに決まってるじゃん。アホか。」
とか(実はこっちが意外と多い)
「へえ、この病気は今こんな治療するんだ。」
などと参考になることが多い。
 その中で、最近これってどうなの?と思ってることがある。
 それは、喘息(特に小児)の治療で使われる「テオドール」という薬だ。
 私は、耳鼻咽喉科専門医なので、もちろん喘息は専門ではない。
 しかし、耳鼻科の中での専門はアレルギーだし、
喘息を合併した子の、診察も治療もかなりしたことがある。
 そういった、研究会で話を聞いたり文献にも目を通す。
 で、最近の、特にこの5、6年で喘息治療の方針が大きく変わってきたのだ。
 昨今はいろんな疾患に「ガイドライン」というものができて
「この病気は、段階に応じてこんな治療法を選択していきましょう」
なんていうマニュアルみたいなもんがある。
 これは主に一般医を対象にした「指南書」で
耳鼻科領域の「アレルギー性鼻炎」「花粉症」「中耳炎」などのガイドラインなんてのは、
私なんかにとっては
「何をいまさら」
という内容なのだが、
自分の専門外の分野については、いちいち目を通すようにしている。
 それによると、現在「喘息治療の基本方針」は
「発作の予防」と「気道炎症の改善」が根幹で
その中心になるのが
「オノン」などの(お、どっかで聞いたことある薬!)アレルギーを抑える薬と
「吸入ステロイド」なのだ。
 気管支拡張作用を持つ「テオドール」は、かつて喘息治療の花形だったが
今や、あまり推奨されなくなっている。
 理由は「喘息治療の概念の変化」とテオドールの「副作用」の問題だろう。
 薬には血中濃度によって「有効域」と「中毒域」がある。
実は、テオドールはこの幅が大変狭い薬なのだ。
 つまり、少ない量では効かないが、多くするとけいれんなどを起こしやすい。
 しかも「発熱」や、「他の薬剤(特に問題になるのはマクロライド系の抗生剤)との相互作用」で
血中濃度の上昇をきたしやすい。
 「風邪」に基づく「喘息様気管支炎」で使用した場合、
熱が出てる場合が多いし、抗生剤が併用されることも多い。
 多くの副作用が報告される中、メーカー側も事故を怖れて
たびたび注意文書を発し、数年前には体重あたりの投薬量を見直して、
より少ない量での換算票に差し替えてきた。
 つまり
「もう、あんまり使わないで。」
ってことらしい。
 ところが、
ウチで治療中の子が、喘息発作みたいの起こして
「この間○○小児科で喘息って言われて薬が出ました。」
って、お薬手帳を見ると、「テオドール」。
このセンセイ、いつもこれだ。
 「ううむ。」
 これが私の専門領域ならああだこうだ言えるんですが、
「喘息」ってなると・・・・・。
 「なんか薬の説明受けた?」
「いえ。」
「うーん・・・。」
・・・・・どうなんだろ。
 以前からテオドール使ってる子ならまだしも、
まるっきり初めてで、これは・・・。
 もちろん、使い慣れてる、ってのはあるけど
医学の常識はどんどん変わる。
昨日の治療法が、今日は禁忌だった、なんてこともある世界だ。
 以前の創傷治療もそうだが、解熱剤にしろ、咳止めにしろ
昔とは180度考え方の変わったものはざらだ。
 せめて、一言使用理由の説明をしてもらえれば・・・。
 やっぱ、医者は常に知識をアップ・トゥ・デイトしとかないとまずい。
 そういや「風邪による急性胃腸炎」つって、
いつも下痢止めの「ロペミン」出してる小児科医もいるんだが、
これも、どうなんだろ。
 いやー、専門じゃないからよくわかんないけど、ちょっとオレは出さないよ。

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