ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2009.05.01

新型インフルエンザについて(その2)

 さて、インフルエンザの話を、もう少ししときますかね。
 今回のインフルエンザは「H1N1」です。
 インフルエンザウイルスにはその表面に2種類の蛋白抗原があります。
1つはヘマグルチニンでこれはウイルスが細胞に侵入する時に使います。
もう一個がノイラミニダーゼといい、増殖したウイルスが細胞から出るときに使います。
 これに種類がありヘマグリチニンの「H」を取って「H1,H2,H3・・・」
ノイラミニダーゼの「N」をとって「N1,N2・・・」とあり、この組み合わせで名前がついてます。
Hが16種類Nが9種類あるといわれてますので
理論的には16×9=144種類のウイルス型があるわけです。(実際にはまだないですが)
 実は「H1N1」はAソ連型といわれる、毎年流行るおなじみのインフルエンザです。
もう一つの流行するA型はA香港型でこれは「H3N2」です。
 ということは、今回の新型インフルエンザは
インフルエンザ迅速キットでA型に陽性が出て、
タミフル、リレンザは多分、効く。
ということが推測されます。
 もちろん、迅速キットでは新型か従来のソ連型かはわかりません。
そもそも、ソ連型と香港型の区別もできず「A型」ということがわかるだけです。
 新型インフルエンザになるかも、といわれてたのは
「鳥インフルエンザ」といわれている「H5N1」というウイルスです。
これは、強毒性であることがすでに知られてます。
 というのは「H5」ってヤツは、全身の細胞に侵入できる。
 先に「H」は細胞に侵入する時に使う、って話をしましたが、
「H5」や「H7」ってヤツは全身の細胞で増殖できる。
しかし、「H1」や「H3」は気道、呼吸器の細胞にのみ侵入できる、ということです。
 ということは、今回の「新型」は理論的には「弱毒性」で、
致死率6割を越えるといわれる「鳥インフルエンザ」ほど強力ではないはず。
 ただ、従来型のインフルエンザで、毎年我が国でも1000人近くの人が亡くなっており
合併症や2次感染などインフルエンザが原因となった数を加えるとその10倍になります。
 今回の「新型」が弱毒型であっても、免疫を持ってないわけですから、
かかっちゃう人の数は相当数にのぼり
その結果、死亡者数もかなり多くなるとは考えられます。
 だから、ポイントは、きっちり診断して、それ以上広げない。
 今回のインフルエンザは「新型」っていっても、
普通の健康な人がかかっても、タミフル飲んでフツーに治っちゃうと思います。
でも、感染を広げてはいけない。
 いつものインフルエンザのとき、いい加減な診断や、いい加減な隔離で
どんどん流行が広がっちゃうので、きちっと事情のわかってる人が
適切な処置を講じて、みんなが、まじめにそれを守ることですね。
 さて、たまたま「豚インフルエンザ」が一足早く「ヒト⇒ヒト感染」を獲得して
新型インフルエンザとなったわけですが、
もちろん「鳥インフルエンザ」も、まだいつ新型インフルエンザになるかもしれません。
こっちは、相当怖いと思います。
 そういえば、本日も当院でインフルエンザ陽性者が1人出ました。
「B型」だったので、少なくとも新型の可能性は、なしです。

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