ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2015.08.28

週刊誌の医療相談

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立ち読みした週刊誌の医療相談のページが「めまい」の質問で

思わず読んでみた。

 

 

 

これが、ちょっと「?」な内容で気になった。

 

 

 

 

質問は

「たまにぐるぐる回るめまいがするが、メニエール病ではないか不安です。(神奈川県63歳男性)」

 

 

 

といったもの。

 

 

 

 

 

回答者は「良性発作性頭位めまい」「メニエール病」「聴神経腫瘍」を鑑別として挙げていた。

 

 

 

 

これはまあ妥当ではあるが、病気の説明がかなりお粗末。

 

 

 

 

たとえば近年、かなり病態が明らかになり治療法も確立された「良性発作性頭位めまい」について

原因は不明ですと書いてあり、治療法にも触れていない。

 

 

 

 

何だコイツ、と、思ったら、脳外科の先生でした。

 

 

 

 

「良性発作性頭位めまい」「メニエール病」は耳鼻科が診断、治療する病気だが、

「聴神経腫瘍」は診断はMRIなどの画像診断なので、耳鼻科でも内科でも診断がつくが

治療は手術あるいは、経過観察なので

耳鼻科で手術する施設もあるが、治療は脳外科でする場合も多い。

 

 

 

 

 

なるほど、有名な病院の脳外科の先生なので

耳鼻科や内科でめまいで治療していて良くならないので

脳外科にかかったら聴神経腫瘍だったという紹介症例が多く、

まったく耳鼻科のヤブ医者のやつらはしょうがない、

と常々思ってんだろうなあ。

 

 

 

 

 

まあ、その気持ちもわかる。

 

 

 

 

 

1歳児の熱が下がらないのであれこれ小児科で治療したが、

結局耳鼻科で中耳炎が判明、一発で治った、みたいな。

 

 

 

 

 

 

「聴神経腫瘍」は内耳神経の鞘(さや)、まあ神経がバナナだとするとその皮の部分にできる良性腫瘍です。

 

 

 

 

 

 

発生頻度は10万人に1人程度、多くはないが極めてまれ、というわけでもない。

 

 

 

 

 

 

レントゲンでは写らないため、以前はある程度大きくなって

レントゲン写真で内耳道の骨が拡大してることで診断していましたが、

昨今はCT,さらにはMRIの普及により診断が非常に楽になりました。

 

 

 

 

 

 

 

当院でも聴力が回復しない一側性の感音難聴にはMRI検査を依頼し、

2.3年に1人くらいは聴神経腫瘍が見つかります。

 

 

 

 

 

 

薬剤による治療はなく、基本は手術による摘出ですが、

発育が遅く転移したりするものでもないため、

手術の侵襲と治療のメリットを天秤にかけて方針を決めます。

 

 

 

 

 

 

つまり、場合によっては「何もしない」ことが一番いい、というケースもあるわけです。

 

 

 

 

 

 

聴神経腫瘍は常に念頭に置き

なるべく見落としのないように疑わしい人にはMRIとっていますが、

感音性難聴自体は週に何人も新患の方が来るので、

そのすべてにMRIオーダーするわけにはもちろんいかないし、

来院しなくなったりとか、いろんな事情で

あとで、ほかの病院で聴神経腫瘍がわかった、という人もきっといるかもなあ。

 

 

 

 

 

 

 小倉では、わかんなかったのかよ、みたいな。

 

 

 

 

 

 

 

 それにしても、いまどき

いつ取り上げられるかもわからない週刊誌の質問コーナーで

自分の病気を相談する人がいるだろうか?

 

 

 

 

 

 

 インターネットがこれだけ普及した今日、

いくらでもパソコンで検索できるだろうし、

本当に心配なら病院いくだろうし。

 

 

 

 

 

 

 神奈川県、63歳男性、実在するのか?

 

 

 

 

 

 

 

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