ロックな耳鼻科:小倉耳鼻咽喉科医院院長、小倉弘之が日々思うこと。

2017.02.27

中耳炎の子供の旅行についてのご質問


 

はじめまして。8か月の男の子の中耳炎の事でご相談させてください。
先週急性中耳炎が再発し、かかりつけの耳鼻科医に、

「次に急性中耳炎が再発したら1か月以内に飲める抗生剤はもうない、点滴入院になる」

と言われています。

3月に海外旅行へ行く事が決まっているのですが、

旅行先で急性の中耳炎になったらどうしたらいいのでしょうか。

耳鼻科医に聞いても、飲める薬はない、というばかりです。

高熱が続けばもちろん帰ってくるつもりですが、

現地ですぐに小児科医に見てもらうことができるかわからず、

帰ってくるまでの9時間のフライト中も解熱剤を飲ませるくらいしかできないのでしょうか。
今回の急性中耳炎は治っても、

次に飲ませる薬がない状態は旅行は諦めた方が良いレベルでしょうか。
今までの中耳炎歴

生後3か月 RSウイルスから急性中耳炎になる ワイドシリン1week
生後5か月 急性中耳炎 ワイドシリン1week→メイアクト1week
生後6か月 急性中耳炎 メイアクト1week
生後7か月 2/3急性中耳炎 ワイドシリン1week→メイアクト1week
2/13 両耳チューブ置換
生後8か月 急性中耳炎 オラペネム1week

 

初めて中耳炎になって以来、滲出性中耳炎になり、治ってもすぐなる状況でしたので

チューブ置換施術をしました。

4歳の兄弟児がおり、上の子は保育園に通っています。

家族にタバコを吸う人はおりません。授乳中です。
旅行までの期間、風邪をひくと厄介なので保育園は休ませようと考えています。
3月で育休が終わってしまうため、家族旅行は諦めたくないのですが、

薬がない状態ですので心配はあります。

中耳炎の診断だけで本人はいたって元気で、

今までの中耳炎も熱はほとんど出ず耳を手で触っているくらいの症状でした。

病歴から、薬が効かない1か月の間の旅行は諦めた方がいいのでしょうか・・・。

アドバイスよろしくお願いいたします

 

 

 

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というご質問をいただきました。

 

 

 

 

 

 

 

RSウイルスからの中耳炎がきっかけで3か月からなるとさすがに大変ですね。

 

 

 

 

 

 

 

このケースは抗生剤についての質問ですが

抗生剤の使用はワイドシリン⇒メイアクト⇒オラぺネムと

まさにガイドライン通りの「王道の」使用法です。

常に誠実な先生だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ガイドラインでは内服はたしかにオラぺネムが最後で、その後は点滴入院等になっております。

 

 

 

 

 

 

 

 

ただし、この場合、大きなポイントは

すでにチューブ留置済み、ということです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

急性中耳炎の症状で最も困るのは発熱、耳痛。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、中耳内に膿が貯留して鼓膜が腫脹することにより起こる症状です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鼓膜が破けて耳漏が出てしまえば、痛みや熱はとりあえずおさまります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チューブが入ってるということは、すでに穴が開いた状態なので、

急性中耳炎になっても痛みや熱は出ないでいきなり耳漏が出ることがほとんどです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛行機に乗ると気圧の変化だけで起こる「航空中耳炎」という病態もありますが、

これもチューブが入っていれば回避できます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに、もう一点。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チューブが入っていると点耳薬が使えます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鼓膜は「防水」なので通常の急性中耳炎に外から入れる点耳薬はほぼ無効ですが、

チューブが入っていれば中耳に直接抗生物質が入れられるので大変有効です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

局所でクスリの濃度が高まるので内服よりはるかに強い抗菌作用が期待できます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なので、入院以外の治療法がないわけではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただし、解熱剤と、ハナの薬は持って行くとしても、

やはり点耳薬や、抗生物質は現場の素人判断ではやめた方がいいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、この子は保育園に行ってるのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 文脈からはっきりしませんが、もしそうなら

保育園に預けている環境より、

家族がずっと付き添っての旅行の方がはるかに中耳炎を起こすリスクは少ないです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、行き先がロシアや北欧だとちょっとアレですが、

ウチにかかっている保育園児の反復性中耳炎の0歳児が、

家族とさっぽろ雪まつりに行って来たら難治性の中耳炎がすっかり良くなっていたという例もあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、チューブの状態や、検出された菌の種類、

本人の体力などの面がわかりませんので、

これ以上のことは申し上げられませんが、

主治医とよく相談したうえで、

家族もそれなりの準備と心構えをもって決める、というところでしょうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何もなくても、0歳児連れの旅行は大変ですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3件のコメント

コメント/トラックバック (3件)トラックバック用URL:

  1. 小倉先生
    ご丁寧な回答、本当にありがとうございます。生後間もない中耳炎、さらにチューブ留置に関してずっと悩んでいましたので、今までに先生のブログを何度も読んでは、解決策を模索しておりました。見ず知らずの私にも誠実に答えて下さり本当に感謝しています。
    中耳炎の8ヶ月児は保育園にはまだ通っていませんが、4歳の姉は保育園に通っており、風邪はほぼ姉から移っています。保育園がリスクになっているのは主治医にも言われておりました。
    チューブ留置に関して、留置してすぐの急性中耳炎だった為にチューブの意味があったのか懐疑的でしたが、先生の回答を読んで初めて、チューブ置換してよかったのだと思えました。
    主治医からは今の所チューブがまだ安定していない事、検査で変な菌は検出されていない事を聞いており、点耳が処方されています。
    >すでに穴が開いた状態なので、急性中耳炎になっても痛みや熱は出ないでいきなり耳漏が出ることがほとんどです
    とのことですが、例えば旅先で耳漏が出ても3、4日そのままでも大丈夫なものなのでしょうか。毎週耳鼻科に通い熱が出る前に腫れで急性中耳炎と診断されるため耳を放っておいたことがありません。。
    行き先は東南アジアの孤島なのですぐには大きな病院、耳鼻科にかかれないと思うので…。
    どちらにせよ、行くなら電動鼻水吸引機持参、熱が出たらすぐ帰る、余計な抗生剤は飲まない、方向で旅行を検討しようと思います。ハードですね…。

  2. madre様
    耳漏は早く治療するにこしたことはありませんが、3,4日の遅れで取り返しのつかないことになる、ということはありません。ただ、チューブが安定しない時期に多量の耳漏が続くとチューブが抜けてしまう場合もあります。また、耳漏が出て固まるとチューブ周囲に固着して処理が厄介になることもあります。
    チューブを入れてすぐ耳漏が出てしまうことはけっこうありますが、しばらくして安定すればチューブの効果が出てきます。
    お大事になさってください。

  3. 親身になって下さり本当にありがとうございます。「この1ヶ月飲める薬はもうない、あとは点滴入院するしかない」という主治医の強い言葉に非常に不安を感じていましたが、小倉先生の丁寧なアドバイスで理解でき精神的に楽になりました。今朝受診し、耳が乾いて綺麗な状態になっていました。無理せず体調管理を整え前向きに検討したいと思います。ありがとうございました。

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