ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2008.12.16

インフルエンザではありません

 さて、寒くなり、中耳炎の患者さんが増えてきました。
 「あー、T君の中耳炎の培養の結果来てますよ。えーと・・。」
 む・・・、一瞬つまる私。
 「あのね、T君の中耳炎、原因菌はインフルエンザ菌でした。」
 「えー、ウチの子、インフルエンザなんですかー。」
 と、驚くお母さん。
 ほら、来た。
だからやなんだよ、この菌、ナントカしてくれよ。
 あわてて説明します。
「えーとね、T君はインフルエンザじゃないです。
予防接種とかしてるあれね、あれはインフルエンザ・ウイルスで、これはインフルエンザ菌なんです。全く別物です。」
 そう、中耳炎の起炎菌として、常にランキング・ナンバー2の座を守ってるインフルエンザ菌、
名前が同じなので、いつもインフルエンザ・ウイルスと間違われるので
説明が、厄介です。
 何故、こんなことになったかというと、
もともと「インフルエンザ」という病気は恐ろしい感染症として古くから知られていました。
しかし、その原因は不明でした。
19世紀になり、細菌学が発達した時に、
いろいろな感染症は細菌によってもたらされるということがわかってきました。
 そこで「インフルエンザ」の病原体探しが始まったわけです。
そして、インフルエンザの患者さんから大量に検出されたグラム陰性桿菌が
インフルエンザの病原体だろうとして「インフルエンザ菌」と名づけられてしまったのです。
 インフルエンザの病原体はインフルエンザ・ウイルスですが、
当時は細菌よりずっと小さい「ウイルス」という存在が知られてなかったのでした。
 このことを説明するのに大変な労力を要する。
おまけに、最近は「BLNAR」という、抗生剤に耐性を持ったインフルエンザ菌も増えており、
これの説明にもかなりの時間を食う。
 ちなみに、中耳炎の起炎菌の1位は「肺炎球菌」ですが、これも、
「えー、ウチの子、肺炎なんですか?」
というお母さんに、肺炎も起こしますけど、中耳炎も起こすんですよ、と説明しなきゃなんないし、
この肺炎球菌にも「PRSP」という耐性菌が増えている。
 しかも、この1位、2位の菌で子供の中耳炎の原因菌の8割以上を占めるのだ。
 毎日毎日、繰り返し、たくさんの人に説明してる。
あー、めんどくせえ。
 昔(今もいるかも知れんが)J2のどっかのチームに
「小野シンギ」という選手がいたが、この人も
「いや、小野シンジじゃなくて小野シンギです。」などと、苦労しただろーなー。
 まったく、このインフルエンザ菌、ナンカ別の名前に代えてくれませんかー。
 そーいえば、中耳炎の起炎菌ランキング3位の「モラクセラ・カタラーリス」は
10年位前までは「ブランハメラ・カタラーリス」と呼ばれてたのだが、なぜか学名が変わったのだ。
こっちは、別に変えなくても困ってなかったんだが・・・。
 ちなみに、インフルエンザそのものの語源はラテン語の「影響」という意味の単語
英語では「インフルエンス」ですね、そっから来てます。
これは、この病気の原因を昔の人が、天体や寒気の「影響」と考えたことに基づくといわれてます。
ご参考までに。

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2008.12.16

冬の聴診器

 今朝は寒かったですねー。
イヌの散歩に行ったら、一面霜が降りてました。
 寒くなってくると、朝イチの診察前にちょっとした準備をします。
 それは、聴診器を暖めておくこと。
 耳診て、口診て、鼻を診て、そして咳が出てる子なんかの時は、胸に聴診器を当てますよね。
 夏場は、いいけどこの季節、聴診器も朝は冷えてます。
胸に当てられて、ヒヤッと冷たいのは嫌なものです。
 そこで、一工夫。
 聴診器を普段首にかけてるお医者さん、多いですよね。
私も、使わない時は首にかけたまま診察します。
 その時、聴診器の胸に当てる部分だけを、白衣の胸ポケットに入れとくのです。
私の体温で、温まってるので、患者さんは胸に当てられてもヒヤッとしません。
 これ、実は、私のオリジナルではなく、他の先生のアイディアです。
以前、医学雑誌のコラムかなんかに書いてる先生がいて、
お、これいただきっ、と思ったわけです。
 ま、ちょっとしたことなんですけど、
以前は手でこすったり、口で「はーっ」って暖めたりしてたんですが
これ、かなりいいアイディアですよね。
何よりシンプルなとこがいい。
 このブログをお読みで、まだやってない、お医者さん、看護婦さんがいたら、是非お試しあれ。
 ただ、やってみるとわかるけど、ちょっと慣れが必要です。
 というのは、聴診器は普通右手で持ちますから、
聴診したあとそのまま首にかけると、胸に当てるところは自然に右側に来ます。
ところが白衣のポケットは左側。
 だから、聴診したあと左に持ち替えて首にかけないと上手くいきません。
いまだに、年中かけなおしてます。
 左利きのお医者さん、もしくは右にもポケットがある白衣なら問題ないか。
(そんな、作業着みたいな白衣はいやだが・・・。)

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