ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2019.08.11

ムンテラ

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日本は近代医学の多くをドイツから学びましたので、

医療現場で使われる言葉にはドイツ語由来が多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは学術用語のみでなくて、

いわゆる俗語、隠語の分野にもいえることです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムカシは患者さんに病状や治療計画を説明することを

「ムンテラ」といいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは和製ドイツ語(?)で

ドイツ語で「口」を意味する「Mund」と。

「治療」を意味する「Therapie」を負わせた造語

「ムントテラピー」の略語です。

もちろん、そんな言葉はドイツ語にはありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、医学生時代、紙のテストではなく

教授との面接で行ういわゆる「口頭試問」のことも「ムント」といいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて「ムンテラ」という語は、直訳では「口で治療」ですが、

実際は患者さんに対し、病名、病状や治療方針と、

期待される効果、およびそれに伴う副反応や後遺障害の可能性を説明する、

という意味で使われます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教授が担当医に

「今回の手術のムンテラ、患者さんにちゃんといってますか?」

とか、

医者が看護師さんに

「〇〇さんに、ムンテラするのでちょっと呼んでください。」

などと言う感じで使います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところが最近は違うらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

医者が看護師さんに

「〇〇さんに、ムンテラするのでちょっと呼んでください。」

というと、

「はい、〇〇さんにICですね。」

と返されるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「IC」とは集積回路のことではなく、

まして「イメージ・キャラクター」のことでもなく

「インフォームドコンセント」の略語です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1990年ころから使われだした用語で

「説明と同意」と訳される。

医療提供者が治療行為の内容について十分な説明を行い、

受け手がその内容を十分理解したうえで同意を得る、

という一連の手続きを言います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムンテラ、という言葉が医者から患者への一方通行的な行為、

また「言い含める」「言いくるめる」といったニュアンスがあるのに対し、

患者側の権利を尊重した形で、

「同意」は医療行為への「許可」だけでなく

「拒否」も含む「合意」と解釈されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

従来の「お医者様に診てもらう」時代から

「医者に診せる」時代になり、

医療訴訟が日常化し、

医療ミスがマスコミの格好の標的になってきた時代の流れでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、良いことだと思いますが、

患者さんとお医者さんの関係が、かつての漠然とした「信用、信頼」から

欧米的な明確な「契約」に基づくものになったということの表れともいえます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ところで、耳鼻科医になって5年の研修を受けた後に受験する専門医試験は、

試験と、小論文と口頭試問でしたが、

ワタシが受けたときの小論文の課題が

「耳鼻咽喉科のインフォームドコンセントについて」

でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 計算するとワタシが専門医試験を受けたのが1991年。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 実は、恥ずかしながらこのときワタシは

「インフォームドコンセント」なる言葉を知りませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 困った、と思っていたら、試験開始後まもなく

「皆さん、お困りの方も多いようですので補足しますが、

これは日本語で言うと「説明と同意」という意味です。」

と、試験官の方からの説明がありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おそらく、ワタシ以外にも何のことかわからずあせっていた受験者が多かったと見える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただ、中には「やっぱり出たな」などとささやき合っている者もいたので、

情報豊富な都会の大学病院では、試験のヤマだったのかも知れず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、なんとか試験は無事一発で合格できました。

8月の、この時期になると、専門医試験のことが時々思い出されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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