ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2019.07.24

オグサワとは

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 オグサワとは、何か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちょっと前に、バドミントンにオグシオという美人ダブルスがいまして、

小椋さんと、潮田さんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 では、今度はオグラさんと、サワムラさんか誰かのペアかというとさにあらず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは、抗生物質の処方で、しかもウラ処方。

オーグメンチンとサワシリンを同時処方することの「隠語」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オーグメンチンとサワシリンは

どちらもアモキシシリンというペニシリン系の抗生物質が主成分です。

サワシリンはアモキシシリンのみ、

オーグメンチンはアモキシシリンとクラブラン酸という薬剤の合剤です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これを同時に処方するということはどういうことか、

ということを理解するためには耐性菌の話からしなければなりません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このブログでも再三にわたって耐性菌のお話は書いてきましたが、

細菌が抗生物質に対し耐性を獲得する仕組みにはいくつかありますが、

β―ラクタマーゼという酵素を介する方法があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 臨床で良く用いられるペニシリン系やセファロスポリン系の薬剤は、

β―ラクタム環といういう基本構造を持っています。

サワシリンも、メイアクトも、フロモックスもセフゾンもみんな基本構造は同じです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのβ―ラクタム環を壊しちゃうのがβ―ラクタマーゼで、

インフルエンザ菌(ウイルスではなく)やモラクセラという菌の中に、

この酵素を出して、抗生物質から命を守る、という奴らが出てきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、そのβ―ラクタマーゼを阻害するのがクラブラン酸という薬剤で、

これによって細菌の出すβ―ラクタマーゼが無効になり、

ペニシリンが、細菌を殺菌できる、という仕組みです。

なんとなく軍拡競争みたいですが・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、最近の細菌は(ダシャレではなく)

全体に抗生物質に対する抵抗性が強まっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なので、従来のペニシリンの量では十分に殺菌できないケースが増えてきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは特に子供の急性中耳炎の治療の場で問題になり、

2006年に発売されたのが「クラバモックス」という抗生物質です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは、アモキシシリンとクラブラン酸の合剤で、

その意味では、「オーグメンチン」の小児用ですが、

特徴はアモキシシリンの量が従来の約3倍になっていることです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アモキシシリンは添付文書では、

体重1キログラム当たり20~40mgで使いなさいと書いてあります。

なので従来は平均30mg/Kgを目安に使っていましたが、

幼小児の急性中耳炎には効かないので、

クラバモックス発売前はワタシは倍の60mg/Kgで処方していました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ところが、クラバモックスのアモキシシリンは90mg/Kgに設定されていたのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは、ワタシなど耳鼻科医にとっては待ってましたのクスリで、

発売当初、ワタシはクラバモックスの使用量が県内ナンバー1だったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、子供はそれでいいとして、錠剤を飲むオトナの場合です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「オーグメンチン」はクラブラン酸が入っていますが、

アモキシシリンの量は1錠あたり250mgで従来量です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これを、クラバモックス並の従来の3倍量に持って行くためには

オーグメンチンを1回3錠、1日9錠飲めばいいわけですが、

クラブラン酸はそのままで十分なので、アモキシシリンの量だけ増やしたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それで、1日量をオーグメンチン3錠とサワシリンを従来の倍量の6錠とすれば

クラバモックスとほぼ同じ比率になる、ということです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 耳鼻科領域では大人の急性中耳炎はそれほど多くないので

たぶん考えたのは、呼吸器内科の医者だと思います。

はじめて、お薬手帳でこの処方を見たときは、何じゃこりゃ、と思いましたが、

ちょっと考えたら、すぐ理屈がわかり、

なるほど、コイツ頭いいじゃん、と思いましたが、

あとで、他の医療記事で見かけたので

多分その先生が考えたものではなく

どこかで見たか聴いたかしたものでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、あくまでウラ処方で、能書きとはあっていませんから、

アタマの固い、あるいは抗生剤に無知な審査官がいたら、

保険適応通らず査定の対象になります。

時々いるんだ、そういうジジイが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに「オーグメンチン」は1種類しかありませんが、

アモキシシリンはメーカーによって「サワシリン」「パセトシン」など

いろんな商品名があります。

まあ、「オグアモ」「オグパセ」よりは「オグサワ」が語呂が良いですね。

 

 

 

 

 

 

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