ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2012.06.19

急性喉頭蓋炎という病気

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 ちょっと前に「ペリトン」すなわち「扁桃周囲膿瘍」のお話をしました。
読んでない人はクリックして参照⇒「扁桃周囲膿瘍の話
 いわゆるのどの痛みで、もう一つ重要な病気が
「急性喉頭蓋炎」です。
 喉頭蓋とは、のどの奥にあり口から飲みこんだ食物が
気管に入らないように蓋をする、
靴べらみたいな形をした軟骨板です。
 ここに感染がおきて腫れあがると、
患者さんは激しいのどの痛み、特に嚥下痛といって、
物を飲み込む時に強い痛みを感じます。
 通常は扁桃周囲膿瘍と同じく風邪症状から始まりますが、
やはり扁桃周囲膿瘍と同じく、手遅れになると死に至ることのある疾患です。
 ただ、扁桃周囲膿瘍との大きな違いは、
口をあーんと開けただけではワカラナイ、という点です。
 扁桃周囲膿瘍はその口の中の所見を見て、
内科の先生があわてて耳鼻科を紹介すると書きました。
 一方喉頭蓋は、のどのやや奥になるので、
普通に内科の先生がみても、そこまでは見えません。
 ちょっとのどが赤い位だなあ、
このヒトはおおげさなヒトなんだなあ、
と思ってしまう場合があります。
 で、適当に薬を出してそのまま帰すと、
数時間のうちに腫れあがった喉頭蓋が気道をふさぎ、
呼吸困難になったが救命間に合わず死亡、
などという事例が時々起きます。
 状態が悪化するまでの時間はペリトンよりさらに早い。
 扁桃周囲膿瘍が気道のスペースが広い部分での疾患であるのに対し、
喉頭蓋炎は気管のすぐ上の狭い部位での腫脹をきたすので、
短時間のうちにあっという間に窒息し致死的状況になってしまいます。
 救急外来でも耳鼻科の医師がいないと発見が困難なので、
しばしば医療訴訟になることの多い疾患です。
 耳鼻科医がみると外来ですぐその重症度がわかるので、
大事に至ることはありませんが、
内科の先生が診断するのは大変だろうなあと思います。
 この間来た患者さん。
 のどの痛みで内科の病院を受診し、風邪と言われ
点滴もしたが、嚥下痛が強く翌日朝、自己判断で当院を受診。
 普通にしゃべれるし、熱も高くなく全身状態も良好。
 大したこと無いのかな、と喉頭を見ると、
おお、急性喉頭蓋炎じゃあ。
 すぐ患者さんに説明し、紹介状を書いてその足で日赤に行ってもらう。
 即入院し、治療を開始してもらった。
 その晩、ちょうどカンファランスで日赤に行く用事があったので、
日赤の先生に、
「どうだった?」
 と、尋ねると、
「点滴でかなり強力に薬を入れたんですが、
腫れが強くて、やっぱり午後キセツしました。」
 との返事。
 「キセツ」は「気切」と書き「気管切開」の事である。
 ああ、やっぱりね。
 気管切開は窒息を防ぐためにのどを切って気管に呼吸路を確保する手術である。
 つまり、そのまま帰宅させたら死んじゃってたかもしれないわけだ。
 危ないところでした。
 よかったですね。
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2件のコメント

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  1. あなたのコメントこんばんは。いつも楽しく拝見しております。とてもぞっとする病気ですね。私は年中喉が痛く、アズノールスプレーやプロポリススプレーを常備してますが、このイガイガ痛いのが、あっという間に下におりてきて、先日初めてリンデロンを服用しましたが、この病気の危険があったようでした。食道付近が腫れていると聞きました。この喉頭蓋炎は飲み込むときに痛くなったらすぐにこの病気でびくびくする必用はありますか?よくある病気なのですか?疲れたり、お喋りしすぎたり、早食いしても喉がいたくなるので、怖いです。喉に意識が行きすぎてしまいます。ほとんどのかぜがウイルスせいで、病院に、いかなくても自力で治せという著書がよくあるので、挑戦してみようと思い3日ほど頑張りましたが、やはり不安で耳鼻咽喉科を受診した次第です。やはり私の場合勝手には治りそうもありません。

  2. […] この点、その上の喉頭蓋が腫れる「急性喉頭蓋炎」と大きく違うところです。 […]

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