ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2009.11.25

季節性とパンデミック、どっちが怖い?

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 さて、皆さんは従来型の季節性インフルエンザと
いわゆる新型インフルエンザ(パンデミック・インフルエンザ)では、
どっちが怖いと思いますか?
 「そりゃ、新型が怖いに決まってんだろ。」
 と、思ったあなた、間違いです。
 「だって、テレビで言ってたけど、死んだ人だってけっこう出てるじゃん。」
 なるほど、でもそこに情報の落とし穴があるのです。
 従来の季節性のインフルエンザで毎年何千人もの方が亡くなってます。
何百人もの子供が脳症になってます。
 でも、それは一般には報道されません。
 なぜって、当たり前だから。
肺がんや胃がんで何人死のうとニュースになんないでしょ。
健康なヒトがただの風邪で運悪く肺炎になって死んじゃっても、それもニュースにはなりません。
 もちろんインフルエンザが老人健康施設や老人病棟なんかで集団発生して、
死亡があった場合はニュースになります。
 しかし、それ以外はいわゆる「ニュース・バリュー」がありません。
 一方、新型の方は最初は「感染疑い」だけでもニュースになりました。
続いて、患者が確認され過剰な報道がありましたね。
 死亡例も最初は大々的に騒ぎましたがだんだん減っています。
 マスコミは(特に日本は)そんな体質です。
 食品の偽装問題があったときには次々にニュースで出てました。
しかし、今は全く話題になりません。
 急に無くなるわけはないので、日本のどこかでは
産地や賞味期限の偽装くらい、今でも小規模ながらあるでしょうが、
今は「ネタ」としての価値がないので報道されないだけです。
 確かに推計で感染者900万人ともいわれる新型インフルエンザは脅威ではありますが、
実は今のところ重症化は少ない。
 インフルエンザの病原性は
(毒性という言葉はやめましょう。インフルエンザは毒素を出しません。)
感染力とは別のものです。
 ウイルスがどれだけ急激に体内で増殖し、それが宿主に影響を及ぼすかです。
 「新型」インフルエンザは多くの人が免疫を持ってないので、
とりあえず罹りやすい。
 しかし、ウイルスは細胞の中でしか増殖できません。
 新型は、まだ人間の細胞で増殖した経験が少ないのでまだそのテクニックが未熟です。
もたもたしてるうちに感染した人間の作った抗体に捕らえられてしまう。
 一方、従来からある季節性のインフルエンザは、何年も流行を繰り返してきました。
人間の体の中で生きていく術(すべ)を知り尽くしているといえます。
 新型インフルエンザの症状が比較的早く改善するのはこのためです。
すぐに熱が下がるヒトが多いです。
(これはもちろん喜田先生から聞いた話を元に私が推測したものです)
 もちろん、H1N1なので、年長者が何らかの抗体を持っている可能性や
流行がまだ若年者に限られているので、
毎年インフルエンザの大半の死亡例となる高齢者の感染が少なく、
死亡率に関しては厳密な議論ができないとは思いますが。
 また、将来的にこの「新型」がヒト細胞での増殖力を増した型に変異していくことは
充分考えられますし、おそらくそうなっていくでしょう。
 かかるんなら、今のうち?
 いや、無理にかかることはないすけど。
どんな危険があるかもわかんないし。
 まあ、理想的には新型ワクチン打ったあとで軽くかかっとく、
ってことができたらベストでしょうな。

1件のコメント

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    またまたわかりやすいお話をありがとうございます!
    パンデミック・インフルのナゼ?がよく理解できました。
    ・・・それにしてもマスコミの体質、おっしゃるとおりで溜息が出ます。まあ、それに脊髄反射してしまう私たち一般市民にも問題ありなんでしょうねー。このブログをもっともっと多くの人が読んでいただけるようにと願います。

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